コロナに対抗する投資家たち:ギリシャ編(前半)

経営コンサルタント企業Found.ationがギリシャのスタートアップエコシステムについてまとめた最近のレポートによると、エンジェル投資家による投資は低調なままだが、ギリシャのベンチャーキャピタルとベンチャーデットは増え続けているという。

不思議なことに、2020年は最高の年となった。InstaShop(インスタショップ)がDelivery Hero(デリバリー・ヒーロー)に売却され、インスタショップの評価額は3億6000万ドル(約377億9500万円)となり、ギリシャで創業されギリシャ国内で事業を展開しているスタートアップとしては最大規模のイグジットを達成したのだ。

パンデミックのおかげで、ギリシャの投資家とスタートアップは、どこからでもリモートワークが可能で、どこからでも採用活動ができるなら、ギリシャは拠点を置くのに決して悪い場所ではないということを認識することになった。ギリシャのVC市場は、ディアスポラ(海外在住者)が西ヨーロッパの大都市から戻ってくるにつれて勢いを取り戻している。また、ギリシャのスタートアップエコシステムは、資本コストの低さ、教育レベルの高い労働力、リモートワーク/リモート採用への移行といった好条件に恵まれているため、国外の投資家も惹きつけている。

Bessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)、Insight Venture Partners(インサイト・ベンチャー・パートナーズ)、およびFJ labs(FJラボ)はすべてギリシャのスタートアップを支援しており、マイクロソフトは昨年、ギリシャ企業を初めて買収した。

また、ギリシャのスタートアップと投資家は、キプロス、ルーマニア、アルバニア、ブルガリアといった近隣諸国とのコラボレーションも拡大させている。

TechCrunchの調査によると、投資家に人気があるのは、インフラストラクチャー、アグリテック、サイバーセキュリティ、不動産テック、効率向上ソフトウェア、再生可能テック、肉体労働職の回復支援を目指すプラットフォームなどのセクターだ。

ギリシャのVC市場には、史上最悪のパンデミックからの回復の兆しが現れつつあるが、回復の規模はまだ小さい。

投資家たちは、「地元のエコシステムを常に優先する」と言うが、一方で「ロケーションがあまり意味を持たなくなり、どこからでも働けるリモートワークが新しい標準となるにつれて」ギリシャ国外にも手を伸ばし始めている。

前半では、以下の投資家からのインタビュー回答を掲載する。

Panos Papadopoulos(パノス・パパドポロス)氏、Marathon Venture Capital(マラソン・ベンチャー・キャピタル)、パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

インフラストラクチャー、アグリテック、サイバーセキュリティ、効率向上ソフトウェア。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Hack The Box(世界最大のサイバーセキュリティプレイグラウンド)。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

インフラストラクチャーソフトウェアは最適化には程遠い状態で、利用料金が非常に高額です。最新のハードウェアアーキテクチャを活用して運用コストを下げ、操作しやすくするには、やるべきことが山ほどあります。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

業界を改善しようとしている業界人であるかどうかを見ます。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

データ管理/分析分野は飽和状態です。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

80%以上が地元のエコシステムへの投資です。当社は未開拓の市場に投資しているため、有利な価格設定の恩恵を享受しています。

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

海運業は当然期待しますが、この分野でベンチャーキャピタルが収益を得るのは難しいと思います。

当社のポートフォリオ企業Netdata(ネットデータ)はITモニタリングに変化をもたらしています。大規模なOSSANコミュニティがあり、これまでに、Marathon(マラソン)、Bain(ベイン)、およびBessemer(ベッセマー)の各VCから3000万ドル(約31億円)を調達しました。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

まず、人を知り、その人の文化的な背景を知ることです。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

はい、その可能性は大いにあります。生活費の高い大都市からその周辺地域(正直あまり遠方ではないと思いますが)に頭脳が流出するでしょう。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

旅行業界は間違いなく対応に苦慮します。

ソフトウェアの再構築、統合には多くのチャンスがあります。あまりに多くのソフトウェアが単に寄せ集められた状態で使われていますが、それを一本化するには費用がかかりますし、面倒です。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

特に変わったことはありません。創業者にはオンラインのサポートチャネルのみを使うようにしてほしいと思っています。ハードウェアコンポーネントを扱っている会社にはより厳しい状況ですが、それでもサポートには革新を起こす必要があります。それができれば、利益を出せるようになるでしょう。

スタートアップへのアドバイスとしては、調達できる資金はすべて調達せよ、というところでしょうか。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

