エドテックスタートアップが低所得層をターゲットにしなければいけない理由

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【編集部注】執筆者のShannon Farleyは、Fast Forwardの共同ファウンダー兼エグゼクティブディレクター。

テクノロジーの力によって、教育業界は過去10年間で大きな変化を遂げた。しかし、モバイルデバイスやネットワークが普及する中で、その恩恵に与かれていないコミュニティも存在する。

ComcastのInternet EssentialsEducationSuperHighwayといったプログラムがインターネットアクセスを広げている一方で、低所得家庭の子どもは未だにエドテック革命から締め出されてしまっている。

いわゆるデジタルデバイドは、もはやインターネットやテクノロジーへのアクセスに限った問題ではなくなっている。多くのエドテックスタートアップがフリーミアムモデルのサービスを提供しているが、結局彼らのサービスは、インターネットへのアクセスが限られた低所得家庭の子供のニーズを念頭においてはつくられていない。そこで、非営利団体の力が必要になってくる。

ほとんどのエドテックスタートアップは、VCの支援を受けた営利ベンチャーだ。しかし、彼らのつくったプロダクトの大半は、エドテックの力が必要なコミュニティにはリーチできていない。私たちには、もっと低所得層の親や子どものことを考えた教育系アプリが必要なのだ。つまりエドテックスタートアップは、総合的な教育上の問題を解決する上で、自分たちのプロダクトやビジネスモデルを再考しなければならない。

実は既に、営利モデルが最も有効ではないと気づきはじめた企業も存在する。8月にテック系非営利団体のKhan Academyが、幼児教育ゲームを開発する営利企業のDuck Duck Mooseを「買収」したのだ。これは、Duck Duck MooseがKhan Academyに現金の受け渡し無しで加わるという、珍しい形での買収だった。その結果、Omidyar Networkからの助成金もあり、Duck Duck Mooseの資産と人材はKhan Academyの傘下に入ることになった。

Duck Duck Mooseのアプリは総計1000万ダウンロードを記録している一方で、Khan Aacademyによる買収から、長期的に持続可能なビジネスを運営する上で、これだけのトラクションでは十分ではなかったということがわかる。以前までは有料だった同社のモバイルゲームは、現在Khan Academyを通して無料配信されている。

上記の例から、必ずしもエドテックがデジタルデバイドを深刻化させてるわけではないということがわかる。スタートアップ各社は、ピラミッドの最下層にいる人々のニーズに応えながら、アクセスしやすく手頃(もしくは無料)なプロダクトを実現するにはどうすればいいのか考えれば良いのだ。

デジタルデバイドは、もはやインターネットやテクノロジーへのアクセスに限った問題ではなくなっている。

さらに教育系スタートアップの中には、子どもが無料で使えるような高品質の教育ツールを開発することで、収入格差を埋めようとしている企業も存在する。そして、非営利のビジネスモデルが彼らのプロダクトを支えているのだ。CommonLitやLiteracy Lab、Hack Clubといった企業は、低所得層でも利用できるようなプロダクトを開発するというユニークなポジションをとり、アメリカにはびこる教育格差の是正を目指している。

CommonLitのCEO兼ファウンダーであるMichelle Brownは、ミシシッピ州校外のリソース不足で悩む学校で教鞭をとったときに、収入格差の現実を初めて目の当たりにした。そして、彼女は自分自身でこの問題を解決しようと、教師が無料で高品質な文学やカリキュラム、評価付けに関する資料にアクセスできるような、デジタルプラットフォームを開発した。

営利企業であれば、文学のような資料に対しては著作権使用料を支払わなければならないが、NPRDigital Public Library of AmericaUnited States Holocaust Memorial Museumといった団体は、CommonLitが非営利スタートアップであることを理由にライセンスを寄付したのだ。このような構造のおかげでCommonLitは、低所得コミュニティで教育上の危険にさらされている子どもたちへのサービス提供に注力することができ、全国的な識字率の向上に貢献している。なお、CommonLitはこれまでに3万人の教師と85万人以上の子どもたちに利用されている。

同様に、オークランドに拠点を置く非営利企業のLiteracy Labも、低所得コミュニティの幼児教育の質を向上することを使命としている。4歳以下の子どもの30%は高品質な就学前プログラムを受けられない状態にあり、Literacy Labはそこから生まれる格差を是正しようとしているのだ。この格差は、子どもの早期教育に深刻な影響を与えており、彼らの小学校での学習を妨げてしまっている。

実際のところ、生活保護を受けている家庭で育った子どもが触れる語数は、高所得層の子どもに比べて3000万ワードほど少ないことがわかっている。このギャップを埋めるために、Literacy Labは無料のデジタルコンテンツやモバイルアプリを利用し、社会経済的な壁を超えて、子どもたちが学校へ行っても困らないよう、親や教育者や養育者が彼らの言語・計算能力を育むサポートをしている。

他にも、この第二次デジタルデバイドに違った形で取り組んでいる非営利スタートアップが存在する。学生主導のコーディンググループあるHack Clubは、教師や特別なリソース無しで、どのようなコミュニティに属している高校生でも、自分でコンピューターサイエンスのプログラムを組み立てられるようなサービスを提供している。ロサンゼルスのRoosevelt高校のようにリソースの限られた学校を含め、これまでに同社のサービスを利用した世界中の138校が、独自のコンピューターサイエンスプログラムを開発してきた。学生であれば無料で利用できる同社のプロダクトは、子どもがコーディングを学ぶ上で問題となるリソース不足を解消することに貢献している。

エドテック市場はこのような例から何を学ぶことができるのだろうか?起業家は一歩下がって、本当に影響力のある教育サービスをつくることを考える必要があるだろう。教育格差を無くすためには、強力なテクノロジーと社会問題に関心を持った起業家の存在が欠かせないのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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