グラフェンのふるいを使った海水の淡水化、実用化へ大きく進歩?

科学者たちはグラフェンの可能性を探求し続けている。グラフェンは原子1個分の厚さの、結合した炭素原子の薄いシートで、10年以上前に研究者たちがグラファイトの塊からスコッチテープを使って数層を剥がすことによって作り出したものだ。その後技術が洗練されて原子1個分の厚さのシートが作成されるようになった。

このナノ材料は革命的な可能性を秘めたあらゆる用途に利用されて来た、より速く、より薄く、さらには透明なエレクトロニクスから、バイオテクノロジーによる移植、そして優れたバッテリ容量の実現まで。現在マンチェスター大学の研究者たちが、グラフェン酸化物膜の透過を制御するための方法発見したと報告している。これにより膜を海水の淡水化のためのふるいとして使うことが可能になる。

膜の細孔の大きさを制御することにより、チームは食塩が素材を通過することを阻止することができた。このことにより海水が飲料水になる。

これまでグラフェンは、小さいナノ粒子、有機分子、さらには大型の塩を濾過することが実証されてきたが、毎水中の食塩の場合にはその小ささが課題となっていた。グラフェン膜は水に浸すとそのサイズが膨張する、すなわち食塩を阻止するためにはより小さなふるいが必要とされることを意味する。

マンチェスターのチームは水に浸されたグラフェン積層板内の層間間隔を制御するために物理的拘束手法を使ったと語った。このことにより、彼らの表現するところの「正確で調整可能なイオンふるい」を実現することが可能となり、水和イオンの直径よりも小さなふるいのサイズを実現することができるようになった。

研究者たちは膜に対する透過率が、ふるいサイズの縮小とともに指数関数的に減少することを発見する一方で、水の移動そのものは「弱い影響を受ける」に過ぎないことを報告している。すなわち、膜を通貨する濾過された水の流れは相対的に速いままということを意味する。これは手頃な価格の淡水化技術を開発しようと考えるなら、重要な因子だ。

淡水化への応用の可能性と同時に、チームは「イオンをサイズに従ってオンデマンドで濾過できる能力」の、産業への幅広い応用も想定している。彼らの研究はネイチャー・ナノテクノロジー論文として掲載されている。

発表に対するコメントとして、研究者の1人であるRahul Nair教授は次のように語った「原子スケールへ縮小可能で、均一な細孔径を持つ可変膜の実現は、淡水化技術の効率性の改善に向けて重要な1歩を刻み、新しい可能性を開きます」。

「これは、この方式による最初の明快な実験です。私たちはまた、論文に述べられたアプローチをスケールアップし、必要な大きさのふるいをもつグラフェンベースの膜の大量生産を行うことへの、現実的な可能性も示しています」。

予算規模6100万ポンドの国立グラフェン研究センターを擁する同大学の科学者たちは、グラフェン膜をガスの分離に利用することも狙っている。たとえば発電所の排気ダクト内のガスから二酸化炭素を分離するといったことだ。これは経済的に炭素を補足し、大量に保存することを可能にする方法へのヒントになるだろう。

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(翻訳:Sako)

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TechCrunch Japan

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