リモートワークは機会を均一化する優れた仕組みになる可能性があります。少なくとも大規模ハブから離れた場所に住む人たちにより多くのチャンスを与えることができるでしょう。

Dimitris Kalavros-Gousiou(ディミトリス・カラブロス・ゴウシオウ)氏、Velocity Partners(ベロシティー・パートナーズ)、創業パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

未来の働き方、エンタープライズソフトウェア、エドテック、AI。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Intelligencia.ai(機械学習とビッグデータで新薬開発をサポートする企業)。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

エドテック、とりわけバーティカル教育と非英語圏コンテンツは大きな未開拓市場です。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

当社はプレシードステージとシードステージのスタートアップに投資しているため、独自の視点、市場に対する洞察力と理解を備えた創業者を常に探しています。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

当社はアテネを本拠としていますが、ロケーションにはこだわりません。当社のポートフォリオ企業の半分は海外、大半は英国を本拠としています。英国にはギリシャ人の居住者やディアスポラの強固なコミュニティがありますから。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、急成長する、あるいは長期的に伸びていくと思われる業界は何ですか。

ギリシャの場合は、国内市場の規模が比較的小さいため、B2Bとエンタープライズソフトウェアベンチャーにはチャンスがあると思います。最近の大型イグジットとしてRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)スタートアップのSoftomotive(ソフトモーティブ)がマイクロソフトに売却された例(2020年5月)などはまさにその証しです。私が興味を持っているのは、Intelligencia.aiとNetdataの2社です。Intelligencia.aiは、大手製薬会社による新薬の臨床開発に関する予測と開発期間の短縮を支援する事業を展開しています。Netdataは、アプリケーション、サーバー、コンテナ、デバイスをリアルタイムで監視するオープンソースシステムです。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ギリシャは最近、大きなトラクションを獲得し始めており、海外のメディアでも取り上げられるようになっています。先ほど触れたSoftmotiveのイグジットなどは地元のエコシステムにとっては良いニュースでした。TileDB(タイルディービー)やPlum(プラム)といったアテネ本拠のスタートアップによる調達ラウンドも実施されています。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

その可能性は大いにあります。ロケーションがあまり意味を持たなくなり、リモートワークが標準的になってくると、大都市以外の地域から起業する創業者が増えてくると思います。多くの人が母国に帰ってきているため、Brain-regain(海外在住ギリシャ人の母国帰還を推進する非営利団体Ellinikes Rizesのイニシアチブ)も大きな推進力になるでしょう。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

トラベルテックはパンデミックによって大きな打撃を受けています。回復までにどのくらいかかるのか、どの程度まで回復できるのかを語るのは時期尚早ですが、今後1年から1年半くらいの間は、起業チャンスはほとんどないと思います。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

収益後スタートアップへの投資の場合、キャッシュフローとそれがランウェイに及ぼす影響が最も大きな課題です。市場に出る前かつ収益前のスタートアップはあまり影響を受けていません。すべてのスタートアップにとって、次回の資金調達ラウンドが大きな懸案事項であり課題となります。必要に応じてモニタリングとコスト削減を継続するようにアドバイスしています。資金調達戦略としては、ランウェイを18~24か月は延長できるように、より多くの資金を調達するのが良いでしょう。理想的な資金調達シナリオの実行が難しくなっている場合は、市場がある程度安定するまで持ちこたえられる資金を調達できる小規模なラウンド(主に既存の投資家が緊急時の融資として行うもの)を提案しています。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

当社のポートフォリオ企業の中には、主力製品や注力する市場セグメントを一部方向転換して、興味深い成長分野を開拓した企業があります。地元の肉体労働者向けマーケットプレイススタートアップMyJobNow(マイジョブナウ)が良い例です。MyJobNowの初期のサービスは求人広告に応募する肉体労働者をターゲットにしていました。新型コロナウイルスのパンデミック発生直前に同社は2つ目のサービスを導入しました。配達とラストマイル輸送業務向けのオンデマンド人材派遣サービスです。ロックダウンによってラストマイル配達の需要が急増したため、小売り店舗やeコマースベンチャーからの需要が増え、このサービスは短期間で広く利用されるようになりました。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

ほとんどの創業者たちは、パンデミックの最初の数か月で、優れた敏捷性、共感能力を示し、ビジネスについて明快に説明してくれました。

Aristos Doxiadis(アリストス・ドクシアディス)氏、Big Pi Ventures(ビッグ・パイ・ベンチャーズ)、パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

