今回の記事はほとんどの人に関係ないように感じられるかもしれないが、読んでおくともしもの場合に役に立つかもしれない。
先日なのだが某上場企業のWeb担当者から相談を受けたのである。
「AWSにWebサイトを移転したのですが、まったく表示されなくなってしまいました。どうすればいいでしょう?」
という質問である。
AWSとはちなみにそもそも何だろうか?
AWSとはアマゾンウェブサービスの略である。
アマゾンというのはあのアマゾンだ。
実はアマゾンは、通販を行っているだけではなくレンタルサーバー事業を行っている。
アマゾンという会社は実は世界最大のレンタルサーバー事業者だったりする。
サーバーを1時間単位でレンタルしてくれることがすごい。
1インスタンス(仮想的なコンピュータの台数)あたり1時間6セント(約6円)で借りられる。
この料金体系は、ビジネスの根幹を変える可能性がある。
サーバーは買うより借りる時代になっているが、借りるという表現もあまりふさわしくない。
必要に応じて「使う」という表現がふさわしい。
イメージ的にいうなら、水道の蛇口みたいなものだ。
水道は必要な時だけ蛇口をあけて、必要な量だけ使う。
サーバーもこれと同じだ。
CPUの能力が必要な量だけ用意して使えばいいのだ。
こんな使い方が可能だ。
ちょっとしたお遊び系のWebサイトを開設していて、会社員らが昼休みに集中して使うといったケース。
今までのレンタルサーバーであれば、負荷が最大の状況に合わせて台数を用意する必要があった。
夜は7台程度、早朝は2台でいいが、12時から13時の間だけ負荷をさばくために20台を要する場合は、結局のところ20台常に借りておく必要がある。ほとんどのサーバーは大体が処理能力が余りまくって無駄になる。
しかし、AWSを使えば、早朝は2インスタンス、昼の1時間は20インスタンスに拡張し、そのほかの時間は負荷に合わせて調整するといった使い方が可能になる。
また、Auto Scalingを使えば負荷が高まれば自動的にインスタンス数を増やし、負荷が減ればインスタンス数を減らすといった機能も提供されている。
まさに水道の蛇口と同じだ。
このような負荷の変動が激しいサービスにはAWSはうってつけだ。
さて、冒頭の話に戻ろう。
AWSにサイトを移転したのは、会社の公式Webサイトである。
会社概要やその会社の展開しているサービスの一覧などが掲載されているな普通のWebサイトだ。
このサイトをAWSに移行したら、URLを入れても真っ白な画面が出るだけ。
しかも、
site:サイト名
で検索しても1ページもヒットしない。そんなだった。
サイトを移転したのは5日前が経過したのが今回の状況。
移転した時点ではちゃんと見られていたのだという。
担当者の方はどうしていいかわからなくて狼狽していた。
こういう場合は、まずは復旧させなくてはならない。
サーバの移転に失敗した場合は、時間がたてばたつほど検索エンジンからの評価が失われる可能性が高くなる。
一分一秒でも早く復旧を目指さなくてはならない。
だから、新サーバで動かない原因の追究をするよりも、使い慣れている旧サーバでまずは復旧させたほうがいい場合が多い。
特に今回はAWSといったやや特殊な技術を使っているため、元のWebサーバーにデータを戻して、DNSをそっちに向けてもらった。
正常にアクセスできることを確認したら、ウェブマスターツールから、
- sitemap.xmlの送信
- Fetch as Googleの実行
この二つをやってもらった。
「これで大丈夫でしょうかね?」
「うーん、site:でまったくヒットしないっていうのが、かなり心配ですね。復旧するかしないかは運ですね。」
「他にできることはないでしょうか?」
「んー、あとは、祈るぐらいでしょうかね。」
運よく、4時間後ぐらいにsite:で検索してみたら検索結果に復活した。
検索順位も見た限りでは戻った感じである。
さて、話を元に戻すのだ。
AWSの話である。
のである。
一般的には負荷が著しく変わるものではないので、AWSを使うメリットが少ない。
かつ、運用が一般のサーバーに比べると難しく、今回のように復旧にてこずる場合がある。
流行りものだからという理由だけでAWSを導入するならやめておいたほうがよい。
普通の場合は普通のホスティングを使うのがよいのである。