説明責任向上を目指してNorrsken VCはパートナー報酬にポートフォリオ企業の持続可能性達成度を紐づけ

最新の投資ファンドをクローズさせたNorrsken VC(ノルスケンVC)は、そのポートフォリオ企業が、単に経済的なリターンだけでなく、世界にもたらした有益な変化の評価も加味してパートナーへの報酬を決めるという、前代未聞の一歩を踏み出した。

2021年3月第4週に、2020年の影響評価を発表した同社は、国連が定める17の持続可能な開発目標(SDGs)のうちの7つに取り組む企業に投資を行い、その目標達成度を、厳しく監視されたものから、ややわかりきった当たり前のものまで、幅広い基準で審査してきた。

場合によっては、目標は単なる顧客満足度となることもある(製品に多くの顧客がつくことは、それだけよくやっている証だ)。しかし公正を期すならば、それは教育や医療など、企業のサービスが与えるインパクトを正確に測定するのが難しい分野に限られる。

同社のポートフォリオ企業は、気候変動緩和や持続可能分野において、はっきりと目に見える進歩を遂げている。排出削減やエネルギー効率の向上などの成果は、実際に簡単に測定できる。そしてそうしたエネルギー効率化や排出削減は、同社のフードテックおよびアグテック事業に関連する廃棄物低減の取り組みと相まって、同社では最高のパフォーマンスを示している。

ポートフォリオ企業がエグジットすれば、そのパフォーマンスは、Norrskenのパートナーに多大な影響を及ぼす。彼らの報酬は、直接それに左右されるからだ。

「私たちが投資を行うときは、その1つ1つに、インパクト面で期待される事業に関して投資前の目標を定めます」と、Norrsken VCのジェネラルパートナーTove Larsson(トーブ・ラーソン)氏はいう。「私たちはそれを、ファンドの主要なリミテッドパートナー数名とともに決めています。目標設定は、諮問委員会の承認を必要とするからです。目標は各年ごとに定め、その後は1年ごとに見直します」。

「ファンドがサイクルの終わりに到達すると、私たちはすべてのインパクトKPIを集計し、各企業の投資額に応じてウェイトを振り分けます。それに基づいて、Norrskenは各社の成功報酬の有無を判断します」。

ポートフォリオ企業は、Norrskenと諮問委員会が定めたインパクト目標の60パーセントを達成できた場合、成功報酬の半分を受け取ることができ、残りは慈善団体に寄付される。「割合は100パーセントまでの間で直線的に変化します。もし目標が達成できなかった場合は、成功報酬は慈善団体やNGOに寄付されます」とラーソン氏は話す。

「◯」はインパクト目標の達成度、「■」は成功報酬の割合(画像クレジット:Norrsken VC

Norrskenのパートナーは、その画期的な報酬構造を差別化のポイントと見定めつつ、特に国連のSDGsに関連するテーマに注力する企業の劇的な増加が継続されることに期待を寄せている。

「投資を開始したとき、私たちは一番手グループの一員でした。それは4年前です。それから市場は急速に変化しました。あまりにも変化が早いために、どうしたら突出できるのか、自分たちが本当のインパクトプレイヤーなのかどうか、どうすれば知ることができるのかを、みんなに聞いて回ったほどです」とNorrskenのジェネラルパートナーAgate Freimane(アガト・フリーメイン)氏は話す。

「これがDNAの中核部分です。私たちは良い結果を出して、有言実行を示さなければなりません」とフリーメイン氏はいう。そこで同社は、欧州投資基金の先例に倣うことにした。同基金は、報酬に同じような制限を課していると彼女はいう。「このやり方を聞いたとき、100パーセント納得できる、どうしてみんなやらないのかと感じました」。

これまで、同社が自ら定めた目標を達成できなかったことはなかった。「2020年の目標は119パーセント達成しました」とフリーメイン氏。それでも、長期目標の12パーセントに過ぎない。「現時点で実現したのは、私たちがファンドの期限内に行わなければならないことの10分の1です」。

不正確かも知れないが、その目標の一部として、同社のポートフォリオ企業が取り組んだ温室効果ガス排出とフードロスの削減、エネルギーの効率化には、計測可能な本物のインパクトがある。それは、データセンターのエネルギー需要を10ギガワット時まで削減するSubmer(サマー)の技術であり、食品廃棄量を1万1000トン削減できるKarma(カーマ)、Whywaste(ホワイウェイスト)、Matsmart(マットスマート)、 Olio(オリオ)の事業であり、洗車に使う水を400万リットル削減できるWoshapp(ウォッシュアプ)であり、Alight(オーライト)による38メガワットのソーラープロジェクトだ。

画像クレジット:Norrsken VC

「私たちが最も誇りに感じているのは、私たちが今これを実行しているということです」とラーソン氏。「現在開発中のものは完ぺきではありませんが、それは誰かが始めなければならないことだと、私たちは真剣に考えています。また、産業界がもっと透明になることが必要です。それを追跡し公開していることが1つの成果だと、私たちはまず言いたいのです」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:ノルスケン財団SDGs環境問題持続可能性

画像クレジット:Malte Mueller / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)