近年、大企業とスタートアップの距離が急速に縮まってきている。本体やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を通じた出資、事業間の連携・協業、アクセラレータープログラムの実施など、関連する話題に触れる機会が増えた。
TechCrunch Japanでは日本国内のスタートアップの資金調達ニュースを日々紹介しているが、出資先の顔ぶれを見ても、大企業の名前を頻繁に目にするようになってきている。
そして6月26日、また1社国内の大企業がスタートアップとの協創に力を入れていく方針を示した。その企業とは鉄道事業を中心に、複数のビジネスを手がける近鉄グループホールディングス。同社は8月にCVC「近鉄ベンチャーパートナーズ」を設立することを明らかにした。
近鉄グループが展開する運輸、旅行・レジャー、流通・飲食、ホテル、不動産、広告・情報サービスといった各事業とシナジーが見込めるスタートアップが投資の対象で、出資枠は20億円。具体的には「グループ事業とのシナジーの観点」と「新事業創出の観点」で投資先を決めていくようだ。
・グループ事業とのシナジーの観点
- あらゆる事業分野で必要となる運営の効率化・省人化
- グローバル&ICT社会でのマーケティング、プロモーション、コミュニケーション力強化
- 顧客ニーズの多様化に対応するサービスの高度化、付加価値向上
・新事業創出の観点
- 高齢化・人口減少などに対応する新事業・サービス、地域活性化策
- 環境・エネルギー、農業、健康・医療などの社会課題の解決を目指す新事業
- Fintechなど、テクノロジーの進化そのものが創出する新事業
近鉄グループが各事業分野において保有するデータや顧客基盤、沿線社会などのリソースをスタートアップに提供することで、事業領域の拡大や新たな事業の創出も目指していく方針だ。
なお鉄道会社ではJR東日本が2018年2月にCVCのJR東日本スタートアップを設立。駐車場シェアの「akippa」や腰痛対策アプリ「ポケットセラピスト」のバックテックに出資をしているほか、JR西日本もJR西日本イノベーションズを通じて荷物預かりシェアの「ecbo cloak」を展開するecboなど複数社に出資している。