AIでタンパク質医薬品の発見に挑むLabGeniusが約11億円を調達

AIとロボットオートメーションでタンパク質医薬品の発見に挑むロンドン拠点のLabGenius(ラボジーニアス)が、シリーズAで1000万ドル(約11億円)を調達した。

Lux CapitalObvious Venturesがラウンドをリードし、Felicis Ventures、Inovia Capital、Air Street Capital、さらに既存株主も参加した。Recursion Pharmaceuticalsの創業者兼CEOであるChris Gibson(クリス・ギブソン)氏と、Googleの前CFOで現在はInovia CapitalのゼネラルパートナーであるPatrick Pichette(パトリック・ピシェット)氏も投資した。

Lux CapitalのZavain Dar(ザベイン・ダール)氏とObvious VenturesのNan Li(ナン・リー)氏が、LabGeniusの取締役会に加わる。同社に初期から投資している投資家には、Nathan Benaich(ネイサン・ベナイチ)氏、Torsten Reil(トーステン・レイル)氏、Entrepreneur FirstのMatt Clifford(マット・クリフォード)氏、Philipp Moehring(フィリップ・モーリング)氏がいる。

「LabGeniusは何でもこなすタンパク質エンジニアリング企業だ。AI、ロボットオートメーション、合成生物学を組み合わせ、次世代のタンパク質治療薬を作る」と創業者兼CEOのJames Field(ジェームス・フィールド)博士は語る。

「人間だけがイノベーションの担い手になる時代は終わるという仮説が当社の原動力だ。私はその仮説を確信している。人間の代わりに、経験的計算エンジンと呼ばれるスマートロボットプラットフォームが、新しい知識、技術、洗練されたリアルな製品を生み出す。経験的計算エンジンは、ソリューションスペースを再帰的かつ効率的に検索できる人工システムだ」。

LabGeniusの主力テクノロジー「EVA」は、フィールド氏によれば新しいタンパク質を開発 できる「機械学習主導型のロボットプラットフォーム」だ。「スマートロボットプラットフォームとして、EVAは独自の実験を設計・実施し、批判的に学習することができる」と同氏は説明する。目標は、人間の力だけでは探索が困難な新しいタンパク質治療薬を発見・開発すること。

「サイエンティスト、エンジニア、テクノロジストは何十年もの間、新しい知識、技術、洗練された現実世界の製品を自動で発見できる『ロボットサイエンティスト』の育成を夢見てきた」とフィールド氏は述べた。

「タンパク質エンジニアにとって、その夢は射程圏内に入ってきた。合成生物学、ロボットオートメーション、機械学習の急速な技術進歩により環境は整った。新しい治療用タンパク質を効率的に発見するスマートロボットプラットフォームの構築に必要な技術が手に入るようになった」。

フィールド氏は、EVAの開発を「長期的で野心的な取り組み」として位置づけている。EVAによって、これまで解決不可能だったタンパク質エンジニアリングの課題に対処し、緊急性の高い治療薬を開発できるようになると述べた。

フィールド氏は「私が考えるLabGeniusの最終目標は、世界最先端のタンパク質エンジニアリングプラットフォームを活用した完全統合型のバイオ医薬品会社を作ること。正直なところ、壮大な取り組みだ。世界最高水準の技術を持つ洗練されたタンパク質エンジニアリング事業をすでに確立したが、実現可能なことのほんの一部に触れたにすぎない」と語った。

多くのディープテクノロジー企業が共通して直面している緊張感がある。現実世界の商業的なニーズにしっかり応えるテクノロジーを開発しなければならないというプレッシャーだ。それが最善の開発方法を探す原動力になっている(資金を使い果たす前に探す必要がある!)。 「LabGeniusの場合、創業当初から複雑な商業プロジェクトを受注して、意図的にそれを成し遂げてきた」とフィールド氏は述べた。Tillotts Pharma AGと共同で、炎症性腸疾患の新薬候補を特定・開発する進行中のプロジェクトがある。

フィールド氏は「当社のビジネスモデルは非常にシンプルだ。我々はEVAで新薬の分子を発見し、それを市場に投入できる製薬会社と提携する。パートナーが資金を提供する典型的な早期発見プログラムでは、コンセプトから前臨床前段階までをカバーするプロジェクトを立ち上げる。典型的なディールストラクチャーには、研究開発費、マイルストーン、ロイヤリティといった要素が含まれる」と説明した。

LabGeniusは調達した資金で人員増強、ディスカバリープラットフォームの範囲拡大、「内部資産開発プログラム」開始に着手する。次の目標は、従来の抗体フォーマットでは対応できない状態を扱える新しいフラグメント抗体を開発することだ。

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(翻訳:Mizoguchi)