経済産業省は4月24日、平成28年度の日本の電子商取引に関する市場調査の結果を公表した。調査は平成10年度から毎年実施されており、19回目となる今回は、初めて個人間EC(CtoC-EC)に関する詳細な調査が行われた。
中でもスマホの普及にともなって急激に利用を伸ばしている「フリマアプリ」市場については、2016年1年間で3052億円と推計。フリマアプリの登場は2012年で、約4年で形成された新たな市場としては規模が非常に大きい、としている。調査報告書では、フリマアプリの利用者は引き続き増加傾向にあり、2017年以降も市場規模はさらに拡大すると予測されている。これに対してネットオークション(CtoC)市場は3458億円と推計。この数年でフリマアプリがネットオークションに追いつくまでに成長しているという結果になった。
CtoC-ECでは、インターネットの普及にともない発展してきた「ネットオークション」市場が従来から存在している。ネットオークションと比べてフリマアプリでは「レディースファッション」「コスメ、香水、美容」のジャンルで販売・購入での利用度が高い傾向があり、フリマアプリは女性を中心に利用が広まっていると推測されている。
ネットオークションは「できるだけ高い値段で売りさばきたい」という目的が特徴である一方、フリマアプリは「利用しない持ち物を手軽に処分して換金したい」という利用傾向の違いが見られ、価格の決定方法も異なる。またネットオークションはPC、スマートフォン両方から利用されるが、フリマアプリはスマホを前提としたサービスが大半を占めている。このため報告書では「ネットオークションとスマホアプリは完全な競合関係にあるとは言えない」としている。
利用者が販売・購入したい商品ジャンルは、フリマアプリの方がやや女性向け商品の利用傾向が高いとはいえ、フリマアプリとネットオークションとの間で極端に大きな差がないことから、報告書では今後のフリマアプリ市場の拡大により、ネットオークションと同列の選択肢となっていく可能性を指摘。ただしリユース品の販売・購入の経験率はそれぞれ 20.7%・30.5%と低い一方、販売・購入したいという意向はそれぞれ72.0%・58.4%と高く、リユース市場全体では伸びしろが大きいと考えられることから「2つの業界は市場を奪い合うのではなく、相乗効果でともに拡大する可能性の方が高い」と予想している。
フリマアプリを利用する理由についてのアンケート結果では、販売する立場からは「捨てるのがもったいないから」(70.0%)、「お小遣い稼ぎのため」(69.3%)の2項目が高く、使わなくなった物の有効活用と換金を目的としている人が多い。購入する側からは「安く買えるから」(78.9%)との理由が圧倒的に高く、価格的なメリットを求める人が多いことがわかる。
報告書では、家庭に眠る不用品のうち、過去1年間に不用となった品物の推定価値を7兆6254億円と算出(自動車・バイク・原付バイクは含まず)。フリマアプリなど便利なツールが提供され、取引の安全性や利便性が確保されれば、まだリユース品を販売・購入したことがないが販売・購入の意向はあるという人が、リユース市場に参入してこれらの不用品が流通し、市場規模が拡大するだろう、と予測されている。
このところ騒動となっているメルカリでの現金出品は顕著なケースだが、フリマアプリには急拡大にともなって、さまざまな問題が現れている。個人間での取引であるがゆえに「安心して使いたい」「でも面倒なのはいや」といった、場合によっては矛盾する課題もクリアしていく必要があるだろう。市場拡大はフリマアプリのプレイヤーにとっては好機ではあるけれども、今後、さらに利用者が増え、流通額が大きくなることも見据えたサービスの成熟も考えなければならない。