都内のタクシーに乗ると、薄毛治療とか怪しげな健康食品情報などリーフレット広告が目に入りがち。何かとイケてない。そんなタクシー広告のデジタル化を推し進めるために、セルラーネットワークによるコンテンツ配信でプレミアムな動画広告を事業化するぞ、と2016年7月に言い出したのが日本交通とアドテク企業のフリークアウトで、TechCrunch Japanでもお伝えした。その日本交通が、タクシー車内のデジタル化に向けて、また新たな一手を繰り出した。
今度は決済だ。
Origamiと日本交通、日本交通のグループ会社であるJapanTaxiの3社は今日、日本交通のタクシーに設置されている「TokyoPrime」端末を活用して スマホ決済サービス「Origami Pay」(オリガミペイ)に対応すると発表した。東京23区と武蔵野市、三鷹市の3500台のタクシーが対象で、1月27日からスタートする。中国最大手の電子決済サービス「Alipay」(アリペイ)にも対応する。今後は全国のタクシー5万台の車両への展開を進めていくという。
デジタル色の強いTechCrunch読者の多くはタクシー料金をSuicaやEdy、iDといった電子マネーを使って支払っているかもしれない。Apple Payも使っていることだろう。だから「決済のデジタル化」といってもピンとこないかもしれないし、1つ決済方法が増えただけに思うかもしれない。でも、これは、そういうのとはちょっと違う話だ。
まずOrigamiは、スタートから3月末まで乗車料の10%を割り引くキャンペーンを実施する。これは恒久的なものではないが、仕組み上は割引を続けることができるというのが大きなポイントだ。
2012年創業のOrigamiはファッション系のモバイルECとして事業がスタートしているが、2016年5月に発表した「Origami Pay」で着々と現在進めているのが、スマホによるオフライン決済のデジタル化、もしくはネット化だ。ユーザーは既存クレジットカードとアプリを使って店頭(あるいはタクシー)で決済ができる。導入する小売側では、すでに稼働している既存POS端末はそのままに、iPadベースのアプリをプラスすることで、Origami Payを導入できる。
TechCrunch Japanの取材に対してOrigami創業者の康井義貴氏が語ったことで面白いのは、Origami Payが消費者に対して、ほとんど恒常的に割引を提示できるという話だ。例として、150円のペットボトルは120円を売れるというのだ。売り手から見るとはスマホ接点を活かすことで従来の広告宣伝費をガツンと下げられる、ということがあるという。
小売店舗やECサイトは顧客接点を増やすために、メルマガ登録や会員ID取得キャンペーン、特売メルマガキャンペーンなどに結構なコストをかけている。会員ID獲得なら、その単価は1ユーザーあたり数百円、購買キャンペーンだと数千円ということもある。これに比べるとスマホ決済のOrigami Payは使ってもらいさえすれば良いので顧客接点獲得の単価がぐっと安くなる。スーツのAOKIやロフト、阪急メンズ東京、FrancFrancなどにOrigami Payは導入されているが、こうした店舗で値引きを提供できるのは、これまで小売が費やしていた宣伝費やキャンペーン広告費用が削れるからだ、という。ユーザー属性に応じたプッシュ通知が送れると効果が高いが、そのために小売店ごとにナントカ会員になってもらうとか自社アプリを入れてもらう必要はないわけだ。
これはタクシーでも同じ。これまでSuicaのように電子マネーで支払うのは現金がデジタル化されているだけで、事業者にとっては決済データの収集にも顧客接点の獲得にも繋がっていなかった。今後のOrigamiとタクシー事業との展開について康井氏は具体的に明言していないが、もしタクシー会社が顧客接点を持てれば、いろいろな施策が考えられそうだ。例えばJapanTaxiの配車サービスアプリと組み合わせて、乗車率の低い地域や時間帯で割引きクーポンをプッシュ通知で出すといったことだ。もちろんタクシーは規制産業で料金は規制されている。だから、あくまでもOrigami Payのキャンペーンという形になるのかもしれないが、構図としてはタクシー料金でも割引ができるということだ。