21カ国の権威主義的な政府は、2021年に入ってから少なくとも50回は意図的にインターネットサービスを停止しており、この問題はさらに悪化することが予想されている。ベネズエラでは選挙が行われ、キューバでは抗議活動が行われているが、政府にとってデジタルでの自由を制限することで反対意見を封じ込めることが容易になっており、その方法もますます大胆になってきている。
インターネットを遮断することは、スイッチを入れるだけで簡単にできてしまう。2011年にはホスニ・ムバラク政権下のエジプトでこの方法がとられ、その10年後にはミャンマーで毎日のようにインターネットが遮断される状態が数カ月続き、何十万人もの人々からコミュニケーションの手段を奪い、同国のGDPを2.5%減少させたと言われている。今週、スーダンでは、軍事クーデターが続く中、市民がインターネットへのアクセスに支障をきたしている。しかし、ほとんどの政府が、微妙な姿勢をとっている。
イラン政府は「緑の運動」が起こった2009年にいち早くウェブサイトをブロックした。また、チュニジアのように、2021年の説明責任の強化を求める抗議活動の中で、特定のウェブサイトのみをブロックした国もある。最近では、政府がインターネットサービスプロバイダをコントロールすることで、特定のドメインを使い物にならない速度まで「スロットル」、つまり減速させるケースが増えている。例えば、ロシアでは最近、野党のAlexei Navalny(アレクセイ・ナヴァルニー)氏に関する「好ましくない」コンテンツの削除を拒否したTwitter(ツイッター)に対してスロットルをかけた。
各国政府は、インターネットへのアクセスを制限する理由についていくつか挙げている。国家の安全保障や、デモの際の暴力への懸念などがその理由として多い。しかし、人々の生活の多くがオンラインで行われるようになった今、政府がインターネットへのアクセスを制限することは、安全、自由、幸福に対する重大な脅威となる。
インターネットが国境を越えたグローバルなネットワークとして発展してきたことは、情報を発見する新しい方法や組織化する新しい手段を提供し、人間の自由に貢献してきた。しかし、真にグローバルで開かれたインターネットに対して、驚くほど多くの政府が反対しており、私たちの生活の多くの側面がオンラインに移行するにつれて、自由がますます損なわれていく危険性があるのだ。
意図的な遮断の問題は深刻化している。国連の特別報告者であるClement Voule(クレメント・ブール)氏は最近、遮断がさらに悪化し、広範囲に及んでいると警告している。インターネットの遮断は、政府が国際社会の怒りを買うことなく反対意見を封じ込め、国民を統制するための主要な手段として、ますます利用されるようになっている。
インターネットの遮断は、通信手段の制限にとどまらず、商業や貿易の停止による経済の停滞、学校へのアクセスの妨げ、人命の危険など、さまざまな影響を及ぼす。しかし、スロットリングのような秘密裏に行われる妨害技術が一般的になるにつれ、遮断の検知はより困難になってきている。ただ、インターネットが複雑化しているため、政府が国民のアクセスを制限したときに何が起こっているのかを判断するのは難しい。そもそも目に見えないものを非難することは不可能でもある。
部分的なインターネットの遮断であっても、それを記録することは、この問題を世界的に解決するための重要な第一歩となる。いかなる政府も、国際社会に知られることなくインターネットを遮断することはできないはずだ。Jigsaw(ジグソー)は、Access Now(アクセス・ナウ)、Censored Planet(センサード・プラネット)、ネットワーク干渉公開観測所(OONI)などの研究者と協力して、情報を公開し、理解を深め、遮断の影響を軽減することを目指している。
インターネットの遮断による影響を軽減するためには、さまざまな手段がある。メッシュネットワーク、仮想プライベートネットワーク(VPN)、そして共有プロキシサーバーを使えば、インターネットが停止している間、人々がオープンウェブに接続するための手段を提供してくれる。また、インターネット全体の標準規格を導入することで、ドメインレベルでのスロットルを難しくすることも可能だ。
しかし、技術は解決策の一部に過ぎない。将来的なシャットダウンを防ぐためには、政治的な行動が必要であり、国際社会の監視のもと、そうした行動自体のコストを高める必要がある。
105カ国、240以上の団体で構成される「#KeepItOn」運動のように、インターネットの遮断を強調する草の根活動は、将来の遮断を防ぐための支持活動、技術支援、法的介入などを行っている。
民主主義政府も団結して行動すべきだ。
世界で最も技術的に進んでいる民主主義国が、T-12や日米豪印戦略対話(Quad)といったグループで技術問題に関する多国間の調整を正式に行う際には、インターネットの遮断をその議題の重要な主軸として優先させるべきだ。経済協力開発機構(OECD)を通じ、米国および志を同じくする国々は、オンラインの自由を約束する35の民主主義国で織りなすフリーダム・オンライン連合の活動を基盤とし、脅威の技術的側面の理解や、技術的および政策的対応を構築するための資金調達を強化することができるはずだ。また、将来的な遮断の際には、連合として非難を表明し、国際人権法上の義務に違反している国に制裁を加えるための「レッドライン」を明確にすることもできるはずだ。
このような課題はあるが、自由で開かれたインターネットを求める声を上げるのは、民主主義国にかかっている。そうして初めて、誰もがアクセスできるインターネットという約束が果たされるだろう。
編集部注:本稿の執筆者Scott Carpenter(スコット・カーペンター)氏はJigsawのPolicy and International Engagementのディレクター。Google以前は、Washington Institute for Near East PolicyのKeston Family Fellowや、民主主義・人権局の米国国務副次官補を務めていた。
画像クレジット:Jonathan Kantor / Getty Images
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(文:Scott Carpenter、翻訳:Akihito Mizukoshi)