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このたび大統領によって署名された米国AI構想(American AI Initiative)は、概念的なレベルでは、正しい方向に向かっているように見える。革新的なAIソリューションを構築するために不可欠な、さまざまな分野すべてを考慮した総合的なアプローチが、絶対に必要とされている。構想の根底にあるコンセプトとしては、行政機関を横断してデータをアクセス可能にすること、AIのR&Dを支援するためにクラウドコンピューティングリソースを割り当てること、そして人材を育成することに重点を置くように命じていることのように見える。AIイノベーションへのコミットメントは、世界的に激しさを増すAI競争における、アメリカの技術的に優位な地位を維持するために不可欠である。
一方私たちは、中国、フランス、そしてイギリスがすでに、彼らのAI構想に何十億ドルもの投資を行っていることを知っている。現状の米国AI構想では、アメリカがこの先、技術的な面で遅れをとることになるのではないかという懸念を和らげることはあまりできない。実際のところ、構想の詳細が欠落している点が、不安を増大させるメッセージとなっている。
もし政府がAIに対する支持を表明したいのであれば、私たちの未来を決め、アメリカの競争力を真に向上させる可能性のある、重要な産業たちを支えるために必要な人材を、確保し引きつけ増員するための教育に、十分な資金準備と投資を約束する必要がある。
私たちは既に、AI研究や先進的コンピューターサイエンス教育への資金提供を公表する組織を目にし始めている。例えばMITによる、AIに対する10億ドルのコミットメントなどがその例だ。だが全体の状況を効果的に変えて行くためには、こうした動きに追従する、政府機関や他の民間組織がさらに必要だ。このような投資と先端技術開発への注力は、私たちの国内における競争に対する、標準的な期待値とならなければならない。
また、革新的なAIスタートアップを後押しする機会が多数あるのだから、業界や市場を横断するAIスタートアップたちのために、VCたちからの継続的かつ強力な投資が必要である。今こそ、政府と民間資本が団結して、私たちのお金を、私たちの口の中に投入すべきときなのだ。
資金提供以上に、政府は、学界であろうと産業界であろうと、グローバルなAI人材プールに真剣に注目し、米国への才能の流入を加速させなければならない。NVCA(National Venture Capital Association:米国VC協会)によれば、10億ドル以上と評価された国内民間企業の推定51%に、1人またはそれ以上の米国外生まれの創業者が関わっている。
全体的に見て、VCに支援を受けている創業者の31%が移民である。これらの多くは、新しいアメリカ製の製品やサービスを最前線で開発する有力なテクノロジー企業であり、そのうちの多くは、(もし今そうでなくとも)今後数年間のうちには何らかの形でAIを活用する予定だ。AIの世界でリーダーとしての地位を維持するために必要な人材プールは、現在共食い状態(次世代を教育すべき研究者までもが企業に引き抜かれている状況などを指している)なので、新しい人材、教育者、そしてデータサイエンティストたちを引き寄せ、維持することは、私たちの国家的課題の一部でなければならない。
米国AI構想に関しては、その成功は詳細と具体的な計画にかかっており、それらは今後3〜6ヶ月の間に決定される。(米国AI構想内の)大統領命令に概要が示された各マイルストーンは、重要な進捗だが、構想は全体として成り立ったときにのみ、真に成功するのだ。
データへのアクセス(および必要な保護)、クラウドコンピューティングへのアクセス、そしてコンピュータサイエンスへのコミットメントは、私たちの国のテクノロジー主導のビジネスおよび個人的なライフスタイルに不可欠なものとして、政府によって取り込まれなければならない。これらを、異なる分野に属する、別々のコンポーネントとみなすことはできない。
もし私たちの政府が、最先端の技術とデータ中心のアプローチを保護することができたなら、米国AI構想は、AIスタートアップの参入障壁を減らし、技術、ビジネスそしてイノベーション全てを促進できる可能性がある。しかしそれは、学術教育や人材の訓練へのコミットメント、そしてAIに対する国民の信頼を確実にすることに対する慎重で熱心な努力から始まる。非常に大仕事ではあるものの、アメリカの知性の未来と、世界的イノベーションにおける優位性の発揮を保証するために必要なものなのだ。
画像クレジット: Getty Images
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(翻訳:sako)