私が最も投資したいと思うのは、例えば、病気の予防、食料の供給、小企業の生産性の向上などの、非常に基本的な問題を根本的に改善するソリューションです。これは、第4次産業革命の社会的背景であり、今後10年間に素晴らしいサクセスストーリーが生まれる分野です。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

難しい選択ですが、2bull MeDiTherapy(トゥーブル・メディセラピー)を挙げたいと思います。この会社は、大動脈瘤の診断と予後のための独自の血液検査を開発しました。大動脈瘤は極めて患者数の多い「沈黙の殺し屋」とも呼ばれる病気で、現時点では、面倒で高価な画像処理技術でしか診断できません。この血液検査がEU加盟国の基準を満たせば、欧州と米国全体でスクリーニング手法として広く採用されるようになるのではと期待しています。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

アグリテックでは、荒れ地にある小農場で生産性を向上したり、品質を確保したり、特殊なニッチ品種を開発したりするテクノロジーはまだ登場していません。この分野は、地中海地域だけでなく多くの新興経済圏で大きな可能性を秘めています。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

理想的には、複数の業界で生産の根本的なボトルネックを解消できるツールで、長年の研究に基づいており、強固な知的財産となっているものがあるかどうかに注目します。当社のポートフォリオ企業では、Navenio(ナヴェニオ)が該当します。Navenioは、大規模な屋内スペースにおける人と機器のロケーションソリューションを提供している企業です。しかも、インフラストラクチャーは不要で物理的なマッピングも必要ありません。病院、ショッピングモール、物流センター、鉄道の駅などで利用できます。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

eコマースとサービスマーケットプレイスのアプリケーションは供給過剰状態です。大半は模倣アプリケーションですが、たとえ、何か新しいコンセプトがあったとしても、ネットワーク効果と規模の経済性が生み出す参入障壁が高過ぎるため、ほとんどの新規参入組には圧倒的に不利です。

他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

当社では、社の方針により、ギリシャで大きな存在感のある企業のみに投資しています。ですので、通常、R&Dセンター製品開発チームが主な投資対象になります。特に当社の本拠地であるアテネの企業に優先的に投資しているわけではありませんが、大半の大型案件はアテネ本拠の企業に対するものです。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、急成長する、あるいは長期的に伸びていくと思われる業界は何ですか。

ギリシャには、生物医科学の分野の強力な研究チームが存在しており、海外での経験やネットワークを持つ大勢の医師もいます。ヘルステックとメドテックは大きな成長が見込めるセクターだと思います。別の有望な分野としてHRテックがあります。Workable(ワーカブル。業界トップの求職者追跡システム)、Epignosis(エピグノーシス。法人ユーザー向けの学習テクノロジー)、Bryq(ブライク。偏見に左右されない新型の候補者査定プラットフォーム)はすべてアテネ発の企業です。最初の2社はすでに評価額1億ドル(約105億円)を達成しており、Bryqはまだ創業したばかりです。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

アテネや、ギリシャの他の都市が持つ最大の利点は、高いスキルを備えた30代のギリシャ人が大勢いることです。彼らはヨーロッパ諸国で技術職または研究職に就いており、いずれ母国に帰ることを考えています。彼らにとってエキサイティングで待遇の良いポジションをオファーすれば、テック企業はこうした人材を容易に惹きつけることができます。こうした経験豊富な人材は、国内の大学を卒業した技術系および科学系の多くの優秀な学生を教育することができます。当社のポートフォリオ企業の多くはそうしています。投資情勢は、特に知的産業では、現政府の下で急速に上向いています。その要因としては、さまざまな優遇税制だけでなく、研究コミュニティの企業への開放を促す政策があると思われます。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

はい、そう思います。その現象はすでにギリシャで起こっていると思います。ギリシャは、そうした創業者の流出元でもあり、費用が高く混雑した都会を離れる人材の行き先にもなっています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

旅行業界と医療業界は痛手を受けるでしょう。当社は(偶然にも)これらのセクターに大きな投資はしていませんが、そうした業界にはとても優れたチームがいました。ですがパンデミックの影響で、他のセクターに移らざるをえないチームもあるでしょう。高度なサービスをリモートで提供するセクター(医療業界、エンターテイメント業界、教育業界、および機器の保守や修理などの業界)には大きなチャンスが発生しています。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

