I Forgot My Phone ― 話題のショートムービーを見てみた

あちこちでかなり話題になっているようだ。今の「コミュニケーション時代」を客観的に見る面白い内容で、ある種のショックを感じる人も多いのではなかろうか。このショートムービーの主人公はスマートフォンを持っていない女性だ。時代にそぐわない人物設定かもしれない。しかし、ほんの少し前までは常に携帯デバイスを身につけているということもなかったのだった。今や、私達の現実はレンズとスクリーンによって代替されつつある。少し前まで、テレビ画面の近くに座っていると癌になると言われていたりしたものだ。しかしいまやいつでも手元に画面がある。いつまでもいつまでも、際限なく画面を見続けることが普通になっている。

コミュニケーションを支えるテクノロジーが「Glass」の形をとろうとしていることは偶然ではないだろう。現実世界はテクノロジーが作る窓(ガラス)によって切り取られて、認知されるようになってきているのだ。

デバイスを通じてしか外部との関係を保てない状況を変えるにはどうすれば良いだろうか。必要なのは「デジタル・デトックス」ではあるまい。「デジタル」は仕事や、あるいは生活の隅々にまで浸透し、もはやなくてはならないものになっているのだ。必要なのは、ネットワークやコンピューターを介しての「体験」というものが、実際のものとは違うという当たり前のことを再認識することだろう。何かを排除する「デトックス」ではなく、実際の世の中の素晴らしさを再発見することが大事なのだと思う。

世の中が変わっちまったのさと、ビールを飲みながら愚痴るのも良いかもしれない。しかしそれでは時代に流されてしまうだけだ。たまには落ち着いて座ってみて、何もクリックせず、もちろん画面のタップなどせず、もちろん「おや、このシーンをVine化したら面白いぞ」などということも考えずに過ごす。目の前に広がる現実と直接に向き合うということを「意図して」行うことが、「現実」を取り戻すための手段になるだろう。

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(翻訳:Maeda, H)