NASAは天文学とエンジニアリングでのVRとARの本当の使い道を発見

実用的なVRハードウェアが登場して数年が経つが、ゲームや見世物以外で、この技術を用いた、これでなければといった利用法はまだわずかしかない。だがNASAでは、あるチームが、科学やエンジニアリングに利便性をもたらすリ方法の研究を続けており、有望でユニークな結果を生み出している。

我々の銀河系に存在する天文学的数の恒星の研究は、一般に古くさい道具や拡散したデータベースに頼っている。紙と鉛筆が活躍している場合すらある。それでは非常に優れた汎用パターン認識エンジン、つまり人間の脳の効率を最大化して情報処理に当たらせるのは難しい。

NASAゴダード宇宙航空センターのTom Grubb(トム・グラブ)氏は、この種のデータの調査や処理にはVRとARが有用なツールになると何年も前から感じていたのだが、彼のチームは、これらの技術を使って直接得られた結果に関する最初の論文を発表した。

彼は、同僚たちとVR環境を使い、アニメーション化した近隣の恒星の調査を行ったところ、他の天文学者が存在を否定していた新しい恒星グループの特定に成功した。恒星の軌跡と位置を三次元空間で直感的に観察できるため、決定的な洞察力が得られるのだ。

PointCloudsVRの恒星データの表示例

「プラネタリウムでは、入手可能なあらゆるデータベースから情報をアップロードでき、人々を宇宙の中に案内できるようになります」と天文学者Marc Kuchner(マーク・クチナー)氏はNASAのニュース記事に書いていた。「私のオフィスの中にプラネタリウムを作るわけではありません。でも、ヘッドセットを装着すれば、もうそこがプラネタリウムです」

グラブ氏とそのチームは、天文学用データベースのみならず、エンジニアリングの作業をVRで行うためのソフトウェアをいくつも開発した。重工業界は、安全対策、メンテナンス、訓練といった日常的作業にVRとARを活用する方法を研究しているところでもあり、NASAはエンジニアリングでの活用とクロスサイト・コラボレーションの可能性を探っている。

彼らの研究には、データの閲覧と操作のための基本ツールの確立も含まれている。

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「ハードウェアはすでにあります。サポートもあります。ソフトウェアは、仮想世界とのインタラクションの統一と同様に遅れています」とグラブ氏は説明する。「ピンチやズームのような操作方法、マウスの右クリックや左クリックがみな同じ動作をするといった、簡単な決まりすらありません」と続ける。

しかし、三次元の星図や探査船の内部を再現した仮想環境に人を送り込みさえすれば、新たな発見の機会が開かれる。

「私たちはみな同じ環境の中にいます。そこで誰かが何かを指さしたり、動かしたりすると、みんなでそれを見ることができます」とグラブ氏。そして「モックアップの製作はまだ必要ですが、実際に作る前の段階で何度も練り直しができます。ケーブルの取り回しなんていう話は一般の人は興味を示さないでしょうが、エンジニアにとって、仮想環境でそれができて、どれだけのケーブルが必要で、配線がどのように見えるかを事前に把握できるのは、とっても有り難いことです」とのことだ。

研究は今も続けられている。彼らの最初の天文学的成果を解説した論文は間もなく出版される。もちろん、彼らが作ったものは、折に触れて一般公開もされている。例えば、彼らが恒星やライダーのデータを見るのに使用しているPointCloudsVRツールは、GitHubですべてダウンロードできる。

画像クレジット:Chris Gunn / NASA

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(翻訳:金井哲夫)