フェイスブックが隠しておきたかった電子メールをひっそり公開

みなさん、今日は金曜日(訳者注:米国時間8月24日金曜日の記事)! しかも8月! フェイスブック(Facebook)が誰にも読んで欲しくないニュースを発表するには最良の日だ。ホームページの「ニュースルーム」へのリンクがないようなニュースだ。ちなみにニュースルームのニュースは、みんなに読んでもらいたくて、カラフルなイラストが満ち溢れている(たとえば「アプリやウェブサイトがフェイスブックに送信しているデータの管理・確認が可能に」みたいな自慢げなやつだ)。

フェイスブックがみんなに気付いて欲しくないあるブログ記事が、フェイスブックのニュースルームの下の階層の「お知らせ」(News)にそっと置かれていた。「Document Holds the Potential for Confusion」(混乱を招く可能性を含む書類)というタイトルもまた紛らわしい。万一、たまたまこの記事が発見されてしまったときのために、画像もグレーの書類アイコンで、さらに人の興味を失わせるようにしている。まるでフェイスブックが「とにかくこれはクリックしないで」と言っているようだ。

では、フェイスブックがこの夏枯れの時期にに隠しておきたいこととは、なんだろう?

2015年から始まった内部の電子メールのやりとりから、2015年12月にガーディアンがスクープする以前から、フェイスブックの従業員がケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)の活動を知っていた事実が垣間見ることができるのだ。同紙は、この疑惑のデータ分析企業(現在は廃業)が、当時テッド・クルーズ氏の大統領選挙戦に協力し、大量のフェイスブック・ユーザーの個人情報を、本人の知らない間に同意もなく収集し、そこから得られた見識をもとにターゲットの有権者に心理戦を仕掛けていたと報じた。

この事件に関するフェイスブックの創設者マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏は、公式アカウントのイベントのタイムラインで、以前から一貫して、ケンブリッジ・アナリティカの一件を知ったのは2015年12月、ガーディアンが報道した日だったとの主張を繰り返している。

しかし、今回フェイスブックが内容を公開した電子メールのスレッドでは、そのほぼ2カ月前から内部で問題視されていたことがわかる。

これは、ケンブリッジ・アナリティカに関する以前の内部文書(もっと断片的だが)と一致する。さらにそれは訴訟の結果としても表れている(私たちも、この記事この記事でお伝えした)。

最新の記事をクリックしてダウンロードすると、フェイスブックがワシントンD.C.の司法長官と「合意」のうえで「共同で公表」したと主張するその編集が加えられた電子メールのスレッドから、フェイスブックの社員たちが数多くのプラットフォームのポリシー違反の問題を提起しているのがわかる。2015年9月29日のメールでは、「政治的パートナーとの距離」に関する懸念が示され、「多くの企業が境界線にいるか、それを越えているようだ」と書かれている。

それまで、フェイスブックの従業員の間で「我々の市場に深く入り込んでいる(控えめに見ても)怪しげなデータモデリング企業」とされていたケンブリッジ・アナリティカの名前は、2015年9月22日、この電子メールスレッドから判明した。それは、ユーザーのデータを抽出していた数多くの企業のなかのひとつだった。しかしケンブリッジ・アナリティカは、「保守側で最大でもっとも貪欲」と説明されている。

2015年9月30日、あるフェイスブックの従業員がこれに返信し、ユーザーデータの抽出に関わっているアプリのApp IDとアプリ名を尋ねている。そしてこう書き加えている。「これらのアプリのデータ抽出はコンプライアンスに違反している気がする」。

「あなたが言うように、FPP(フェイスブック・プラットフォーム・ポリシー)に準拠しつつ、データ抽出行為に携わることは“非常に”難しいはずだ」とも、その人は書いている。

同じ日、ケンブリッジ・アナリティカは別のところでも名前が登場していた(the Cambridge app)。別のフェイスブック従業員は、「これらの企業は我々の規約に違反していない可能性が高い」との意見を述べている。この人は「具体的な例」を求め、「黒」と確定しない限り、彼らを訊問するべきではないと警告している。

だが10月13日、このフェイスブック従業員がスレッドに戻ってきて、こう意見を述べた。「データポリシーの違反がいくつかあるようだ」。

電子メールによる討論は、その当時、フェイスブックのプラットフォームを利用していた別の政治パートナーや代理店に関する問題に広がってゆく。そこには、フォーアメリカ(ForAmerica)、クリエイティブ・レスポンス・コンセプツ(Creative Response Concepts)、ネイションビルダー(NationBuilder)、ストラテジック・メディア21(Strategic Media 21)といった名前が並ぶ。「怪しげ」とされる政治活動が明らかに広がっていたとすれば、おそらくこれはフェイスブックのケンブリッジ・アナリティカに対する警戒が足りなかったことを示している。

