インドが21/22年度予算案でギグワーカーへの社会保障給付を提案、最低賃金の保証も

インドのNirmala Sitharaman(ニルマラ・シタラマン)財務相は現地時間2月1日、同国が新型コロナウイルスの流行で深刻な打撃を受けた経済を復活させようとする中、予算演説でスタートアップのエコシステムとデジタルサービスの成長を加速させるための援助をいくつか提案した。

シタラマン氏は、政府はデジタル決済の採用を奨励するために1500クロール・インドルピー(2億5,530万ドル、約268億円)を確保していると述べた。市場のリーダーであるPaytm、Google Pay、PhonePeは、インドの人々のデジタル支払いを促進するために激しい戦いを演じているが、それと同時にこれらの企業は、中核となる決済サービスの実行可能なビジネスモデルを見つけるのに苦労している

多くの企業は、加盟店に対し取引手数料を請求することを防ぐために、加盟店割引率(merchant discount rate、MDR)を廃止するよう政府に求めていた(インドの企業は、支払いを処理する際に個人には課金しないことを合意しているが、加盟店に対しては課金できるようにする必要があると合意している)。この点についての発表はなかった。

今回の予算案はまた、ギグワーカーやその他のプラットフォーム・ワーカーに社会保障給付金を拡大適用し、これらの労働者の就職を支援するウェブサイトを立ち上げることも提案している、とシタラマン財務相は述べた。これらの労働者は最低賃金で保護されると、同氏は演説の中で述べている。さらに、女性はすべてのカテゴリーで働くことが許され、夜勤中も十分な保護を受けながら働くことができる、とも。「同時に、登録・免許の一元化、オンラインでの申告により、事業主のコンプライアンス負担も軽減されます」。

予算案の中で、シタラマン氏はまた、スタートアップの従業員が株式を売却する際に適用される、いくつかの減税措置を提案した。

「スタートアップは、その形成期には、一般的に従業員株式所有制度(Employee Stock Option Plan、ESOP)を利用して、優秀な従業員を惹きつけ、維持します。ESOPは、これらの従業員の報酬の重要な構成要素となっています。現在ESOPは、行使時に特典として課税されています。これは、すぐに株式を売却せず、長期的に保有し続ける従業員にとっては、キャッシュフローの問題につながります。スタートアップ企業のエコシステムを後押しするために、そして従業員の税金の負担を軽減するために、納税義務を5年間延期するか、または退社するか、株式を売却するかのいずれか早い方まで課税を延期することを提案します」と同氏は述べた。

同国はまた、中小企業の定義を拡大し、資本金の基準値を現行の50ラッハ・インドルピー(約68750ドル、約721万円)から2クロール・インドルピー(約275000ドル、約2885万円)に引き上げることを提案している。これにより、より多くの企業が中小企業の傘の下に入り、税制上の優遇措置などの関連する恩恵を受けられるようになる。

「また、初期の数年間は、スタートアップ企業がこの控除を利用するのに十分な利益を出していない可能性があるという事実を考慮して、控除対象期間を従来の7年から10年に延長することを提案します」とシタラマン氏は言った。

予算案はまた、一人会社の設立のためのインセンティブを提案し、シタラマン氏は、企業が「払込資本金と売上高に制限されることなく成長し、いつでも他のタイプの会社への転換することを可能にし、インド国民が一人会社を設立するための居住制限を182日から120日に削減し、また、非居住者の国民がインドで一人会社を法人化することを可能にする」動きを支援すると述べた。

業界の幹部たちはここ数週間、インドが昨年から外国企業に課し始めたデジタルサービス税に対処することも期待していると述べていた。これは新予算では取り上げられなかった。

シタラマン氏はまた、インド政府は国内製造業を強化し、エレクトロニクスのバリューチェーンへの大規模な投資を誘致することを目的とした計画を策定する予定だと述べた。同氏は「ここでは、携帯電話、エレクトロニクス、半導体パッケージングの製造を促進することに焦点を当てた計画を提案します。詳細は後日発表されます」と述べている。2021/22年度予算案の完全な要約はこちらで読める。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
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(文:Manish Singh、翻訳:Nakazato)

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