1訪問30ドルのペット向け遠隔医療プラットフォーム開発のAirvetが15億円調達

このところ、遠隔医療が広く受け入れられるようになってきた。人間だけの話ではない。米国のおよそ65%の世帯がペットを飼っているが、獣医がそのむくむくの患者を遠隔診療できる手段を提供している企業は、いまでは目がくらむほど多く存在する。Petriage(ペティグリー)、Anipanion(アニパニオン)、TeleVet(テレベット)、Linkyvet(リンクベット)、TeleTails(テレテールズ)、VetNOW(ベットナウ)、PawSquad(ポウスクアッド)、Vetoclock(ベトクロック)、Petpro Connect(ペットプロ・コネクト)などなどだ。

その中に、創設2年目で従業員数13人というロサンゼルスのスタートアップであるAirvet(エアーベット)がある。同社が最高とされ、その評判により投資家の期待も同等に得ているのには、相応の理由がある。米国時間6月26日、同社は1400万ドル(約15億円)のシリーズA投資を獲得したと発表した。主導したのはCanvas Venturesで、e.ventures、Burst Capital、Starting Line、TrueSight Ventures、Hawke Ventures、Bracket Capital、および個人投資家たちが参加している。

そのスマートなモデルもさることながら、新型コロナウイルスのパンデミックがCanvas Venturesの決断を後押ししたと、ジェネラル・パートナーのRebecca Lynn(レベッカ・リン)氏は指摘する。彼女は11年間、数多くの遠隔医療スタートアップを見てきたが、自身が所有する小さな農園で暮らす動物たちのためにAirvetのサービスを利用したところ、同社に惚れ込んでしまった。しかも、「新型コロナウイルスが選択の大きな決め手となりました」と彼女は言い足している。

我々はAirvetの創設者でCEOのBrandon Werber(ブランドン・ワーバー)氏に連絡をとり、独自に詳細を聞いた。

TechCrunch:この企業を創設した動機は?

ブランドン・ワーバー氏:私の父は、米国で最もよく知られた獣医の一人、テレビでおなじみのDr. Jeff Werber(ドクター・ジェフ・ワーバー)です。人間の世界で遠隔治療が果たす役割の大きさを目の当たりにして、私たちも、自分で自分のペットの世話をするときのように簡単に、しかも同等レベルのケアを提供したいと考えました。ペットの世界で育った私は、医療の提供がどれほど非効率であるか、そして変化する飼い主の期待に獣医が応えられない状況を、身をもって感じ、認識していました。

TechCrunch:獣医と患者であるペットとを、どのように結び付けるのですか?

ワーバー氏:Airvetには2つのアプリがあります。ひとつはペットの飼い主がダウンロードして獣医と話ができるようにするもの。もうひとつは、獣医がダウンロードして、ワークフローの管理とクライアントとの対話を可能にするためのものです。私たちは、今ある獣医との関係を奪おうとするものではありません。むしろ、私たちは動物病院と契約し、遠隔医療を可能にして、週7日、24時間、動物病院から遠く離れた飼い主でも、必要なとき即座に獣医に相談できる環境を提供します。

米国でペットを飼っている人の大多数は、かかりつけの獣医を決めていません。手術を要するような深刻な健康問題が生じたときは、どうしても直接獣医に診てもらわなければなりませんが、そのときも私たちの獣医のネットワークから病院を紹介します。カーブサイド・チェックイン(ドライブスルー)のような使い方をする事例も見られます。病院の駐車場からビデオチャットで獣医と話し、その場で直接診療の予約を取るといった形です。

TechCrunch:1回の訪問が30ドルと聞いています。このモデルで、どのようにして獣医に経済的な利益が出せるのでしょうか?

ワーバー氏:獣医は、基本収入の上に載っかった付加的な収入源として私たちを見ています。私たちが獣医を雇うのではありません。2600件を越す私たちの獣医ネットワークでは、大半の獣医が自身の動物病院でAirvetを利用しています。彼らは、Uber(ウーバー)のドライバーと同じように、自分の意志でオンデマンド・ネットワークに接続して全国の飼い主からの相談を受けるかどうかを判断し、副収入を得ることができます。

TechCrunch:以前にこのモデルを試したスタートアップから、学ぶことはありましたか?

ワーバー氏:私たち以前のスタートアップは、すべてが消費者第一ではなく、獣医のためのツールの構築に重点を置いていました。そのため彼らのプラットフォームは、あらゆる飼い主が利用できるというものではありませんでした。かかりつけ医がその特定のプラットフォームに対応している場合にのみ、飼い主が使えるというものです。そうした獣医は非常に少なく、利用できる飼い主もごく限られます。

TechCrunch:別の事業は行っていますか?獣医の遠隔診療以外に、何かを販売するとか。

ワーバー氏:今は遠隔診療だけです。獣医とその専門性に応じて、最低料金30ドルから利用できます。ゆくゆくは、ペットの健康に関連するバーティカルな事業へと拡大し、それに見合った提携なども進めてゆく計画です。2020年は、米国だけで990億ドル(約10兆6000万円)がペットに消費されると予測されています。私たちにとって、遠隔医療は始まりに過ぎません。

TechCrunch:Airvetは特定の実務管理ソフトウェアを使っていますか?

ワーバー氏:いいえ。私たちは、獣医にバーチャル予約のスケジュールが行えるワークフロー・レイヤーを提供していますが、間もなく、各獣医が使っている既存システムやワークフローに完全に統合できるようになる予定です。

TechCrunch:30ドルのプランで獣医に相談する場合、時間制限はありますか?

ワーバー氏:時間制限はありません。通常、相談枠の期間は丸々3日間とられているため、飼い主はその後もチャットで追加質問をしたり不安なことを相談したりできます。

TechCrunch:価格で競争するのですか?

ワーバー氏:私たちの目標は、病院とともに事業を進めることであって、病院と張り合ったり、仕事を奪ったりすることではありません。バーチャルでは採血も、腫瘍の触診も、歯の検診もできません。どうしても、動物病院に行く必要性は消えないのです。

私たちは、(飼い主がいつ病院に行くかの)判断を助けたいと考えています。平均的な飼い主は、1年に1.5回しか獣医にかかっていません。Airvet利用者のセグメントの大部分は、その6倍、獣医と関わっていますが、それが時間の削減とストレスの低減に役立っています。

これは競争ではありません。私たちは、次に動物病院に行くまでの間のケアを提供する企業です。また、私たちのサービスを利用することで、結果的に、不必要な救急外来受診をなくすことができればとも考えています。

画像クレジット:Michael Seeley Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(翻訳:金井哲夫)