デザインのコード化を代行するSaaSはWebデザインの工程に革命をもたらすか?

[筆者: Dennis Mitzner]

編集者注記: Dennis Mitznerはテルアビブの住人で、スタートアップやテクノロジのトレンド、それに政治について書いているライターだ。

デザイナーがコードを1行も書かないWebデザインプラットホームが、最近はますます多く利用されている。そういうツールを提供している企業はユーザたちに、コーディングのスキルがなくても、それに高価な外部デベロッパを起用しなくても、美麗なWebサイトを作れますよ、と約束している。

そんなDIY Webサイト企業の大手Wix Squarespaceは、誰でも簡単に、ほんの数分でWebサイトのデザインを作れる、と謳っている。またWebydoWebflowなどの新興勢力は、コーディングに時間を割きたくないプロのWebデザイナーをターゲットにしている。

Webydoのユーザは、Adobe Photoshopなどを使って実際にサイトをデザインしたことのある人でないと無理だが、Wixのユーザはまったく無知無経験でも既存のテンプレートに手を加えるだけでサイトを作れる。Webydoはテルアビブのスタートアップだけど、サイトのデザインという工程からデベロッパの仕事を減らしてWebデザイナーを助ける、という目標を持って創業された。

WebydoのCEOで協同ファウンダのShmulik Grizimは次のように語る: “デザイナーは自分が作ったグラフィックデザインをデベロッパに頼んでサイトのコードにしてもらう必要があった。でも、そのやり方はそろそろしんどいな、と感じた。プロたちは90年代からずっとそのやり方だが、遅いし、高くつくし、しかも面倒だ。そこでうちは、数学者とエンジニアとデベロッパを雇って、革命的なコードジェネレータを開発した”。

これまでのやり方では、デザインの予算の大半が、コードを書くデベロッパたちに行っていた。デザイナーがデザインをデベロッパに渡すと、彼らが仕事を始める。時間もかかり、費用も膨張する。

一方WebydoやWebflow、Adobe Museなどなどは、デベロッパを不要にしてくれる。とくにWebydoやWebflowは、サイトの応答性を敏速にすることと、canvas上のいろんな要素の動的な関係を重視する。

WebydoのプロマネNir Barlevは曰く、“応答性の良い(responsive, レスポンシブな)デザインが最大の課題だ。コード不要のWebテンプレートを提供する企業は、「流す(fluid)」か「合わせる(adaptive)」かの、どっちかのやり方を選ぶ必要がある”。

流す、というアプローチでは、要素をデバイスの画面に合わせて自動的に並べていく。一方Webydoなどの、合わせる、というアプローチでは、デザイナーが個々の要素の位置を自分で決めることができる。Webflowは、流し派だ。

Barlevによると、合わせるやり方では要素を応答性を重視しつつ自動的に並べるのが難しい。“デザイナーが手作業で、要素がモバイルやタブレットやデスクトップでそれぞれうまく行くように配置する必要がある(すなわちadaptiveだ)。そういうデザインは、個々の画素レベルで正確だ(ピクセル単位で配置を決めるから)。流すアプローチではすべての要素が互いに直接関連しながらcanvas上で動く。一つ動かすためには全部動かす必要がある”。

WebydoとWebflowではインタフェイスに微妙で重要な違いはあるが、どちらもデベロッパの支配力が大きすぎた従来の傾向を逆転しようとしている。彼らが頑張ればデザイナーの力が徐々に強くなり、デベロッパに依存しないWebデザインがビジネスになり、デザイナーが抱いたビジョンを十分に表現できるようになるだろう。

でもWebydoとWebflowは、デベロッパを失業させるのか?

“いや、それはないよ。デベロッパはすごく重要だ”、とGrizimは言う。“同じことを繰り返すシジフォス的な部分をうちが取り去ったから、デベロッパはますます、ウィジェットやプラグインの開発などクリエイティブなコーディングに力を入れてほしい”。

SaaSのデザインスタートアップたちによってデザインの工程が変わり、そこにデベロッパの姿が見られなくなるかどうか? この問に答を出しうるのは、あくまでもデザイナー自身だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

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