ウォンテッドリーがブランドを刷新——高速・10枚同時スキャンの名刺管理アプリ「Wantedly People」も公開

ウォンテッドリー代表取締役CEOの仲暁子氏

ウォンテッドリー代表取締役CEOの仲暁子氏

ビジネスSNS「Wantedly」を手がけるウォンテッドリー。主力事業のWantedlyに加え、「人と人とのつながり」をテーマに、ビジネスメッセンジャーの「Sync」などを展開してきた同社が、また新たなサービスをリリースした。

同社は11月11日、名刺管理アプリ「Wantedly People」の提供を開始した。サービスの利用は無料。また同社は、この発表に併せて各サービスのリブランディングも実施。これまでWantedlyの名称で提供してきたビジネスSNSは「Wantedly Visit」に、メッセンジャーのSyncは「Wantedly Chat」に、それぞれ名称を変更した。

10枚まで同時取り込み可能、使うほど賢くなっていく名刺管理アプリ

Wantedly Peopleは人工知能搭載のOCRを利用した名刺管理アプリ。複数枚の名刺の情報を同時に読み取り、OCRを用いて即データ化してくれる。同時に読み取れる名刺の枚数は最大で10 枚。アプリを使ってつながった(名刺を交換した)相手とは電話を掛けたり、メールを送ることができる。

ビジネスSNSのWantedly Visitに登録しているユーザーの名刺であれば、即座に情報が反映。つながった相手がメッセンジャーのWantedly Chatを使っている場合、メッセンジャーでコンタクトを取ることができるという。


「既存の名刺管理アプリは労働集約型な印象が強く、アナログな感じがありました。そんな名刺管理アプリにテクノロジーの力を加えたら、どうなんるんだろうと。誰もが使いやすい名刺管理アプリを作ろうと思い、社内のエースを集めて、開発を進めていきました」(ウォンテッドリー代表取締役CEOの仲暁子氏) 。

社内でのプロジェクト名は「ヤシマ作戦」。もともとはアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する、日本中の電力を集めて使徒(敵)を攻撃する作戦の名称だ。同社では日本中の電力ではなく、社内のエンジニアリソースをこのプロダクトに集中していたのだという。

名刺管理アプリを使うにあたって、最も気になるのは画像認識の精度。名刺の情報をきちんと読み取ってもらえなければ意味がない。Wantedly Peopleを開発する際、仲氏は画像認識にすごくこだわったそうだ。バズワードになりがちな「人工知能」だが、Wantedly Peopleでも人工知能を用いて画像の認識精度を高めている。

「画像の認識精度には特に力を入れました。オープンソースも使用していますが、基本的にはスクラッチ開発で内製しています。”使うほど賢くなっていく”と銘打っているように、撮った画像はクラウドに保存されるので、アプリを使うことで情報は蓄積されていきます。その結果、画像が多少ブレても認識してくれますし、名前もサジェストされるようになります」(仲氏)

複数枚の名刺を同時に認識する「Wantedly People」

複数枚の名刺を同時に認識する「Wantedly People」

「つながり」という資産を持ち続けることが武器になる

名刺管理アプリこれまで数多くのサービスが登場しているが、個人利用に関して言えば現在はSansanの「Eight(エイト)」の名前を聞くことも多くなってきた。なぜ、ウォンテッドリーはこのタイミングで名刺管理アプリをリリースする決断をしたのだろうか? その裏には「働き方の変化」があると仲氏は語る。

「働き方が多様化している今、資産のポータビリティが進んでいくと思っています。スキル、人脈、評判といった自分の資産を持ち歩き続けないと不利になっていく時代がやってくる。アメリカやイギリスはつながりをLinkedInなどでそのまま資産にすることができますが、日本は名刺交換をしたまま(デジタルで)管理しないまま……」

「個人的に既存の名刺管理アプリは使いづらいと思いましたし、何よりWantedlyには月間100万人ものユーザーがいて、国内最大のキャリアプロフィールが溜まっている。これを武器にレバレッジをかけていけば、既存の名刺管理アプリにも勝てる。Wantedly Peopleによって、つながりを資産に変えていくことが、これからの時代を生き抜くインフラになると思ったので、働き方が大きく変わってきているタイミングで開発しました」(仲氏)

今から約3年前、ウォンテッドリーがメールを解析し、自動で連絡帳を作成してくれる「CARD」という名刺管理アプリをリリースしたことを覚えているだろうか? 結果的にサービスが閉じることになったが、「”つながり”を獲りにいきたい」というウォンテッドリーの意思は今も昔も変わらない。

2月末までに100万ダウンロードを目指す

競合が多いレッドオーシャンの市場だが、ウォンテッドリーには勝算もある。将来的には“つながりを資産にする”ためのツールとして活用してもらたいた狙いがあるが、まずは「撮って、溜める」というエクスペリエンスを最大化していくことで、ユーザーが抱えている「面倒くさい」「使いづらい」といった悩みをテクノロジーの力で解決していきたいと考えている。また、ユーザーにとっては全ての機能が無料で使えるのも魅力的だという。

「スタートアップが名刺管理アプリだけでやっていくのは厳しいと思います。でもウォンテッドリーは他にもビジネスがあり、売上が立っているからこそ、新規事業にも投資できる。”人と人や人と企業をつなげ、そこで価値が生まれるコミュニケーションを創造する”ためのエコシステムを作ることがミッションなので、お金はとりません」(仲氏)

登録企業数が2万社を超えるなど、主力事業のWantedly Visitが好調だからこそ、課金目的ではなく、ユーザーの利便性のみを追求した名刺管理アプリが開発できたのだろう。

今後、ウォンテッドリーは2月末までにWantedly Peopleの100万ダウンロードを目指す。またCSVのインポート機能なども実装し、競合サービスからの乗り換えも促していく。

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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。