オンライン講義のMOOCが大学に取って代わることができない理由

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大学はもう存在していないはずだった。過去10年間、高等教育はシリコンバレーの標的だった。世界的な金融危機以降ずっと、この業界は倒して刷新しなければならないものだったのだ。

しかし何年もの努力の甲斐もなく、2015年になった今でも、単位の取得やコースを履修する方法は何ひとつ変わっていない。

MOOC(Massive Open Online Cousesの略、大規模に開かれたオンライン講義)は、新しいオンライン教育の流れを牽引する存在だった。2011年から2012年ごろに人気を博し、高等教育は追いやられることになるという論調が広まった。だが、MOOCは失敗したようだ。認知度を表したグラフを見てほしい。

CourseraとUdacityのGoogle検索トラフィック

CourseraとUdacityのGoogle検索トラフィック

 

Google Trendsを使って、MOOCで最も知られているCourseraとUdacityを検索してみると、2つの検索トラフィックは横ばいのままで、新規のユーザー獲得が弱々しいことを示している。(VCはスタートアップの口コミでの認知度を把握するのに検索トラフィックを指標とすることが多い。友人から新しい企業について聞いたら、企業名をGoogleかApp Storeで検索する人が多いからだ。)

どのファウンダーも反論するように、トラフィックという一つの指標ではその企業の全てを計ることはできないが、この指標が最も重要であることには違いない。特に教育のような分野では、多くの人に認知されて、実績が証明されることがスタートアップの成功に直結する。

改革はどうなってしまったのだろうか?教育は間違いなく私たちの社会生活において重要な活動だ。私たちの経済は知識で成り立っていて、現代社会の繁栄を支えているといっても過言ではない。この課題について大学アカデミアの頂上にいる人から、全国のカラフルなコワーキングスペースにいる人まで、多くの抜群に賢い人たちが取り組んでいる。どこで何を間違えたのだろうか?

世界が気が付いたことは、人は人らしい行動を取り続けるということだ。スタートアップの世界ではこの事実に直面することが良くある。MOOCの教育プロダクトとそれを用いて学習する過程に、ユーザーのモチベーションを維持し、学習の意義を提供することに失敗したため、大学のように人々を学習に集中させ、教育を施すことができなかった。

モチベーションという課題

MOOCへの批判を一つ取り上げる。コースの修了率が驚くほど低いことだ。コースにもよるが、サインアップから修了までの割合が一桁であることが頻繁に起きている。履修するか離脱するかの、コースが始まった最初の週で大幅な離脱が見られるのだ。

新しい形でオンライン教育を提供するMOOCは、どちらの意義も失ってしまった。授業を無料にすることで、コースの内容をつまらないと感じたり、難しいと思ったりした時、続けるインセンティブが少ないのだ。

しかし、この数値でMOOCを判断するのはそもそも間違っている。ウェブサイトの直帰率と同じだからだ。そこは考慮に入れるべきだ。

ただ、モチベーション(そして忍耐)は、学習に欠かせない要素だ。離脱率はMOOCの教育プロダクトの品質を示す数字でもあるが、そもそも大人が継続的な学習に対して力を入れることの限度を示している重要な指標だとも言える。

ソフトウェアスタートアップには受け入れがたい内容であるのは理解している。スタートアップ業界におけるスキルを高めるために自発的に学習する人の割合は大学以外の場所では、世界のどこよりも高いだろう。しかし、大学が生涯学習を人々に教え込もうと多くの時間を費やすのには理由がある。多くの人にとって、それは自然とできるものではないからだ。家族や仕事に従事すること(つまり、人生)は、継続的な学習に時間を費やす重要性を軽く上回るのだ。

時間をかけることができないのもそうだが、開かれたオンライン教育のもう一つの課題は、学習内容を直接的な結果に結びつけられなかったことにある。つまり、仕事でのパフォーマンスの向上、昇進、新しい職を得るということだ。プログラミング以外でも投資に対して高いリターンが期待できそうな独自の分野がありそうだが、働く人のキャリアと直結するように制作されたコースは少ないようだ。

Google Trendsや他のメディアの情報から、MOOCはアメリカ以外の地域で成功していることが示唆されている。スキルを高めるために経済的なインセンティブが強くある一方で、欧米のように教育環境が充実していない地域では上手くいっているようだ。

