コンピュータービジョンでレストランのオーダーエラーを解消するAgot AI

Agot AIの共同創業者エヴァン・デサントラ氏とアレックス・リッツエンバーガー氏(画像クレジット:Agot AI)

人工知能はいろいろな業界に浸透してきたが、レストランはその中でも後発となり、その主な導入動機はパンデミックとオンラインオーダーの導入となる。

レストランのAI導入は今後も増えるだろう。2021年には米国人の60%が週に1度以上テイクアウトまたはデリバリーを注文し、31%がデリバリーサービスを利用したMarket Study Reportの予想によると、世界のレストラン管理ソフトウェアの市場は年率25%で伸び、2025年には69億5000万ドル(約8034億円)に達する

しかしながら私たちはみな、フードデリバリーが持ってきたものが注文と違うという経験をしている。そこでAgot AIは、機械学習を利用するコンピュータービジョンの技術を開発し、最初はファストフード業界を対象にして、そのようなエラーが起きないようにした。

同社は3年前にEvan DeSantola(エヴァン・デサントラ)氏とAlex Litzenberger(アレックス・リッツエンバーガー)氏が創業し、レストランテクノロジーのオペレーションの側面や、従業員の成功報酬、レストランの顧客満足度の向上などの問題解決を目指した。

画像クレジット:Agot AI

同社のプロダクトは、オンラインからのオーダーに対する正しさをリアルタイムで確認し、修正が必要なら従業員に告げる。たとえば彼らは、チーズとケチャップを加えるのを忘れていたかもしれない。

同社はその技術を発表して以来、Yum! Brandsなどの大手サービスの協力のもとに、展開を進めてきた。Yumの場合、Agotは同社とのパートナーシップにより、その20のレストランでパイロット事業を行った。パイロットの結果が良ければ、Yumの100のレストランで実装する、とAgotのCEOデサントラ氏はいう。

Yum! BrandsのチーフストラテジーオフィサーであるGavin Felder(ギャビン・フェルダー)氏は声明で次のように述べている。「同社は常に、テクノロジーを利用する革新的な方法でチームのメンバーの能力を高め、私たちのレストランにおいて彼らと顧客の両方の体験を向上させようとしてきた」。そしてパイロット事業の初期的な結果は「私たちが料理を届けているすべてのチャンネルで、顧客にオーダーに忠実で正確なメニューを届けることができるという将来的に有望な可能性を示唆している」。

Yum! Brandsは、Agotの顧客であるだけでなく投資家でもある。以前の1200万ドル(約13億9000万円)のラウンドでは、Continental Grain Co.の戦略的投資部門であるConti VenturesやKitchen Fund、そしてGrit Venturesらとともに投資に参加した。これでAgotの総調達額は1600万ドル(約18億5000万円)に達した。

Agotは新たな資金を、技術チームの拡大と、その他のファストフードブランドとのパイロット事業、およびプロダクトの機能拡張に充てたいとしている。また、機能拡張により、デリバリーだけでなく、ドライブスルーや店内での顧客体験も改善していきたい。

同社は、小規模な概念実証レベルの展開で、オペレーションの能力を示してきたため、今後はより大きな市場とオーディエンスにその技術をスケールしたいという。

Agotは成長率などを明かさないが、同社のチーフビジネスオフィサーのMike Regan(マイク・リーガン)氏によると、彼がデサントラ氏と出会ったとき、彼自身は投資家だったが、オーダーの正確さチェックが今後大きなビジネスになることをすぐに理解し、またAgotがそれに対して総合的な視野で臨んでいることを知った。「それはまさにデジタルトランスフォーメーションそのものだった」とリーガン氏は言っている。

Toastのようなレストラン管理のパイオニアや、その他のスタートアップも、2年前ほど前からこのニーズに対応するようになり、それぞれ独自のアプローチを採っているだけでなく、ベンチャー資本も獲得している。

たとえば最近の数カ月ではLunchboxDeliverectOrdaZakSunday、そしてMargin Edgeなどが新たなラウンドを発表し、レストランを新しいオーダー方式に適応させていくことに向けて大金が流れ始めたことを示唆している。

リーガン氏によると、レストラン業界の現状は「厳しい」けれども、Agotは「社歴3年のスタートアップよりもずっと先を行っている」やめ、事業の成功という点でも、また今後の2年間で大多数のファストフード企業を顧客にしていける能力でも傑出しているという。

そしてデサントラ氏は「新たな資本がAgotを次のレベルのビジネスに押し上げる」と感じている。

「初期のパイロットでは成功を証明したし、現在および将来のパートナーを相手にスケールしていけることにもエキサイトしています。新たな資金はプロダクトの機能拡張と、顧客とそのオペレーションの分析、そしてドライブスルー向けの技術開発に充てたい」とデサントラ氏はいう。

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。