BASEは9月6日、オンライン決済サービス「PAY.JP」で、特定のベンチャーキャピタルおよび事業会社の紹介を受けたスタートアップのための優遇制度「PAY.JP Seed」を開始した。同時に、一般事業者向けに月額費用1万円で決済手数料を抑えた新プランの提供も開始する。
月額費用1万円で決済手数料2.59%〜に抑えた新プラン
まずは一般事業者向けの新プラン「PAY.JPプロプラン」を見ていこう。PAY.JPはウェブサービスやネットショップにクレジットカード決済機能を無料で簡単に導入できる開発者向けの決済サービス。反社会的勢力ではないこと、販売されているものが合法であることといった最小限の条件をチェックすることで、利用開始時の審査が最短即日で完了するのが特徴だ。
2015年9月のサービス開始から約1年、PAY.JPでは初期費用・月額費用無料、決済手数料はVISA、MasterCardが3.0%、JCB、AMEX、Diners Club、Discover Cardが3.6%の単一プランのみを提供してきた。
今回追加された新プランでは決済回数の多い事業者向けに、初期費用は無料のまま、月額費用1万円で、決済手数料をVISA、MasterCardで2.59%、JCB、AMEX、Diners Club、Discover Cardで3.3%に抑える。また、振込サイクルを月2回と早め、資金繰りもサポートする。
プロプランの追加について、BASE代表取締役の鶴岡裕太氏は「中長期的に見て、料率を上げて利益を確保することよりも、サービス利用のボリュームを増やし、ID決済の『PAY ID』やECサイトのプラットフォーム『BASE』も合わせた市場を大きくしていくことが重要と考えている。短期的なもうけよりスタートアップの支援を優先するのも同じ考えからだ」とする。
月額無料で手数料率も抑えたスタートアップ優遇制度、PAY.JP Seed
では、そのスタートアップ支援制度はどのような内容だろうか。PAY.JP Seedは、金融機関との交渉の手間や開発のための人員が割けず、また審査の壁の高さから決済サービス導入をためらうスタートアップ企業のために提供される。通常は与信や審査に時間がかかりがちな新しいビジネスモデルでも、BASEが提携するベンチャーキャピタルや事業会社の紹介があれば、同サービスを申し込める。9月6日現在の提携企業は、ANRI、East Ventures、Global Brain、さくらインターネット、Skyland Ventures、TLM、メルカリの各社となっている。
審査を簡便化することについて鶴岡氏は、「スタートアップの事業リスクは、トランザクションを見なければ分からない。最初の審査に時間をかけてその時点だけで判断して終わり、ではなく、我々は取引を常に確認し、実績を見て判断していく」とも話している。
月額費用は申込日から1年間は無料で、月額1万円のPAY.JPプロプランと同じ決済手数料でPAY.JPが利用可能。入金サイクルも月2回で、資金繰り面でもスタートアップを支援。導入時にはSlackによる技術サポートも行われる。
「日本では起業そのものよりも決済手段の導入フェイズ、特に審査期間の長さ・手数料率の高さ・技術サポートが得られないという3つの面でのハードルが高い。PAY.JP Seedで“スタートアップに一番優しいオンライン決済”を提供することで、最初に使ってもらえる決済として選択され、その後も利用し続けられる決済サービスでありたい」(鶴岡氏)。
現金、クレジットカードに限らない“新しいお金”の姿も模索
つい先日発表されたAnyPayの正式ローンチやコイニーの新サービス提供とWeChat対応など、決済関連のサービスが盛り上がりを見せる中、BASEでは、スタートアップから中規模以上のマーチャントまで広くターゲットとして視野に入れているという。
6月にPAY IDを提供開始した際にも「質量を持った『現金』をリプレイスしうるプラットフォームを拡大する」と話していた鶴岡氏。今回の取材でも改めて、現金をなくせるプラットフォームに意欲を見せた上で「クレジットカードだけではない。オフラインも対象にした“新しいお金”のあり方を模索している。期待していてほしい」と話した。