自発的なモチベーションと環境がないと、オンライン教育プロダクトは効果を発揮しない。オンラインコースの多くは、学習効果と経済的な文脈で明確な付加価値があると認識されない場合、本や記事を読むのと同列で比較され、注目を得るのは難しくなる。

学習の意義

モチベーションの問題は、最初から分かっていたはずでもある。図書館や本は、全米のどこでも1世紀以上前から利用することができた。動画講義は本より良い学習手段かもしれないが、オンラインやメールで講義を販売していた企業も長いこと存在していた。高額なものではあったが、教育を求める人はそれを手に入れる手段があったのだ。

開かれたオンライン教育は始まったばかりであるが、これまでの試行錯誤の中で、モチベーションの他にもうひとつ必要不可欠な要素も分かった。それは、学習の意義が見出だせるかということだ。つまり、学生の日々の活動の中で学習活動を最も優先し専念すべき活動であること、あるいはその日の中の思考活動を学習に優先的に充てる理由があるかということだ。

学習の意義とモチベーションは深く関連している。毎日学習を意識的に決断して行うのではなく、必ずデフォルトで学習に時間を費やすということだからだ。さらに学習に集中することで、学習内容や理論の中につながりを見出し、知識をより深く掘り下げることができる。

大学に物理的に通うということは、自動的に学習することが優先される。大学のキャンパス、授業のスケジュール、キャンパスでの学生たちの集まりは、私たちの意識を学習へと向ける力があるのは間違いない。

また、授業料に大金を支払っているために経済面からの意義も生まれる。教育機関のカプランやフェニックス大学のようなこれまでオンライン教育を提供してきた大学に学生が通うのには経済的な意義もあるからだ。学生が教育を受けるのに支払っている料金は安いものではない。私たちはお金に敏感だ。特に何千ドルという額が一度に銀行口座から去ったり(あるいは、学生ローンとして累積したり)するのに注意深くなる。

新しい形でオンライン教育を提供するMOOCは、どちらの意義も失ってしまった。授業を無料にすることで、コースの内容をつまらないと感じたり、難しいと思ったりした時、続けるインセンティブが少ないのだ。物理的に通わないために、友人が授業への出席を促したり、パフォーマンスが悪ければそれを咎めたりする社会的な効果も生まれない。

コースを受講しているという感覚を与えるため、いくつかのプロダクトは複数の生徒が同時に講義を受ける形式を取った。Courseraが力を入れているこのモデルは、少なくとも表面上は成功しているようには見えない。オンライン教育の持つ便利さも阻害しているとも言える。

開かれた教育は必要だ。教育の内容は、できるだけ多くの人に、できるだけ低価格で届けるべきだ。知識は無料であるべきものだ。しかし開かれているからといって他のウェブサイトと同様に置かれていては、生徒は人生の中で学習を優先して取り組むべき理由が見出だせない。

これまでの結果から、まだ誰も答えを得られてはいないようだ。ウェブが誕生してから、オンラインでのコミュニケーションツールは充実し随分と使いやすくなった。しかし、数十人のメンバーで使用できて、知識を深めるためのコミュニティーを支えられる高品質のツールはまだ無い。競合となる伝統的な教育機関に対抗できる、学習の意義を認識できる仕組みをウェブに持ち込む必要がある。

教育2.0は起きるのか?

EdTech(教育テクノロジー)のようにスタートアップが活気づいている分野は他にもあるが、EdTechは急いで達成できるものではないようだ。買い物やオンラインで人と交流するのとは違い、多くの人にとって学習することは自然とできる活動ではない。学習サイトを作れば、勝手に人がやってくると考えるのは早計だ。

大学での体験に匹敵するサービスを作るために、インターネットの特徴を最大限に活かした上で、モチベーション維持の方法や学習の意義を伝える方法を適切に組み合わせたサービスを考えなければならない。

これを代表する企業も生まれてきている。例えば、Duolingoは定期的な反復学習とゲーミフィケーションの要素を合わせ、語学学習者に継続的なコースの学習を促している。このモデルは、物理的に学習している時の要素を取り入れていて、学生がコースを続けるのに必要なモチベーションレベルを維持できているようだ。数年後、本当に上手くいったかどうかの結果が分かるだろう。

教育は、私たちの社会全体の繁栄に直結する重要なものだ。シリコンバレーがこの手付かずの大きな課題に対して、リソースを投じるのは正しいことだ。しかし、人間をあるがままに理解した上で、個人がそれぞれ成し得たいことを達成するのを助けるツールやテクニックを探し出す必要があるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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