米国のサイバーセキュリティ企業NortonLifeLock(ノートンライフロック)は、グローバルな消費者向けセキュリティ企業を構築するため、英国のライバル企業であるAvast(アバスト)を買収すると発表した。
この合意は、両社が2つのブランドの統合の可能性について協議を進めていることを確認したわずか数週間後に行われたもので、Avastの株主は現金と株式を受け取ることになり、総額81億~86億ドル(約8849億~9395億円)規模の取引となる。これにより今回の合併は、Thoma BravoによるProofpointの123億ドル(約1兆3437億円)の買収、Broadcom(ブロードコム)によるSymantec(シマンテック)のエンタープライズ事業の107億ドル(約1兆1690億円)の買収に続き、サイバーセキュリティ関連の買収としては史上3番目の規模となる。
Symantecからのスピンオフとして2019年に設立されたNortonLifeLockは、今回の買収により、業界をリードする消費者向けサイバーセーフティ事業が誕生し、年間約2億8000万ドル(約305億9000万円)のグロスコストシナジー効果が発揮されるとともに、Avastの抱える4億3500万人の顧客基盤により、ユーザー数が飛躍的に拡大するとしている。
NortonLifeLockのVincent Pilette(ヴィンセント・ピレット)CEOは、声明の中で次のように述べた。「この統合により、当社のサイバーセーフティプラットフォームを強化し、5億人以上のユーザーに提供することができます。この取引は、消費者のサイバーセーフティにとって大きな前進であり、最終的には、人々が安全にデジタルライフを送れるように保護し、力を与えるという当社のビジョンを達成することにつながります」。
1988年に設立されたAvastは消費者や中小企業向けのサイバーセキュリティソフトウェアに注力しており、自らを最大級のセキュリティ企業と称している。しかし、30年余りの歴史の中でスキャンダルがなかったわけではない。同社は2020年、マーケティングテクノロジー子会社であるJumpshotが、個々のユーザーに紐づけることが可能なウェブ閲覧データを販売していたことが発覚し、Jumpshotの閉鎖を余儀なくされた。
NortonLifeLockによる同社の買収が完了したあとは、ピレット氏は新事業のCEOに留まり、AvastのCEOであるOndrej Vlcek(オンドレイ・ヴルチェク)氏が社長に就任し、取締役会に参加すると両社は説明している。
ヴルチェク氏は次のように述べた。「我々の有能なチームは、優れたデータインサイトへのアクセスにより能力を向上させ、より優れたソリューションやサービスを革新的に開発する機会を得ることができるでしょう。当社の定評あるブランド、地理的な多様性、より多くのグローバルユーザーへのアクセスを通じ、統合されたビジネスは世界中に存在する大きな成長機会にアクセスする態勢が整います」。
合併会社の最終的な名称はまだ決定していないが、NortonLifeLockは、チェコ共和国と米アリゾナ州テンペに2つの本社を置き、今後2年間で従業員数を5000人から約4000人に削減することを確認している。統合後の会社は、現在のロンドン証券取引所(LSE)ではなく、NASDAQに上場する予定だ。
NortonLifeLockが無料アンチウイルスプロバイダーのAvira(アビラ)を3億6000万ポンド(約544億円)で買収した数週間後に確認されたこの取引は、2022年半ばに完了する予定だ。
関連記事
・セキュリティソフト開発のNortonLifeLockが同業Aviraを約374億円で買収
・産業用サイバーセキュリティのNozomi NetworksがIPO前に約110億円調達
・マイクロソフトがIDとアクセス管理のCloudKnoxを買収、4社セキュリティ関連でM&A連発
カテゴリー:セキュリティ
タグ:NortonLifeLock、Avast、買収、サイバーセキュリティ
画像クレジット:Norton LifeLock / Wikimedia Commons
[原文へ]
(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)