企業の売り上げの回復は遅れていますし、ハードウェア製品のサプライチェーンの回復も遅れています。当社はランウェイの延長を支援するためにいくらかの資本を手元に残していますが、それ以外の点ではそれほど大きな影響はないと思っています。創業者へのアドバイスとしては、すべてのリソースを投入して目標の達成を目指し、次のラウンドで資本を調達できるようにする、ということでしょうか。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

ギリシャ政府がこの大変な時期に新型コロナウイルスのワクチンの輸送システムを設計し実装したことは本当に良かったと思います。最も印象的なのは、ワクチン接種のための利用者にやさしい予約プラットフォームが用意され、それがスムーズに稼働していることです。ギリシャという国は、これまで非常に対応が遅く非効率的だったため、これは格段の進歩であり、将来の公共デジタルサービスにとっても良い前兆だと思います。

TC:地元で成功していると思われるスタートアップ業界の重要人物を挙げていただけますか。

2018年にEquifundから資金を調達した6つのVCチーム(Marathon、Venture Friends、Uni.Fund、Metavallon、Velocity、Big Pi)はすべて素晴らしい仕事をしていると思いますし、エコシステムを大きく進化させました。ギリシャ人ディアスポラの創業者たちは大きく貢献しています(TileDBのStavros Papadopoulos(スタブロス・パパドポロス)氏、IntelligenciaのVergetis(ベルゲティス)氏とSkaltsas(スカルタス)氏、SaphetorのMasouras(マゾーラス)氏など)。

Pavlos Pavlakis(パブロス・パブラキス)氏、VentureFriends(ベンチャーフレンズ)、プリンシパル

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

不動産テック、フィンテック、マーケットプレイスモデル。B2CとB2B、どちらのスタートアップにも関心があります。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Influ2(インフルトゥー。人ベースのマーケティングスタートアップ、B2B SaaS)。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

一部の投資家は、多額の借入による資金調達を必要とする資本集約モデルを避け、多くの投資家がB2B SaaSスタートアップに投資しています。当社はB2Cにも大いに関心を持っていますが、純粋なテック企業ではなく、経営能力の高いスタートアップにも興味があります。また、株式と並行して借入による多額の資金調達を必要とするモデルも問題なく受け入れています。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

スケーラブルなモデルをうまく運用し、グローバル展開への意気込みが感じられる創業者かどうかを見ます。特に重視する2つの点は、チームと市場規模です。加えて、競争、時期/市場トレンド、短期的および長期的な防御力/USPなどを検討します。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

多くの市場や分野が飽和状態にあるか、競争するには難しい状況だと思います。ただし、これは場所によって異なります。例えば、他のモデルの模倣であっても中南米では素晴らしいチャンスになったケースがいくつかあります。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

地元のエコシステムを常に優先します。また地元のスタートアップ以外にも世界中のギリシャ出身の創業者に注目しています。最近も米国本拠のギリシャの創業者に投資しました。ただし、当ファンドの規模と限られたビジネス機会に鑑みて、地元以外のエコシステムも対象とする場合があります。これまでは、50%以上が地元のエコシステム(企業または創業者)に対する投資でしたが、当社は国際的なVC(大半は欧州)であるため、地元のエコシステムでの投資もどんどん増えています。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、急成長する、あるいは長期的に伸びていくと思われる業界は何ですか。

Blueground(ブルーグラウンド)は良い例で、VentureFriendsの不動産テックポートフォリオ企業です。当社も大いに期待しています。ブルーグラウンドはギリシャの企業で、当社が最初の機関投資家になりました。同社はグローバル(米国、欧州、中東の13都市)に事業展開して、これまでに1億ドル(約105億円)以上を調達しています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

アテネおよびギリシャ全体は、間違いなく有望な市場です。大きな成功を収める企業が年々増加しており、それが次世代の起業家の刺激となっています。複数のファンドが存在するため、資本の可用性はあまり大きな問題ではなくなっています。ギリシャには質の高い比較的安価な人的資本、そして何より、快適に過ごしやすい気候があります。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

必ずしもそうはならないと思います。つまり、大都市以外の地域の創業者が増えることはないように思います。ただし、ギリシャ人の人材は、前にも触れましたが、比較的安価で質が高く、リモートワークも広く普及しているため、需要は増大しており特定の業種(開発者など)では給与も上がっています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

