SaaSを提供する企業とそれらのサービスを利用したい人をつなぐ「ボクシル」を提供するスマートキャンプは8月21日、SaaS業界の現状をまとめた「SaaS業界レポート」を発表した。発行は今年で2回目。なかなか興味深いレポートなので、TechCrunch Japan読者のみなさんにも簡単に紹介しよう。
国内におけるSaaSの導入状況
企業によるクラウドサービスの導入は年々拡大している。本レポートによれば、2013年時点でクラウドサービスを利用している企業は全体の33%程度(n=2183)だったのに対し、2017年時点では57%にまで上昇している。僕たちTechCrunch Japanの運営はほぼクラウドサービスに依存しているから、正直「まだこんなものか」と思ってしまったけれど、それでもオンプレミスに比べてクラウドが主流になりつつあるのは事実だ。
クラウドサービスを利用することのメリットの1つとして、労働生産性の向上が挙げられると本レポートは指摘している。ここでは労働生産性を「営業利益、人件費、減価償却費の合計を従業員数で割ったもの」と定義しているが、クラウドサービスを利用していない企業に対して利用している企業の労働生産性は約30%高いことが分かったという。
クラウドサービスはオンプレミスに比べ、導入コストが低く、更新性や拡張性にも優れているうえ、本レポートによれば労働生産性も高くなる。クラウドを導入していない企業でも、こうしたメリットは理解しているようだ。本レポートによれば、「(クラウドサービスの)メリットが分からない、判断できない」と回答した企業は前年比で約6%ほど減ったという。でも、今年になって増えたのは「必要がない」という回答だった(約4%以上)。TechCrunch Japanで普段取り上げるスタートアップはSaaSを開発していることも多いが、これまで以上にサービスが持つ良さ、必要とされる理由を打ち出す必要があるということなのかもしれない。
SaaS業界における資金調達の動向
普段、TechCrunch Japanでスタートアップによる資金調達のニュースを伝えるのは、「資金の流れから業界のトレンドが見えてくる」と僕たちが考えているのが理由だ。なので、SaaS業界についても、資金調達の動向からこの業界のトレンドを見てみることにしよう。
まずは米国から。本レポートによれば、米国のVCはSaaS領域に年間で約300億ドル(約3兆2000億円)を投資している。この数字は2014年頃からVCマネー全体の拡大とともに上昇していて、2016年にはVCマネー全体の40%がSaaS領域に投資されたという。SaaS企業によるIPOも盛んだ。2015年のAtlassian、box、Shopifyや2016年のtwillio、2017年のmongoDB、oktaなどがその代表例だろう。そして今年はSaaSの代表格とも言えるDropboxの上場があった。
国内におけるSaaS企業の資金調達も活発だった。2017年には名刺管理サービスのSansanが約42億円を調達。MAサービスのフロムスクラッチも約32億円を調達している。2018年における大型調達にはSmartHRの約15億円、プレイドの約27億円などがある。また、2017年には会計分野のSaaSを展開するマネーフォワードが上場するなどしている。各分野における資金調達状況(2018年)は以下の通りだ。
この記事で紹介したのは「SaaS業界レポート」のほんの一部だ。レポート全文にはこのWebページからアクセスできるので、確認してみてほしい。また、このレポートでは各分野ごとの国内外のSaaSをまとめたカオスマップも公開されている。まさに“カオス”マップという様相で目がチカチカしてくるけれど、「自分は大のSaaS Loverだ」と主張したい人がいれば、これをデスクトップの壁紙にしてみてもいいかもしれない。