福利厚生サービスを米国で展開するAnyPerkが社名をFondに変更、無料の会社文化測定サービスも展開

Fond CEO兼共同創業者の福山太郎氏

日本人チームとして初めてY Combinatorの起業家支援プログラムを卒業し、現在は米国トップシェアとなる福利厚生サービスを展開するAnyPerk。Y Combinatorでの経験などはTechCrunch Japanでも以前に詳細をお伝えしているが(前編後編)、同社は今や米国の福利厚生サービスでトップシェアにまで成長した。そんな同社がさらなる事業の展開に向けた一歩を踏み出した。AnyPerkは4月5日、社名をFondに変更したことを発表した。加えて、会社文化の測定を行う無料サービス「EngagementIQ」の提供を開始した。

僕がFondメンバーのことを知ったのは2011年頃、当初はOpen Network Labの起業家支援プログラム「Seed Accelerator Program」の第3期に採択され、国内でSNSの開発を行っていた。その後、CEO兼共同創業者の福山太郎氏率いるチームは渡米、Y Combinatorの門を叩くことになる。

そこからの起業家としてのストーリーについては前述の過去記事などを参考にしてもらいたいのだが、現在同社が展開するのは、福利厚生のアウトソーシングサービスである「Perks(社名変更に合わせて「Fond Perks」にサービス名を変更)」、そして2016年5月からスタートした社員の承認・表彰サービスの「Rewords(同じく「Fond Rewords」に)だ。

福利厚生サービスは米国大手企業も導入

「Fond Perks」のイメージ

Fond Perksは、導入企業の社員が、映画鑑賞や携帯電話料金など850以上の特典・割引を受けられるサービスだ。日本で言えばベネフィット・ワンやリロクラブなどをイメージしてもらえればいいだろう。導入企業向けにGoogle Chromeの拡張機能などを提供することで、サービス利用可能なサイトの通知をするなどしてユーザーの利便性を図っている。

またFond Rewordsは、導入企業の社員がミッションを達成した際や彼らの誕生日、記念日などに、マネージャーがポイントを送ることができるサービス。ポイントはAmazonギフト券などに交換することができる。福利厚生とは異なり、日本では余り馴染みのない「Rewords」の文化だが、マーケットは日本円で年間4兆6000億円。一方で13%しかオンラインでマネジメントできていないのが実情だという。

Fondのサービスを導入する企業は、SalesforceやVirginなどの大企業も含めて1000社以上になるという。Perksのユーザー企業は、その半数が米国西海岸のテック企業だ。一方、Rewordsではテック企業の割合が約10%。それ以外は学校や歯医者など幅広いのだという。日本と比較して離職率の高い米国。さらに人材競争が激しいマーケットでは、当然給与以外での差別化が求められる。企業は採用を積極的にするよりも、さまざまなメリットを提供して社員の満足度を高めて長期の雇用を行うことを重視するのだという。例えばGoogleやFacebookのオフィスがステキだなんてたびたびメディアで紹介されるが、それだって社員の満足度向上の一環だ。

福山氏に聞いたところによると、ミレニアル世代(2000年以降に成人した、1980〜2000年頃生まれた世代)は離職についての考え方でもこれまでの世代と違うようで、彼らはSnapchatやInstagramでそんなGoogleやFacebookのオフィスで働く友人の光景を気軽に見ることができる。現在の自分の環境と比較して早々に離職してしまうのだそうだ。

福利厚生からスタートしたAnyPerkではあったが、Rewords、そして今回発表されたEngagementIQを通じて、エンプロイエンゲージメントと呼ばれる領域を広くカバーしていく。今回の社名変更にはそんな意思があるのだろう(ちなみに「fond」は好き、好むといった意味だ)。Fondは新しいミッションとして「どんな企業でも社員のやる気を引き出し、その貢献度をきちんと認識する、そして自社の文化を測定する、それを可能にする革新的な方法を我々が作り出すこと」と掲げている。

社員文化的な健全度を測定する新サービス

あらためて新サービスのEngagementIQについて説明しよう。これは社員が企業における目的意識や認識、ほかの社員との繋がりなどをどう考えているかという、職場文化の健全度をはかるサービスだという。社員に対して6つの質問をすることで、その健全度を導き出す。サービスは無料。米国をターゲットにしているため、英語のみでの提供だが、米国外からの利用も可能だ。

Fondによると、会社に認めてもらっていると感じ、自らの職場を気に入っている社員の多い健全な組織は、やる気を持たず正しく評価されない社員の多い組織よりも業績がいいという研究もあるのだという。このサービスで健全度を測定し、その状況に合わせて福利厚生サービスなどを導入することで、よりよい職場環境を整えることができる、EngagementIQはその窓口とも言えるサービスだ。

「社員の健全度は営業(成績)などと違って測定が難しいので、プライオリティが低くなってしまう。だがニューヨークやサンフランシスコでは、2年ほどで会社を辞めるということが多い。そうなると採用よりもケアが大事になってくる。それならまずは『はかる』というところからやっていく」(福山氏)

Fondのメンバーら