最も影響が大きかった業種は旅行テックです。チャンスという点では、既存業種でデジタルソリューションを提供するスタートアップであれば、通常ほとんどの業界でチャンスはあります。分かりやすい例をいくつか挙げると、エドテック、配送/物流ソリューション、eコマースなどがあります。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社の投資戦略には大きな変化はありません。少し変化したことといえば、旅行テックのビジネスチャンスを追求しなくなったことくらいでしょうか(ただし、ケースにもよります。実際、パンデミックの最中でも、当社は新しい旅行テックスタートアップに投資する寸前までいきました。その会社は素晴らしい業績を上げていました)。パンデミックの影響を受けたスタートアップに対するアドバイスとしては、運転資金の回転期間に注意しつつ、できるかぎり現状を維持し、時間の余裕がある今だからこそできること(メンテナンス、プロダクトなど)に取り組むことで嵐を乗り切るということくらいでしょうか。 

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

もちろん、大半とは言わないまでも、多くの企業で回復の兆しが見られます。旅行テック以外のすべてのスタートアップは、2020年に成長しており、パンデミックの第一波から回復しています。当社のポートフォリオには、(パンデミックの恩恵を受け)急成長を遂げた企業もあります。例えば、2020年に3億6000万ドル(約377億95000万円)でDelivery Heroへ売却されたInstaShopです。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

2020年は、健康と経済という点では最悪の年でしたが、それでも人生は続き、多くの友人が結婚し子どもを持ちました。私にも3人目の甥ができました。こんな状況でも人生には常に幸せで希望に満ちた部分があるものです。

TC:地元で成功していると思われるスタートアップ業界の重要人物を挙げていただけますか。

創業者を支援する投資家たちももちろん重要ですが、創業者がいなければ何も始まりません。Blueground、Beat、eFood、Workable、Softomotive、Skroutz、Epignosis、そしてもちろんInstaShopはいずれも素晴らしいスタートアップであり、そこにはエコシステムに刺激を与える重要な役割を果たした成功した創業者がいます。

Yorgos Mousmoulas(ヨーゴス・モウズモラス)氏、Metavallon(メタバロン)、パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

データ/AI/アナリティクス、再生可能テック、大半はB2B。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Valk(ヴォーク)です。Valkは、Cordaブロックチェーンで未上場資産を取引するための安全なプラットフォームを提供する企業です。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

素晴らしいチームかどうか、防御可能な独占技術の有無、トラクションの最初の兆候。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

マーケットプレイス、B2C、食品配達など。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

約50%です。ギリシャと何らかのつながりがある(例えば、創業者、投資家、アドバイザーがギリシャ人であるなど)スタートアップや、ギリシャがターゲット市場に含まれている欧州(および世界中)のスタートアップにも多額の投資をしています。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、急成長する、あるいは長期的に伸びていくと思われる業界は何ですか。

海運業、データとアナリティクスに関連するあらゆる業界。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ここではエコシステムが急成長しており、昨年も多数のイグジットが達成されました(当社のポートフォリオ企業Think Silicon(シンクシリコン)がApplied Materials(アプライド・マテリアルズ)に買収された件を含む)。今、第一世代のサクセスストーリーと同じようなパターンの第二世代の創業者が出現してきています。世界中のディアスポラとのつながりも強みです。運営費や人件費が他都市と同品質で安いのも魅力です。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

ギリシャ人の多くのディアスポラが、どこにいても働けると分かって再度ギリシャに戻ってきています。また、気候が良い、コストが安い、などの理由で海外のテック労働者も惹きつけるようになっています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

旅行業界や、オンプレミスのプレゼンスを必要とする業界は対応に苦慮するでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社は同じペースで投資を継続してきました。ただし、パンデミックの影響を受けた、旅行や交通輸送などのセクターに対しては今までより慎重かつ選択的にはなりました。ポートフォリオ企業も必要に応じてブリッジラウンドなどで支援してきました。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

はい。CreatorUp(クリエーターアップ)は、テック対応リモートビデオ教育事業を展開しており、この状況下でも収益が急増しています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

新型コロナウイルス感染症の影響にもかかわらず、当社のポートフォリオの中には継続的に加ラウンドを成功させている企業があります。旅行業界のように大きな打撃を受けたセクターにさえ、そのような企業があります。これは、当社のビジネスモデルの基本部分が安定している証しだと思います。

TC:地元で成功していると思われるスタートアップ業界の重要人物を挙げていただけますか。

ギリシャ国立銀行のNBGシードイニシアチブは、さまざまなイベントや集まりを開催している重要な主催者であり、アーリーステージのスタートアップが今後の展望を見きわめるのをサポートしています。このイニシアチブのイベントは主要な大都市以外でも開催されています。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビュー

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。