日本が関係するテック業界ニュースで2016年に最も世界的に話題になったのは、何といっても「ポケモンGO」だろう。Googleから2015年10月にスピンアウトして、Googleと任天堂、そして株式会社ポケモンから出資と協力を受けてポケモンGOを生み出したのが、米Niantic(ナイアンティック)だ。
スピンアウト時にGoogleからNianticに移籍した日本人が何人かいる。米Naianticの1人目の日本人社員は川島優志氏(アジア統括本部長)で、川島氏はポケモンGOプロジェクトが動き出すために日米それぞれでキーとなる人物を引き合わせた立役者だ。そして2015年にGoogleを退社し、2人目の日本人としてNianticに入社してゲームディレクターとなったのが野村達雄氏だ。その野村氏にTechCrunch Tokyo 2016に登壇いただけることとなったのでお知らせしたい。11月17日、18日のTechCrunch Tokyo 2016の初日17日木曜日の朝一発目のキーノートセッションで、野村氏に話をうかがう。
7月のリリース以降のポケモンGOの快進撃は、TechCrunchをご覧の皆さんなら、もうご存知のとおりだ。読者の多くはポケモンGO片手に外へ飛び出したことだろう。ぼくもそう。寝起きが悪かったはずの小学生のムスメに揺り起こされて、ポケモンGO片手に朝の爽やかな散歩をするようになったりしたものだ。
App Store情報を解析するApp Annieの調査によれば、ポケモンGOはローンチ後3カ月で世界1億ダウンロードを突破。1日当たりの売上が1000万ドル(約10億円)となっていた。売上5億ドル(約500億円)突破に要した日数は、わずか2カ月。これはそれまでの記録だったCandy Crush Sagaの200日強という記録の3.3倍速い達成スピードだったという。驚異的なのはダウンロード数や売上といった数字ばかりでない。9月頭時点で世界中のトレイナー(プレイヤー)たちは総計46億キロメートルも踏破したとNianticは明かしている。地球を11.5万回も回れる計算だ。
TechCrunch読者ならポケモンGOの前身とも言えるNianticの人気ゲーム「Ingress」についてもご存知だろう。ちょっと複雑で壮大なゲームシステムと、近未来SF的世界観で知られるIgressにはコアなゲーマーにファンが多い。Ingressの熱狂的ファンたちが世界中を走り回って撮影した各スポットが今、ポケモンGOの「ポケストップ」となっている。だから振り返って考えてみると、Ingressは「まずコアなゲーマー層を獲得してクラウドソースした」という、ポケモンGOを生むためのステップだったようにも見える。ここにこんな面白いモノがあったのか! というポケストップの発見がポケモンGOの面白さの1つだが、あれはIgressのエージェントと呼ばれるプレイヤーたちが足で稼いだ写真と名称なのだ。
IngressとポケモンGOとの類似点と相違点を見ると、まだまだポケモンGOにはゲームシステムでも、コミュニティーという意味でも発展の可能性がありそうだ。Nianticのジョン・ハンケCEOも9月のブログ投稿で「これは私達が創造したいと思っているゲーム体験のごく一部で、まだまだ始まったばっかりだと思っています」と語っている。
さて、まだこれからの発展が楽しみなポケモンGOだが、ポケモンGOは日米合作という興味深い側面も持っている。Googleのクラウド・インフラやGoogleに買収されたKeyhole(後のGoogle Earth)の位置・画像処理技術、そして任天堂とポケモンが20年にわたって培ってきた文化が合わさって生まれたのがポケモンGOだったからだ。
前出のNiantic川島氏は、今年7月の北米市場リリース時のGoogle+へのコメント投稿で、 ポケモンGOのプロジェクトが2014年4月のエイプリルフールネタにまでさかのぼることを明かしている(このエイプリルフールネタを作ったのが当時Google Mapsのエンジニアだった野村氏だ)。そして川島氏は日米キーパーソンがどう出会ってプロジェクトが動き出したのかを振り返り、アメリカ版ポケモンGOの「公開ボタン」をNianticのジョン・ハンケCEOに促されて押したことなど回想している。
川島氏にしても野村氏にしても、まだ当たるかどうか分からないスピンアウト企業へ移籍するのは大きな決断だったことと思う。Ingressに熱狂的ファンがいる一方、ポケモンGOのヒットについてはリリース前には懐疑的にみる人も少なくなかったから、なおさらだ。野村氏には最初にジョークを思いついたときの話からプロジェクトが転がり始めたころの話、日米で協力してプロジェクトを推進することの難しさや意味、今後創造しようと考えているゲーム体験などについて語っていただければと考えている。特にグローバルで活躍したいと考える若い人たちには、ぜひ聞きに来てほしいセッションだ。