Slackだと流れていく情報をチーム内に蓄積できる「Stock」が正式公開、ベータ版は2200社が利用

チーム内で価値のある情報を、ビジネスチャットのような感覚でサクサク残していけるような場所——。2017年9月のベータ版リリース時、TechCrunchでは「Stock」をそのように紹介した。

LINEのようなツールが日常的なコミュニケーションの形を変えように、近年Slackやチャットワークといったビジネスチャットツールが業務上のコミュニケーションの形を変えつつある。ただビジネスチャットでは様々な会話がテンポよく進むため、あとから情報を見返したいと思った場合に苦労するという一面も。

Stockはまさにこのような課題を解決する手段として生まれた情報共有サービスだ。ベータ版公開から約半年が経った本日、ついに正式公開となった。

同サービスの主な機能は「チームの情報ストック」と「タスク管理」の2つだ。最初にクライアント名や会議の議事録など、テーマごとにフォルダを作成。各フォルダ内に関連するトピックのノートを作成し、チームメンバーで情報を書き足していく。ノートにはテキストだけでなく画像やファイルもアップロード可能だ。

また各ノートにはタスク管理機能やチャット機能を搭載している。たとえばミーティングやブレストでは次回までのタスクが設定されることも多い。Stockに保存しておけば議事録と一括で確認できるほか、必要に応じてチャットで質問やフィードバックもできる。

ベータ版は当初無料で提供し、2018年2月から有料プランをスタート。開発元のリンクライブで代表取締役社長を務める澤村大輔氏によると、これまでに2200社が導入しているという。

「もともとITに詳しくない人でも使えるようなサービスを意識して作ったこともあり、学習塾や、税理士事務所、内装工事の会社や病院など使われている業界は幅広い。従業員が数万人規模の企業などにも導入が進んでいるが、基本的には20〜30人の部署ごと、チームごとから利用されるケースがほとんどだ」(澤村氏)

澤村氏の話ではこの半年の間で、誤って削除してしまったノートの復元機能やメールの自動転送機能をなど、ユーザーからのフィードバックを基にプロダクトの改良を重ねてきたそう。ただ一方で「どのくらいニーズがあるか、有料でも使ってくれるユーザーがどれだけいるか」という懸念点もあったという。

たしかに無料のツールも含め、チームの情報共有に使えるサービスはすでに多数存在する。無料なら使うけどお金を払うのは抵抗がある、と考えるユーザーも一定数はいるだろう。

Stockの有料プランを導入している企業の数は非公開とのことだが、「(有料課金も含めて)仕組みとしてうまく回り始め、当初検証したかったことも検証できたため正式公開に踏み切った」(澤村氏)という。

今後は海外展開やエンタープライズ向けの機能など、ユーザーの数や層の拡大を見据えてプロダクトを作り込んでいく方針。機能を絞ったシンプルな設計が特徴なだけに、表側はわかりやすいインターフェースを維持しつつ、ユーザーの要望に応じてカスタマイズできるような仕様を目指すという。

「Slackも外部サービスと連携させることで、さまざまなことができるようになる。Stockでもたとえば細かい通知の設定など含めて、ボタンをオンにするだけでオプションが広がるような、カスタマイズ性の高いサービスにしていきたい。共同作業をもっとしやすくなる方向へ、プロダクトを骨太にしていく」(澤村氏)

 

CometMLは「機械学習のためのGitHub」になることを狙う

Comet.mlは、データサイエンティストと開発者たちが、自身の書く機械学習モデルのモニタリング、比較、そして最適化を簡単に行えるようにする。このニューヨークを拠点とする企業は、本日(米国時間4月5日)そのプロダクトの提供を始めた。同社はTechStarsが支援するAmazon Alexa Acceleratorプログラムを修了し、230万ドルをシードラウンドで調達した。このラウンドを主導したのはTrilogy Equityパートナーズで、他にTwo Sigma Ventures、Founders Co-Op、Fathom Capital、 TechStars Ventures、そしてエンジェル投資家たちが参加した。

このサービスが提供するのは、機械学習(ML)実験コードとその結果をまとめることのできるダッシュボードだ。さらに、このサービスでは、実験のハイパーパラメーターを調整することで、モデルを最適化することも可能だ。モデルを訓練する際に、Cometはその結果を追跡し結果のグラフを提供する。それだけにとどまらず、コードの変更を追跡して、後から取り込むことを許し、実験のさまざまなバージョンの異なる側面をすべて後から比較できるようにする。

開発者たちは、簡単に自らの機械学習フレームワークとCometを統合することができる。たとえ使っているのがKeras API、TensorFlow、Scikit Learn、Pytorch、あるいは単にJavaコードであっても関係ない。使い始めるためには、開発者は単にCometMLのトラッキングコードをアプリに追加し、いつものように実験を実行するだけだ。このサービスは、モデルをどこで訓練するかとは完全に無関係であり、もちろんその結果はチームメンバーと共有することができる。

理想としては、これによってデータサイエンティストは既存のワークフローと開発ツールを使い続けることができる筈で、それらに加えて、実験の効果をよりよく把握できる新しいツールが追加されたということである。

CometMLの共同創業者兼CEOのGideon Mendelsは「私たちは現在のMLチームが、10年から15年前に見かけたソフトウェアチームのように見えることに気が付きました」と語る。現代のソフトウェアチームは、GitHubのようなバージョン管理を提供するツールを使ってコードを共有しているが、MLチームは依然として電子メールでデータやコードを共有している。「主な課題は作業者の規律ではなく、ツールの状況なのです」とMendelsは語る。「現在使えるGitHubのようなツールは、ソフトウェアエンジニアリングのための素晴らしいソリューションですが、MLチームにとってはそうでもありません。ここでもコードが主要なコンポーネントであることには変わりがないのですが、それがすべてではないのです」。

Mendelsによれば、そのクローズド・ベータ期間中には、約500名のデータサイエンティストたち(いくつかのトップテクノロジー企業からの参加を含む)がサインアップしたということだ。これまでのところ、これらのユーザーたちはプラットフォーム上で約6000のモデルを構築している。

将来的には、CometMLチームは、より優れていて正確なモデルが開発できるように、開発者たちに対してより多くのツールを提供する予定だが、Mendelsによれば、そのためには同社はこの最初のバージョンを投入する必要があったのだという。

CometMLは、試してみたいすべての開発者が利用できるようになった。GitHubと同様に、公開プロジェクトを幾つでも作成できる無料枠があり、プロジェクトをチーム間でプライベートに保つ有料枠が提供されている。

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(翻訳:sako)

画像:Pete Saloutos/Getty Images