タイ政府のお役人たちは昨年、チャットアプリLineにアクセスしてその会話内容をモニタしたい、と要求した。そして今週、ある政治家(下記)が、今では彼らはそれができる、と主張した。
The Nationの記事によると、情報通信技術大臣Pornchai Rujiprapaが記者会見で、“政府はタイの国民が毎日Lineを使って送っている4000万通近くのメッセージのすべてをモニタできる”、と述べた。
Lineのスポークスパーソンは記事の内容を否定し、本誌TechCrunchに対して、同社はタイの政府にユーザ情報を提供していない、と述べた。
大臣のその主張は、タイでは相当重大な情報開示だ。アジアにはメッセージングアプリのユーザがFacebookのユーザよりも多い国がいくつかあるが、タイはその一つ。Lineの公表によると、タイの登録ユーザ数は3000万を超えている…登録ユーザ数としてはFacebookよりも多い。
タイ政府が本当にLineをモニタしているのなら、それは、これまで彼らがやってきた、いくつかのソーシャルネットワーク上の不法と見なされるコンテンツをブロックする取り組みの、延長かもしれない。
Pornchai大臣のこのたびの暴露によると、刑法に厳しい不敬罪がある*タイでは、その法に違反しているメッセージを見た者は誰でも、そのメッセージの最初の発信者を突き止めることのできる当局に連絡しなければならない。〔*: タイ刑法第112条 国王、王妃、王位継承者あるいは摂政に対して中傷する、侮辱するあるいは敵意をあらわにする者は何人も三年から十五年の禁固刑に処するものとする。 —Wikipedia「不敬罪」より。〕
不敬罪による過去の逮捕者は、SMSやFacebookのメッセージ、インターネット上のフォーラム、Webサイトなどに関連していた。おそらくLineもやがてその一員になるのだろう。しかし、今では政府に対する批判勢力もあるので、当局はそれとも戦うつもりだろう。
タイの軍のトップ(今の首相)は、今年5月のクーデターにより政権を握った。新たな政権は複数の抵抗勢力に直面しており、その中には学生グループもいる。彼らは映画Hunger Gamesの真似をして、三本指の敬礼を、現政権に対する異議申立てのサインとして使っている。
軍事政権は、政権批判者が出没するWebサイトを検閲する、と脅している。Facebookすら、彼らによって一時的にブロックされた。政府当局はこの夏、GoogleやFacebookとの検閲に関する話し合いを持とうとしたが、両社ともその話には乗らなかった。
この国でユーザ数が最大のソーシャルネットワーク上の、すべてのメッセージを当局が自由にフィルタできる(らしい)という話は、プライバシーの観点から大きな困惑であるだけでなく、Line自身のセキュリティにとっても問題だ。
たとえば昨年Lineは、携帯のデータ通信で送られるメッセージにサードパーティがアクセスできる、という中間者攻撃に遭いやすいという脆弱性が見つかった。Lineはその問題をパッチし、チャットの暗号化機能を導入したが、ぼくの個人的な経験の範囲内では、これまで誰もその機能を使っていない。
政府はLineの協力の要らない独自の方法でメッセージをモニタできるのかもしれない。モニタしていることを、Lineにもユーザにも知られることなく。政府当局は、より効率的な検閲システムのために、独自のインターネットゲートウェイとその検閲への利用を計画していると思われる。
そういうゲートウェイや検閲システムに関して、政府による公式の発表はない。本当だったとしても構築に数年は要するだろうが、今強く感じられる可能性としては、サイバー空間のモニタリングやコントロールに関してタイ政府は、インターネット企業の協力や同意等は求めずに、ISPや通信事業者とのみ協働していくつもりだろう。
[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))