米国家安全保障局の通話記録収集は違法と控訴裁判所が判決

米国家安全保障局(NSA)が米国の通話記録の詳細数十億件を収集したプログラムが、米国時間9月3日に連邦控訴裁判所で違法と裁定された。

第9巡回区控訴裁判所は、NSAによる通話記録の「一括大量収集」は違法であると判決したが、判事団は同プログラムを違憲とは判断しなかった。

NSAは、第215条として知られている(未訳記事)、911テロ攻撃を受けて作られた新法を根拠に、日々の通話記録を提出するよう米国大手電話会社を説得し、毎年数十億件の通話記録を集めた。同局はこのデータを元に捜査対象間の繋がりを調べた。通話記録には誰が誰にいつ電話をかけたかが記録されているが、通話内容は含まれていない。

プログラムの詳細は、元NSA請負業者だったEdward Snowden(エドワード・スノーデン)氏が2013年に暴露(未訳記事)した。しかしその通話記録プログラムは、過剰な収集、合法性への疑問などさまざまな問題を指摘され、昨年中止された。

米国自由人権協会(ACLU)のPatrick Toomey(パトリック・トゥーミー)上級法務顧問は、今回の判決をプライバシー権利の「勝利」であると表明した。

「判決はNSAによる米国通話記録の一括大量収集が憲法違反であることを明らかにした。またこの決定は、政府が個人を訴追する際、証拠を集めるため秘密の調査を行ったことを通知しなければならないことを認めた」とトゥーミー氏は語った。「こうした保護は政府による新奇なスパイ道具の使用が蔓延する今日には不可欠だ」。

第9巡回区の裁判には、Bassaly Moalin(バサリー・モーリン)氏ほか3名が関わっており、2013年にアル・シャバブの武装グループに送金した罪で有罪判決を受けた。モーリン氏の判決理由の一部は、NSAが収集した通話記録によるものだったが、このデータが果たした役割はごくわずかであったため、彼らの有罪を覆すことはなかったと報じられた(Politico記事)。

NSAは長年にわたり同プログラムはテロ攻撃を阻止(ProPublica記事)し、米国国土を防衛するために不可欠である(Washington Post記事)と主張してきた。過去の政権は同プログラムが50以上のテロ攻撃を防いだと主張した。しかし、議会による精査の結果(ProPublica記事)、その数値は識別された個人であるモーリン氏1名へと下方修正された(ProPublica記事)。

裁判所はモーリン氏の有罪を破棄しなかったが、3名の判事団はプログラムの有用性と有効性に関する政府の過去の発言を批判し、「機密文書の内容と整合性がない」と指摘した。

人権の専門家でCato Institute(カト研究所)上級研究員のJulian Sanchez(ジュリアン・サンチェス)氏はツイートで、「この第9巡回区の結論は、NSAの通話記録一括収集は違法でありおそらく違憲であるということだが、同プログラムは役に立たないのでどちらでもいい」と投稿している。

NSAは以前の主張を維持するのか尋ねたところ、Mike Dusak(マイク・ドゥサック)広報官はコメントを拒んだ。

画像クレジット: Saul Loeb / AFP/ Getty Images

関連記事:NSA improperly collected Americans’ phone records for a second time, documents reveal(未訳記事)

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国家安全保障局が空港の顔認証を米国市民にも適用へ

国土安全保障省は、空港で入出国する旅行者の顔認証による検査を、これまで免除されてきた米国市民にも拡大しようとしている。

申請書類によると同省は、外国人旅行者だけでなく、米国市民を含む全旅行者に対して入国および出国前に顔認識チェックを実施することを提案した。

出発便乗客の顔認識は、国家安全保障局が不法滞在を摘発する取組みの一環として、最近行われることが多くなっている。国境と移民の管理を任務とする同省は、2021年までに米国の上位20カ所の空港に顔認識スキャナーを導入すると表明しているが、技術的課題を数多く抱えている。

空港で顔認識を回避する明確な方法ははっきりとは決められておらず、米国市民と合法永住者(グリーンカード保有者とも呼ばれる)は検査を免除されると現行規則に書かれている。

今回提案された米国市民を検査対象に含める規則変更は、国内最大級の人権擁護団体の怒りを買った。「再三再四、政府は国民と議員に対して、米国市民は旅行の条件としてこの煩わしい監視テクノロジーの対象になる必要がないと言ってきた」と米国自由人権協会の上級政策アナリストであるJay Stanley(
ジェイ・スタンリー)氏は語る。

「この新しい提案はそもそも不十分だった約束を政府が反故にしようとするものだ」と同氏。「旅行という憲法で守られた権利を行使するための条件として、米国市民を含む旅行者が横暴な生体認証を受ける必要はないはずだ。この強力な監視技術の大規模な導入を政府が強行することは、重大なプライバシー問題だ」とスタンリー氏は語った。

6月にナンバープレートおよび旅行者の顔写真が10万件近く漏出したことに加え、データ保護の十分な対策がなされていなかったことで、「このテクノロジーに関して政府を『信用することはできない』、立法府が介入すべきだ」と同氏は言う。

国家安全保障局および税関・国境警備局は、TechCrunchのコメント要求にすぐには応じなかった。

関連記事:CBP says traveler photos and license plate images stolen in data breach

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook