“トラクターのナビアプリ”で農家を支える農業情報設計社が2億円を調達、自動操舵システムも開発中

トラクターの運転支援アプリを始め、農業におけるICT技術の活用や農業機械の自動化・IT化に関する研究開発に取り組む農業情報設計社。同社は11月16日、農林漁業成長産業化支援機構、ドローンファンド(1号・2号両ファンドから)、DGインキュベーション、D2 Garage、住友商事を引受先とした第三者割当増資により総額2億円を調達したことを明らかにした。

調達した資金を活用して、運転支援アプリに対応したトラクターの直進・自動操舵装置の開発を進める計画。直進運転をアシストすることで作業の効率化や負担の軽減、資材コストの低減を目指す。

農業情報設計社が現在提供している「AgriBus-NAVI(アグリバスナビ)」は“トラクター版のカーナビアプリ”のようなサービスだ。畑の中で「どの方角に向かってどのように走れば効率がいいか」を位置情報などを基にガイドする。

解決したいのは、トラクターなどの農業機械を用いた農作業における「作業の跡が見えづらい」「まっすぐ、等間隔で走るのが難しい」という課題だ。農業情報設計社CEOの濱田安之氏によると、肥料や農薬を散布する際にどこまで作業したかがわかりづらいため、結果的に重複して作業してしまうケースが多いのだという。

効率的に作業をする上では“まっすぐ等間隔で”トラクターを走らせることが重要なポイントになるが、そう簡単なことではない。

「仮に10mの作業で1m分重複してしまうと、それだけで10%のロスが生まれる。かといって間隔を空けすぎると(農薬の場合)空いたところから病気が発生したり、全滅に繋がるケースもある」(濱田氏)

濱田氏の話では、アメリカのほとんどの農家の営業利益率が10%以下という同国農務省の統計もあるそう。農家にとっては資材コストの削減が収入にダイレクトに響いてくるため、重複作業や作業漏れによるちょっとした無駄、ムラを防止したいというニーズがある。

AgriBus-NAVIではアプリ上で作業した場所を見える化することで「どこまで作業したかわからない」問題を解決し、基準線と現在位置を照らし合わせることで「まっすぐ、等間隔で走る」ことをアシスト。累計ダウンロード数は10万件を超えていて、ブラジルやスペインを始め約140ヶ国で利用されている(ちなみに国別のDL数では1位がブラジル、2位がスペイン。DL数の95%が日本国外なのだそう)。

現在はAgriBus-NAVIに対応した直進・自動操舵装置(GNSS装置と自動操舵機器)を開発中。トラクターに取り付けることで、位置と方向を高い精度で把握しながら自動操舵によって直進運転をサポートできるプロダクトを目指している。実用化されれば作業の効率化や負担の削減に繋がるだけでなく、経験の浅い農業者を支える強力なパートナーにもなりうるだろう。

開発中のGNSS装置「AgriBus-G+」、自動操舵機器の「AgriBus-AutoSteer」

すでに似たような技術自体は存在しているものの、導入費用がネックになって全ての農家が手を出せるわけではないのだそう。市販の製品だと一式を揃えるのに250〜300万円かかるところを、農業情報設計社では100万円以下に抑えて提供していくことで、より多くの農家を支援していく計画だ。

試作のプロダクトはすでに進んでいて、北海道の農家で実証試験にも着手済み。2019年の春頃の販売を予定している。

なお濱田氏はもともと農業機械の研究者(現在の国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構で研究に取り組んでいた)。当時研究していたロボットトラクターの技術や経験が、現在提供しているプロダクトのベースになっているのだという。

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TechCrunch Japan

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