格安航空会社のAirAsia(エアアジア)がVCゲームに参入しようとしている。世界中のスタートアップに投資するベンチャーキャピタルファンドを明らかにした。
エアアジアは今日、独立して運営されることになる、旅行、ライフスタイル、フィンテック、ロジスティックなどの分野の世界中のスタートアップに投資する6000万ドルのファンドRedbeat Capitalを発表した。対象となる可能性のあるスタートアップにとってのこのファンドのセールスポイントは、エアアジアの東南アジアにおける事業を利用できるチャンスがあることだ。エアアジアは毎年、乗客9000万人を運んでいる。
ファンドの規模は6000万ドルを目標としているが、これまでにいくら確保したのかは明らかにしていない。このファンドはほとんどサンフランシスコと東南アジアのスタートアップに注入されることが予想され、ディールフローやアイデア交換で500 Startupsに協力を仰いでいる。
エアアジアは財政危機に伴う株価下落でこのところ苦しんでいたが、それでも企業価値は20億ドル以上ある。グループCEOのTony Fernandes氏によると、Redbeat Capitalはエアアジアのフォーカスを広げ、単なる航空会社以上の存在になるという野心的な戦略の一部だ。
「私はエアアジアを今後5年以内に人を運搬するだけの会社から何か違うものにすると決めた。これは、私がエアアジアを興したときと同じく、全体的なトランスフォーメーションにおいて重要なステップだ」と Fernandes氏はTechCrunchとのインタビューで語った。
「我々の最初のトランスフォーメーションは、ウェブを使う低コストの航空会社であるということで、我々のカルチャーはこれまで常にテックの中にあった」と彼は加えた。「そして今、我々はすでに構築したプラットフォームを使いながら第二ステージに向かっている」。このプラットフォームにはBigPay支払いサービス、BigLifeアプリ、そしてロジスティック事業が含まれる。
しかしこれは、少なくともFernandes氏によると、コーポレートファンドではない。
Redbeat Capitalは出資者から資金を調達している。出資者について詳細を語ることは断ったが、Fernandes氏はRedbeat Capitalが投資収益をあげることとエアアジアを下支えする両方のバランスをとることになる、と語った。エアアジアはすでにコーポレート投資のRedbeat Venturesを抱えているが、これがインキュベーターと、会社とつながる金融商品に変わる。その一方でポートフォリオはRedbeat Capitalとなる、と説明する。
「単にエアアジアの一部門としてではなく、もう少し独立性を持たせたかった。それが実行可能かどうかみていた」とFernandes氏は付け加えた。
ディールに関しては、Fernandes氏は「ポストシード」とだけしか語らなかった。ファンドは必要に応じて最大500万ドル、平均100万ドルの資金を提供できるとのことだ。
シリコンバレーは初めて投資を行う人にとっては食い込みにくいマーケットだ。にも増して、エアアジアは米国で事業を展開しておらず、カリフォルニアではあまり名が知られていない。しかしRedbeat Capitalが東南アジアへの珍しい玄関口を提供し、そこからインドや中国も視野に入ることになるとFernandes氏は確信している。
「インドや中国で競争するのはお金がかかる。しかし東南アジアはまさに今始まろうとしている。我々と戦略を展開し、相互利益のために我々のデータベースやプラットフォームを使う企業を探している」と語った。
エアアジアは、そうした企業がこの地域でユーザーを獲得したりマーケティングを行ったりする(この2つは最もコストがかかる)のをサポートするためにエアアジアのプラットフォームや顧客ベースを活用する用意がある、とも彼は説明した。
東南アジアをめぐっては楽観論が多くみられる。Googleがシンガポール政府投資公社と共同で出した最新のレポートでは、この地域のデジタル経済は2025年までに3倍の2400億ドル規模に到達すると予測している。
これは500 Startupsの動きを反映したものでもある。500 Startupsは東南アジアで資金を運用していて、直近でも新たなグローバルファンドを育成中だ。
「東南アジアは米国よりも多くのインターネットユーザーを抱えている。これは起業家にとって大きなチャンスだ。エアアジアのような業界大手が500 Startupsとの提携を通じてシリコンバレーとの架け橋を築くというのは、グローバル展開を目指している多くのスタートアップにとってエキサイティングなことだ」と500 StartupsのCEO、Christine Tsai氏は声明で述べた。
それでも、Redbeat Capitalがコーポレート投資と収益目的のディールとの間で、かなり異なる需要のバランスを取ることができるのかは未知数だ。大企業のファンドは収益目的にあまりフォーカスしない傾向にあり、一般的に投資収益率に基づいて親会社内の“イノベーション”を促進するのにフォーカスしている。もちろん、専門ファンドは資金とそれにプラスしたものを出資者に返すために存在している。
それでも、音楽、英国のサッカー、フォーミュラ1レースなど幅広くビジネスの興味を持っているFernandes氏は性格的にチャレンジに向いている。ただ、彼は直接は関わらない。このベンチャーはエアアジアのデジタル戦略を率いるグループのCEO、Aireen Omar氏がトップに就く。しかし彼女の上司が常に監視している。
「慣習にとらわれないが、早期に結果を出すことが望まれる」とFernandes氏は語った。
イメージクレジット: Marcio Rodrigo Machado/S3studio / Getty Images (Image has been modified)
(原文へ 翻訳:Mizoguchi)