選挙と投票を透明化して不正を防ぐオープンソースの投票マシンTrustTheVote, 文書化機能も重視

【抄訳】

あなたの、いちばん最近の投票経験はいかがでしたか? たぶん快適とはほど遠かったでしょう。NPOのOpen Source Election Technology Foundation(オープンソース選挙技術財団)は、投票をもっとシンプルで透明なものにしたいと考えている。そのメインのプロジェクトTrustTheVote(投票を信頼しよう)は、一般市販のハードウェアにオープンソースの投票集計作表ソフトウェアを組み合わせた、機密性の高い投票マシンの開発を目指している。

オープンソースのコードと一般市販のハードウェアにこだわることによってTrustTheVoteは、今よりも良い、そして透明性の高い投票マシンを、これまでの投票マシンの数分の一の価格で各選挙区が入手し利用できることを目指している。

毎年、大きな選挙があるたびに、同じささやき声が聞こえてくる: オハイオ州の各郡における不正、アイオワ州における投票マシンのおかしな動作、そして毎回のようにこぼれてくる、誰それの遠い親戚が投票マシンの会社にいるから票数が電子的に水増しされた、という噂話。どれも、民主主義をむしばむような話ばかりだ。

民主主義は、スタートアップの新しい取り組み分野として、最近熱を帯びている。今朝(米国時間4/14)は、Sean Parkerが、アメリカの民主主義の抜本的な改革を目指す企業に900万ドルあまりを個人的に投資した、というニュースが舞い込んできた。TrustTheVoteはこれまで、およそ120万ドルの投資と、現物による数百万ドルあまりの寄付を獲得している。今後はスタッフ増員してプロダクトを完成させ、実機の普及活動をしていくために、さらに資金を調達したいと考えている。

TrustTheVoteの実用テストは2016年、本格展開は2018年の中間選挙を目指している。スタートアップたちのこれまでのプロダクトに比べると開発期間が相当長いのは、投票のテクノロジ化がそのほかのソフトウェア/ハードウェア開発に比べて難しいからだ。なにしろ、ありとあらゆる不正や破壊行為がありえるプロダクトだから、慎重の上にも慎重を期さなければならない。

UIのモックアップ, TrustTheVote提供.

今日はTrustTheVoteの最高責任者の一人で開発担当最高役員でもあるGregory Millerをつかまえて、アメリカの投票システムのどこがまずいのか、そして、投票とその集計に用いられるべき理想的な技術とは何か、について話を聞いてみた。

(筆者注記: 彼の答を短く要約した場合もある):

TechCrunch: 今の投票マシンは何が間違っているのか?

Miller: 今の投票マシンは使いづらいし、障害者への配慮も足りない。また管理も容易でないマシンが多いため、マシンのベンダが“オペレーターのエラー”と決めつける、さまざまな故障が頻発している。

これらのマシンの最大の問題は、ベンダにとって利益の出る商用製品としての設計が優先されているため、重要なイノベーションがすべてお留守になっていることだ。ハードウェアもソフトウェアも共に、使われている技術は10年から20年前のもの、という製品が多い。技術革新がまったくないわけではないが、利益が優先されるのできわめて限定的だ。だからそれらのマシンは、けして“無能”ではないけど、相当に脆弱であり、いろんな問題や故障や、使いづらさ、不正行為などを抱えがちだ。

TechCrunch: TrustTheVoteで投票の不正は減りますか?

Miller: TrustTheVoteは選挙の運営の透明性を高め、それによって選挙結果への信頼性を高める。透明性とは、選挙管理業務の詳細や、投票結果、そしてそのパターンが公開されることだ。そういう情報があれば、有権者自身が不正について判断できる。これまでのように、陰謀論めいた噂が飛び交うのではなくて、情報と事実に基づいた知的な判断が、選挙の不正と投票の不正の両方に対してできるようになる。

TechCrunch: 投票の不正は、この国の不治の病でしょうか?

Miller: 選挙の異状や不正、疑わしい結果などは、投票マシンがその真犯人ではない。この前の水曜日(米国時間4/9)には、テキサス州Hidalgo郡で、選挙マシンが押収され、鑑識にかけられることになった。しかし、あの場合の投票や選挙の不正は、ソーシャルエンジニアリングが原因だったと思う。でも今日では、わけの分からないブラックボックスを指差して、そいつをスケープゴートにしてしまうことが、安易にできてしまう。投票技術のフレームワークTrustTheVoteプロジェクトは、ブラックボックス的投票をガラスボックス的投票に変え、クリーグライト(klieg lights, 映画撮影用の強力なスポットライト)をマシンではなく人間的な過程に当てる。

投票の不正がきちんとドキュメントされることは、きわめてまれだ。選挙の不正についても、同じことが言える。発見されずに終わってしまう完全犯罪もあるだろう。だから、監視と観察と確認の能力と機能、すなわち常時監視体制が、完全でなければならない。大きな不正があったようだ、という感覚が選挙に往々にしてつきまとうのは、不正を実際に見つけることができるためのドキュメンテーションが欠落しているからだ。

[Millerの談話終わり]

【後略】
—今の投票マシンの老朽化~交替期が4~6年後に来るのでTrustTheVoteの早期完成と普及が待たれる、というお話。—

画像: FLICKR/Charles16e; CC BY 2.0のライセンスによる(画像はトリミングした)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))