3Dプリンターの普及によって、コスプレ用品から交換部品まで、かつては考えられなかったものを誰でも作れるようになった。しかし、3Dプリンターでカスタマイズ製品に新しい世界が開けた今も、衣服は相変わらず既製品を買っている。MITの研究者らは、誰でも毛糸の玉を持ったことのない人でも、編み物ができるソフトウェアを開発している。
MITコンピューター科学・人工知能研究所(CSAIL)のAlexandre Kaspar(アレクサンド・キャスパー)氏率いるグループは、本日そのソフトウェアに関する論文を2点発行した。InverseKnit(インバースニット)は、編み物作品の写真から自動的にパターンを作成する。新しいデザインソフトウェアのCADKnitは、編み物もデザインの経験もない人がテンプレートのカスタマイズ、サイズ、デザインの調整などが簡単に体験できる。
出来上がったパターンは家庭用編み機で使用できる。編み機は数年前から販売されているが、そのためのパターンをデザインするためにはかなりの技術知識が必要だ。
CADKnitとInverseKnitは、いずれも機械編み物のデザインと製作を3Dプリンティングのように簡単にすることを目指している。これらのソフトウェアが商品化されたら、「Knitting as a service」(サービスとしての編み物)が実現するとキャスパーr氏は考えている。服飾デザイナーが機械向けのデザインをする時間も短縮できる。ほかには、新しい編み方を試してみたい編み物愛好家にもソフトウェアの需要がある。
「3Dプリンターのユーザーやハッカーたちも我々のシステムの重要な潜在ユーザーだ。編み物でも同じことができるようになるのだから」とキャスパー氏は言った。
CADKnitとInverseKnitのパートナー候補として、Kniterate(ニッテレート)が挙げられる。ホビーストやスモールビジネス向けにデジタル編み機を作っている会社だ。キャスパー氏は、現在編み物のカスタマイズを容易にする方法をKniterateのチームと検討していると言っていた。
CADKnitは、2D画像とCADおよび画像編集ソフトウェアを組み合わせてカスタマイズ可能なテンプレートを作る。機械編みの経験のないユーザーでも、レースモチーフやカラーパターンなどを含む手袋や複雑な服を作れることようテストしてきた。
開発者たちはInverseKnitを作るために、まず編み物パターンと対応する画像のデータセットを作り、ディープニューラルネットワークを使って機械編みパターンを生成した。チームによると、InverseKnitのテストにおいてシステムは94%の確率で正確なパターンを生成した。ただし商品化にはまだやるべき作業が残っている。たとえば、これまでのテストは一種類のアクリル毛糸を使っており、ほかの繊維でも使えるように訓練する必要がある。
「3Dプリンティングで何かができると人々が思うまでにはしばらく時間がかかった」とKaspar氏は言う、「われわれがやっていることも同じだろう」
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )