スタートアップ向け人間ドックが紀尾井町に誕生、標準価格より2〜3割安価

Coral Capital(500 Startups Japan)は、クリニックチェーンの経営支援を行うCAPSおよびその支援先である医療法人ナイズと提携し、スタートアップ企業の創業者と経営陣向けに人間ドックの格安プログラムの提供を開始した。対象となるのは、Coral Capitalと500 Startups Japanの投資先の創業者と経営陣。

具体的には、医療法人ナイズが運営するキャップス健診クリニック紀尾井町で人間ドックを利用できる。実際の料金は検査項目で変化するが、通常よりも2〜3割安い料金で受診できるとのこと。さらにCAPSが運営する24時間フィットネスクラブ「データフィットネス六本木」も特別料金で利用可能になる。

人手が限られるスタートアップの創業期は自分の限界まで働く経営者が多い印象だが、最近では20代の若手起業家だけでなく、一般企業でキャリアを積んだうえで各業界の問題点を解決すべく起業する30代、40代の経営者も増えている。スタートアップ=若手という構図は崩れており、連日かつ長時間の激務を「若さ」では乗り切れない経営者が増加傾向だ。

とはいえ、数人のメンバーしかいない創業期は報酬も低めなので、高額な人間ドックは敬遠されがち。こうした状況を踏まえて、スタートアップ経営陣向けの人間ドックのアイデアが生まれたそうだ。フィットネスクラブの利用も含め、スタートアップ経営陣の健康を守ることを目指すという。

Coral Capitalは、米ベンチャーキャピタルの500 Startupsの日本向けファンドである500 Startups Japanのメンバーが、新たに設立したベンチャーキャピタル。なおCAPSは、500 Startups Japanの出資先でもある。

CAPSは、かかりつけの医療機関向けの総合支援サービス「プライマリケア・クリニックチェーンマネジメント」のサービスを提供するスタートアップ。クリニックを開業する際の不動産の選定・取得から、経営システム、電子カルテの構築・運用、医師や看護師の募集をまとめてアウトソージングできる。さらに、365日、夜間対応も可能な診療体制を支援する。

自分では若いと思っても、身体のどこかに鈍い痛みが生じ始める30代、40代。今回のような健康支援プログラムが充実してくれば、スタートアップ企業の働き方改革も進むはずだ。

 

iPadで問診、医師と看護師の働き方改革を目指すCAPSが資金調達

写真中央がCAPSで最高医療責任者を務める白岡亮平氏

CAPSは12月20日、第三者割当増資による500 Startups Japanからの資金調達を発表した。調達額は1億円を超えない額。

同社は、かかりつけの医療機関向けの総合支援サービス「プライマリケア・クリニックチェーンマネジメント」を提供する創業4年目の企業。これはクリニックを開業する際の不動産の選定・取得から、経営システム、電子カルテの構築・運用、医師や看護師の募集をまとめてアウトソージングできるサービス。365日、夜間対応も可能な診療体制を支援する。

現在は、CAPSの最高医療責任者・白岡亮平氏が理事長を務める医療法人社団ナイズ向けにサービスを提供中だ。ナイズは、西葛西、北葛西、代官山、紀尾井町、柏の葉の首都圏6拠点でクリニックを運営しており、のべ16万人以上(2017年実績)の患者がいる。CAPSとしては当面、同サービスを導入しているナイズの拠点を増やしていく方針だが、将来的にはほかのクリニックへの提供を積極的に進め「2021年ぐらいに100拠点を目指す」とのこと。

白岡氏によると「医療機関は全国に10万拠点ほどあるが、その95~96%が個人経営」だそうだ。個人経営のクリニックでは、カルテの記録や保管、医師や看護師のシフト管理、給与計算、患者の予約管理など、医療行為以外の業務を院長や少数の看護師が自ら行うこともある。働き方改革が叫ばれる中、これらの業務負担により夜間診療が難しいうえ、時間外労働時間を減らせないのが現状なのだという。

ネット経由の予約システムはもちろん、問診のシステムも提供

ナイズでは、「プライマリケア・クリニックチェーンマネジメント」の導入により、1時間あたりで診療できる患者数を68人から、最大1516人に増やせたそうだ。具体的には、問診にiPadを活用することで時間短縮を実現している。問診はウェブ経由でも利用できるため、移動中にスマホで問診を済ませることも可能だ。白岡氏によると「ナイズでは、受付、問診、診察、会計のそれぞれの業務にかかった時間をログとして記録しており、どこで待ち時間が多く発生しているかを分析して最適な人員の配置を実現している」とのこと。現在、医師や看護師の時間外労働は月10時間以内で、離職率も低下したそうだ。

さらに小児科がメインの西葛西では21時まで、亀有と柏の葉では20時30分まで、北葛西では20時までの夜間診療を実施している。一般的に18時~22時の診療は「時間外加算」のため診療報酬点数が上がり、クリニックを個人経営するうえでのインパクトは強い。患者にとっては診療費は少し上がるものの、会社帰りでも医師の診断を受けれるという直接的なメリットのほか、蓄積された各種データにより自分の健康維持に役立てられ、病気の予防にもなる。「プライマリケア・クリニックチェーンマネジメントの導入により、セルフメディケーションで治療できる患者を増やしたい」と白岡氏。

500 Startupsから資金調達を受けた理由について白岡氏は「資金調達なしでもサービスの運営を続けられるが、500 Startupsとの提携で知名度を上げて優秀なエンジニアを確保するのが1つの狙い」とのこと。過酷な労働環境としてメディアにも頻繁に取り上げられる医療の現場が、こういったサービスの広がりで改善されることを期待したい。