通過するだけでチェック完了のボディースキャナー―、開発元のEvolvが1800万ドルを調達

商業施設を運営する企業は、アメリカ運輸保安庁ほどの資金を持っていないながらも、テロや銃撃事件が増加する中、人の安全を守るための手段を模索している。Evolv Technology Inc.と呼ばれるスタートアップは、そのような資金に限りのある企業でも、手作業による身体検査ではなく、最新鋭のテクノロジーを使って事件を未然に防げるようなプロダクトを開発している。この度同社は、1800万ドルを調達したと発表した。

なお今回のラウンドには、General CatalystLux Capital、Gates Ventures、Data Collectiveらが参加していた。

マサチューセッツ州ウォルサムに拠点を置くEvolvは、物理的なセキュリティチェックのためのソフトウェアとハードウェアを開発している。同社のEvolv Edgeシステムは、8フィート(約150cm)ほどの高さのセキュリティゲートで、ゲートを通過する人を高速でスキャンできるため、対象者は立ち止まったり、ゆっくり歩いたりする必要がない。同社が独自に開発した、ミリ波画像認識センサーを搭載したシステムは”異物”を検知し、爆弾や銃器などが施設に持ち込まれるのを防ぐことができる。

Evolv Edgeは、基本的に空港にあるボディスキャナーのような機能を備えているが、動作スピードは空港のボディスキャナーを大きく上回り、1時間あたり600人をチェックできると同社は話す。

さらにEvolvのシステムは、カメラや顔認識ソフトとも併用できるので、施設に入って来た人を関連データベースと照合し、もしもその人が施設への立ち入りを禁じられていたり、過去に凶悪犯罪に関わっていたりすれば、システムがアラートを発し、警備員がその人を詳しく検査できるようになっている。

CEOのMichael Ellonbogenは、「安全を守るために、私たちは物理的セキュリティに関する認識を根底から変え、生活の中にセキュリティ設備を埋め込んでいかなければいけないと私は考えています。私たちが日頃訪れるような場所でランダムに発生する暴力的な事件を許容しながら、安全を確保することなど不可能です。一方で、市民の安全を守るためとはいえ、何千人もの警官や軍隊を送り出して、世界中の観光地など人が集まる建物や商業施設の入り口を全て封鎖するような事態も受け入れられません」と話す。

Evolvは既に、スポーツ施設やエンターテイメント施設、交通のハブとなる場所やその他の商業施設を運営する企業を顧客に抱えているが、各施設の名前を明かすことはできないとEllonbogenは付け加える。

Evolvの株主であるLux CapitalのBilal Zuberiは、同社の顧問委員会や実務にあたっている社員が持つ、セキュリティ関連の専門知識を評価している。顧問の中には、国土安全保障省やニューヨーク市警、FBI、運輸保安庁といった組織で指導的役割を担っていた人も含まれているのだ。なおEvolvの投資家は、同社が今回の調達資金を、人員の増強や顧客ベースの拡大、研究開発などに使うことを期待している。

「残念なトレンドではありますが、物理的セキュリティは各地で起きる事件の深刻化と共に、進化を続けているため、テクノロジーを使ってセキュリティ上の問題を解決しようとしている企業が活躍する余地はまだあります。Evolvは独自に開発したセンサーや機械学習、AIといったテクノロジーを利用し、私たちの周囲で実際に何が起きているのか、そして身の回りにいるべきではない人がいないか、というのを解明しようとしています。彼らのゴールは、私たちの日常生活を妨げることなく、かつ誤報を起こさず、日常生活に潜む脅威を早期発見することです。将来的には、Evolvのゲートを通るだけで安心できるようになるでしょう」とZuebriは語る。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter