消費者向けのVRがFacebookなどテクノロジー大手の手厚い投資によってやっと走り始めたように、米国を代表するビッグビジネスもこの技術に、ようやく独自の用途を見つけ始めたようだ。
米国時間3月3日、Bank of AmericaはベイエリアのVRスタートアップStrivrと協力して仮想現実を利用する行員教育の対象をさらに広げると発表した。同行はすでに、このスタートアップを利用して約400名の行員を対象にパイロット事業を展開していたが、この度の大規模展開で全行員4万5000名のさらに多くの人員に対してVRによる学習プラットフォームを適用し、各支店に数千台のVRヘッドセットを支給する。
Bank of Americaの役員であるJohn Jordan(ジョン・ジョーダン)氏には、VRの効果的な使い方に関するたくさんのアイデアがあるようだが、最初は何でもとりあえず試してみると述べている。同行はすでに、公証サービスや詐欺の検出などさまざまなVRレッスンを開発している。さらにジョーダン氏によると同行は、親族の死亡など感情の問題を抱えている顧客に行員が同情を表現しながら対応するなど、高度な接客技術に関する教材の開発に努めているという。
またジョーダン氏によれば、同行の行員教育事業「The Academy」の対象範囲の広さは、米国のその他の大企業の社員教育とかなり異なっているという。近しいものとしては、すでにVRを本格的に利用しているウォルマートの社員教育になるのではないかとのことだ。Strivrは2017年にこの巨大小売企業と契約し、今でも同社の最大の顧客となっている。VRによる教育は現在、200カ所の教育センター「Walmart Academy」とウォルマートの全店で展開されている。
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ユーザーの注意力を損なわせないという利点があるため、仮想現実は比較的長時間の教育訓練にも適している。ジョーダン氏によると、同行がVRを採用した主要な動機もそれだという。Bank of AmericaでVRにより行員教育プラットフォームの変革が迫られ、従来型の行員教育にあって気づかれなかった欠陥も明らかになったという。同時に、同行はテクノロジーが特効薬ではないことも承知しており、VRのベストプラクティスも、まだその大部分が未知であると自覚している。
「拙速を避けたい。これまでの投資だけでも相当なものだが、しかしそれでもまだ、今後もっと良いものを作っていく足がかりにすぎない」とジョーダン氏は語る。
エンタープライズVRのスタートアップはここ数年、その成績にばらつきがある。彼らが狙う有料顧客は、技術の制約を許容すると同時に、もっと幅広いビジョンを求めているからだ。Strivrはこれまで5100万ドル(約54億7000万円)を調達し、内3000万ドル(約32億1000万円)は、同社が社員教育の分野でリーダーになると決めた2020年のシリーズBだ。CEOのDerek Belch(デレク・ベルチ)氏は、同社には大きな計画がいくつかあるのでさらに資金を調達して、パートナーのためのVRコンテンツの制作を今後作るソフトウェアツールセットで簡易化していきたいと述べている。
カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:Bank of America
画像クレジット:Thomas Barwick/Getty Images
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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)