位置情報データ活用プラットフォーム「Location AI Platform」を開発するクロスロケーションズは6月20日、NTTドコモ・ベンチャーズ、アイリッジ、アドインテより資金調達を実施したことを明らかにした。具体的な調達額は非公開だが、数億円規模になるという。
今回調達した資金をもとにLocation AI Platformの開発体制を強化し、機能拡充や調達先各社との協業に向けたシステム開発を進める。
位置情報3.0時代へ
近年スマホを始めとする新しいデバイスやメディア、テクノロジーの登場によって、さまざまな領域でパラダイムシフトが起こり始めている。
クロスロケーションズが取り組む「位置情報データ」もまさにそのひとつ。同社で代表取締役を務める小尾一介氏は「世の中が『位置情報3.0時代』へと向かっている最中であり、全く新しいデータの世界へ突入しようとしている」という。
位置情報データがビジネスで活用される一例としてイメージしやすいのが、1990年代の後半から普及したGPS搭載のカーナビだ。小尾氏はこのような仕組みを位置情報1.0と説明する。その後スマホの普及で2.0の時代が到来。そして今、日本版GPS「みちびき」の本格運用や各種センサー、IoTデバイスなどの進化によって3.0時代を迎えようとしている。
1.0の時代は地図関係の情報などがメインで、そこに人の要素がでてくることはなかった。それが2.0以降になると、スマホのGPSからとれる位置情報データによって「特定地域にいる人に対して広告を出す」といったことも可能に。今後ビーコンやIoTデバイスが広がることで、位置情報の利用分野はあらゆる産業や公共サービス、家庭、個人へ拡大することも見込まれている。
クロスロケーションズのLocation AI Platformは、各種位置情報やGIS(地理情報システム)関連データを統合し、統計的なモデル化を実行。その上でAIによる特性把握やデータ活用の提案までをカバーするプラットフォームだ。
たとえば出店計画を立てる際や自社に来店する顧客を分析する際に、位置情報データを活用することで「このエリアにはどのような顧客層が普段訪れているのか」「自社店舗にはどのエリアから、どんな顧客が、どれくらい来店しているのか」といったことが分析できるのだという。
さまざまな位置情報データを統合・分析し、新しい発見を
Location AI Platformでは蓄積したデータの解析や統計、モデリングだけでなく、活用方法のレコメンにもAIを利用する計画。位置情報をもとに状況や目的に応じて適切な施策を提案する、といった機能を盛り込んでいく。
小尾氏の話では昨今、地図ナビゲーションやスマホゲーム、スマホ広告など各分野ごとに位置情報が独自の形で活用されてきたようだ。そのためGPSからの緯度経度情報、ビーコンなど特定地点に設置されたセンサーからの情報、携帯基地局の加入者情報など位置情報の種類や形式が別々に。結果として蓄積されたデータを統合的に管理したり、活用したりすることは難しかった。
もちろん各分野で集めた情報はビジネスに活かせるが、「データを重ね合わせることでより新しい発見や価値が生まれてくる」というのが小尾氏の見解だ。
クロスロケーションズはシンガポール発のスタートアップNearと、Google Japanの執行役員やデジタルガレージ取締役を務めた経験を持つ小尾氏ら、現経営陣の合弁により2017年11月に設立された。
Nearはかねてから位置情報データを活用した広告配信プラットフォーム「Allspark」を、日本を含むグローバルで展開。小尾氏は日本事業のアドバイザーを務めていたそうで、日本市場にある程度フォーカスしたプロダクトを作るため、Nearの日本チームのメンバーを中心にクロスロケーションズを立ち上げた。
同社ではNearが保有するデータと、ビーコンなどから取得したデータを持つパートナー企業から集めた情報をLocation AI Platformに統合し、位置情報3.0時代のスタンダードとなるプラットフォームを目指す方針。
今回のラウンドも純投資ではなく、ユニークな位置情報データやプロダクトを持つ3社との協業も含めた資金調達になるという。