NASAとJPL(ジェット推進研究所)は米国時間2月13日、2004年に火星に送られた2台の探査機のうちの1つ「オポチュニティ」の活動が終了したと、特別なプレスカンファレンスにて発表した。NASAのThomas Zurbuchen氏は、「オポチュニティのミッションが完了し、マーズ・エクスプロレーション・ローバーのミッションが完了したことを宣言する」と述べている。
オポチュニティが活動を終了することになった原因は、重要部品を動作させ活動を維持する動力電源のためのソーラーパネルが、惑星規模の砂嵐によって完全に、そして想定以上に長期間覆われたことにある。最後の通信は2018年6月10日におこなわれた一方で、バッテリーが切れるまでは数ヶ月の猶予があるはずだった。同探査機は火星の過酷な気候を想定してデザインされたが、濃密な砂嵐の中でマイナス100度という環境に長時間さらされるという状況には耐えられないのである。
探査機のチームはここ数ヶ月の間、あらゆる手法でオポチュニティとの交信を試み、探査機からの反応を得ようとした。たとえメモリが消去されたり、観測機器が動作しなくなったとしても、わずかな通信さえ確立できれば、システムを再プログラムしリフレッシュして活動が続けられたはずだ。しかし通常の通信手段から「sweep and beep」という指示まで、残念ながら探査機からの応答はなかった。そして昨晩、最後の信号発信がコントロールセンターから行われたのだ。
Spent the evening at JPL as the last ever commands were sent to the Opportunity rover on #Mars.
There was silence. There were tears. There were hugs. There were memories and laughs shared.#ThankYouOppy #GoodnightOppy pic.twitter.com/JYRPtKZ8T5
— Dr. Tanya Harrison (@tanyaofmars) 2019年2月13日
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スピリットとオポチュニティはマーズ・エクスプロレーション・ローバーのミッションとして2003年の夏に別々に打ち上げられ、15年前となる2004年1月に火星の異なる地域に着陸した。
それぞれの探査機は岩石やミネラルを分析するためにパノラマカメラやマクロカメラ、スペクトロメーターを搭載し、またサンプル収集用の小型のドリルも備えていた。もともとの運用期間は90日間で、毎日40メートル移動し最終的には約1kmの距離を探査するはずだった。しかし、どちらの探査機もそれを大幅に上回ることとなる。
スピリットは最終的に、7年間で7.7kmを移動した。そしてオポチュニティは驚くべきことに、14年間でフルマラソンを超える45kmを移動したのである。
もちろん、どちらの探査機も我々の火星に対する理解を大幅に引き上げてくれた。特に、単に過去の火星に水が存在していただけでなく、生命が存在しうる液体の水が存在していた証拠を発見した功績は大きい。
これまで活躍してきた探査機やロボットがその寿命を終えるのは、いつでも寂しいものだ。探査機「カッシーニ」は称賛の中で消滅し、探査機「ケプラー」も運用を終了した。しかし究極的にいえば、これらのプラットフォームは科学観測機器であり、われわれはその素晴らしい業績をたたえつつ、避けられない最期の日を弔うべきなのだ。
「スピリットとオポチュニティは活動を終了しただろうが、我々に遺産を残した。つまり、太陽系探査の新たなパラダイムだ」JPLを率いるMichael Watkins氏は語っている。「その遺産は、火星表面で約2300日間活動しているキュリオシティに連なるだけでない。現在JPLにて組み立て中の、マーズ2020にも引き継がれるのだ」
「スピリットとオポチュニティの功績は、それだけではない。探査機による火星探査への大衆からの関心を高めたのだ。ミッションが巻き起こしたエネルギーと興奮は、確かに一般へと伝わった」
もちろん、これで火星から探査機がいなくなったわけではない。昨年にはインサイトが火星に着陸し、注意深く観測機器をセッテイングしながらシステムをテストしている。さらに、探査車「マーズ2020」も打ち上げの準備がすすめられている。火星は人気の惑星なのだ。
いつの日か、我々はこの勤勉な探査機を掘り起こし、火星のミュージアムに展示することだろう。今は、次なるミッションを楽しみにしようではないか。
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(翻訳:塚本直樹 Twitter)