12月11日、さらに別のフェイスブック従業員は、「残念ながら……この問題は知れ渡ってしまった」としながら、ケンブリッジ・アナリティカの迅速な調査を求めるメールを書いている。

同じ日、一人のフェイスブック従業員はこうメールに書いている。ケンブリッジ・アナリティカは「現時点で最優先課題」であり「できる限り速やかに対処すべき」と。このとき、最初に疑惑が浮上してから1カ月半が経過していた。

同じ12月11日、あるフェイスブック従業員は、フェイスブックのユーザーデータを抽出するためにケンブリッジ・アナリティカが採用したケンブリッジに拠点を置く開発企業GSRのことは、ガーディアンの記事で名指しされるまで知らなかったと書いている。しかし、他の数人のフェイスブック従業員が割って入り、ケンブリッジ・アナリティカとGSRのアレクサンドル・コーガン(Aleksandr Kogan)博士が開発したサイコグラフィックによるプロファイリング技術のことを個人的に知っていたと明かした。コーガン博士はケンブリッジ大学で、彼ら博士研究員の指導教官だったという。

別の人間は、ケンブリッジ・アナリティカが票の操作のために使用していた技術の基礎をなす人格モデリングに関する論文の著者、ミハウ・コジンスキー(Michal Kosinski)氏と彼らは仲が良かったと話している。彼らはその技術を「きちんとした科学」と呼んでいたという。

別の従業員は、フェイスブックがコーガン氏と協力していた可能性を指摘している。まったく皮肉なことに、それは「プロテクト・アンド・ケア・チームでの研究のため」だった。「Wait, What」というスレッドや他の電子メールを引用しているが、引用元は今回の「Exhibit 1」(添付書類1)には含まれていなかったようだ。

したがって私たちは、2015年9月ごろ、コーガン氏のGSRの共同創設者ジョセフ・チャンセラー(Joseph Chancellor)氏を雇うというフェイスブックの決断が、「Wait, What」スレッドの議題として登場しているかどうかは推測するしかない。

こうした内部の電子メールをブログ記事として公開したフェイスブックだが、「データ抽出に関する未確認の報告」と「アレクサンドル・コーガン氏のポリシー違反」は別々の問題だとする主張を変えることなく、こう書いている。

この文書は、ケンブリッジ・アナリティカに関する私たちの知見を取り巻く2つの異なる出来事を混乱させる懸念をはらんでいます。この文書には実質的に新事実は含まれておらず、ここにある問題はすでに報告済みのものです。先週の英国議会委員会での説明を含め、これまで再三申し上げてきたとおり、この2つの問題はまったくの別物です。ひとつは、情報抽出に関する未確認の報告です。私たちの製品から自動的な手段を用いて公的データにアクセスして収集を行ったというものです。もうひとつは、アプリ開発者のアレクサンダー・コーガン氏がケンブリッジ・アナリティカにユーザー情報を売却したという、ポリシー違反の問題です。この文書は、これらの問題は別々のものであることを示しています。この2つを結びつけてしまうと、誤解が生じる恐れがあります。

フェイスブックは、ケンブリッジ・アナリティカの疑惑が浮上した際に、それを「噂」と主張していた。

「フェイスブックは、コーガン氏がケンブリッジ・アナリティカにデータを売り渡していたことを、2015年12月まで知りませんでした。それは、私たちが宣誓の上証言した事実です。それは、私たちが主要な規制機関に説明してきたことであり、今日までその立場をとり続けています」と同社は書いている。

また、ケンブリッジ・アナリティカがデータを抽出していたとする問題を技術者が調査したが、証拠を見つけられなかったとも話している。「たとえ、そのような報告が確認されたとしても、その事件はコーガン氏が関わった職権乱用の規模を即座に示すものではありません」とフェイスブックは書いている。

フェイスブックは、ケンブリッジ・アナリティカ事件に関連して、個人データ不正利用の疑いでワシントンD.C.による訴訟を避けたいと考えているが、今のところ思い通りにはなっていない。

ワシントンD.C.の申し立ては、フェイスブックが同プラットフォームでのアプリを提供させるために、第三者のアプリ開発者に、消費者のインターネット上の行動を含む個人情報へのアクセスを許可したにも関わらず、消費者のデータとプライバシーを守るための適切な対策を取らず、有効な監視を怠り、プラットフォームのポリシーを遵守させなかったというものだ。さらに、フェイスブックはケンブリッジ・アナリティカへの情報漏洩をユーザーに知らせなかったことも申し立てている。

しかもフェイスブックは、ワシントンD.C.のカール・ラシーン(Karl Racine)司法長官からの同様の訴訟の回避に失敗した。こちらでは、プライバシーの軽視と、不明瞭なプライバシー保護基準が申し立てられている。

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(翻訳:金井哲夫)