ブラジルのブラックシリコンバレーが南米のイノベーションの震源地に

著者紹介:

ヌネス氏はVale do Dendê(ヴァレ・ド・デンデ)およびAFAR Ventures(AFARベンチャーズ)の共同創設者である。AFAR Venturesは新興市場における多国籍ブランド、企業、投資家のための機会を見出すことを目的とした、グローバルで多様性のあるクリエイティブ&コンサルティングエージェンシーである。

コリア氏はアーリーステージのインパクト投資家で、経済開発、社会起業、インパクト投資の分野で15年以上の経験を持つ。オックスフォード大学の客員研究員としてインパクト投資や多様性、エクイティについて教え、執筆活動を行っている。

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過去5年間、ブラジルではスタートアップブームが起きている。

この国におけるスタートアップの主な拠点は、伝統的にはサンパウロとベロオリゾンテだったが、今ではPorto Digital(ポトデジタル)が拠点を置くレシフェやAcate(アカーテ)が拠点を置くフロリアノポリスなど新しい波が押し寄せてきており、独自のローカルスタートアップ・エコシステムが構築されつつある。さらに最近では、サルヴァドールで「ブラックシリコンバレー」が形成され始めている。

一般的に金融やメディア業界はサンパウロやリオデジャネイロに集中しているが、バイーア州にある人口300万人の都市サルヴァドールはブラジル文化の中心地の1つと言われている。

人口の84%がアフリカ系ブラジル人のこの街には、歴史、音楽、料理、文化などすべてに深く豊かなアフリカンルーツが息づいている。1500万人の人口を擁するバイーア州はフランスとほぼ同じ大きさだ。サンバやカポエイラ、その他様々な地元の郷土料理まで、ブラジルを代表するほとんどすべての文化遺産がこの土地にルーツを持っていると言うから、バイーア州の創造的遺産は明白なものである。

多くの人は、ブラジルがアフリカ以外で最大の黒人人口を抱えていると言う事実を知らない。米国や南北アメリカ大陸の黒人と同様に、アフリカ系ブラジル人は長い間社会経済的な公平性を求め苦闘してきた。また米国と同じく、ブラジルの黒人創業者は資本へアクセスできる機会が少ない。

米州開発銀行のMarcelo Paixão(マルセロ・パイシャオ)教授の調査によると、アフリカ系ブラジル人は白人に比べて3倍以上の確率で信用供与を拒否されている。また、アフリカ系ブラジル人の貧困率は白人ブラジル人の2倍以上であり、彼らはこの国の人口の50%以上を占めているにもかかわらず、立法の役職に就いているアフリカ系ブラジル人はほんの一握りである。言うまでもなく、上位500社の企業のトップレベルに彼らが占める割合は5%にも満たない。米国や英国などの国と比較すると、ブラジルの人口の50%以上がアフリカ系ブラジル人であることから、人種間の財源格差はさらに顕著になっている。

バイーア州はラテンアメリカのイノベーションの震源地となりうる

バイーア州の州都であるサルヴァドールは、ブラジルのブラックシリコンバレー発祥の地であり、地元エコシステムのバブであるVale do Dendêを中心に据えている。

Vale do Dendêは地元のスタートアップ、投資家、政府機関と連携して起業家精神とイノベーションを支援し、特にアフリカ系ブラジル人の創業者を支援することに重点を置いたスタートアップ促進プログラムを運営している。アクセラレーター組織であるVale do Dendêは、スタートアップや技術教育を主流の市場からこれまで十分なサービスを受けていないコミュニティーへと広げる革新的な活動を行っていることから、すでに国内外から注目を集めている。

約3年間でこの組織は、クリエイティブで社会的インパクトのあるセクターを持つ代表的な企業と共に様々な業界にまたがる90社の企業を直接支援してきた。ほぼ全ての企業が二桁成長を達成し、多くの企業がさらなる資金調達や企業の支援を受ける結果となっている。最初のポートフォリオ企業の1つであるデリバリーアプリのTrazFavela(トラズファヴェーラ)は、従来疎外されてきたコミュニティーの顧客と商品をつなぐことに焦点を当て、2019年にアクセラレーターの支援を受けている。ロックダウンがあったにもかかわらず、企業支援後の3月から5月の間に230%の成長を遂げ、最近ではGoogle(グーグル)ブラジルからの更なる支援と投資のための契約を締結した

これはアフリカ系ブラジル企業が認識されていると言う明確な証である。当初Vale do Dendêのメンタリングで支援を受けたもう1つの企業は、観光分野で黒人文化に焦点を当てた企業Diaspora Black(ディアスポラブラック)だ。同企業はFacebook(フェイスブック)ブラジルの支援を受け、2020年には770%の成長を遂げている。

低所得者層のコミュニティーに焦点を当てたヘルステック企業であるAfroSaúde(アフロサウ―デ)も同様で、ファヴェーラ(都市部のスラム街で黒人率が高い貧困街を指す言葉)で新型コロナ感染を予防するための新しいサービスを提供している。このアプリは現在プラットフォーム上に1000人以上の黒人医療従事者を擁しており、極めて人種差別化されていた健康危機問題に対処しながら雇用創出を行なっている。

ルネッサンス開花寸前のバイーア州

ブラジルの厳しい経済状況にもかかわらず、国内外の大企業や投資家がこのスタートアップブームに注目している。大手IT企業のQintess(キンテス)は、サルヴァドールが南米を代表するブラックテックのハブとなることを支援するため、主要スポンサーとして乗り込んでいる。

同社は今後5年間で約1000万レアル(約200万ドル、約2億1000万円)を黒人スタートアップへ投資する予定だと発表しており、その中にはVale do Dendêとの連携による約2000人の技術者の育成や、黒人創業者が率いる500社以上のスタートアップを加速させるプランも含まれている。またGoogleは9月にVale do Dendêの支援を受けて500万レアル(約100万ドル、約1億円)のBlack Founders Fund(ブラック・ファウンダーズ・ファンド)を立ち上げ、アフリカ系ブラジル人によるスタートアップのエコシステムを後押ししている。

スタートアップからイノベーションの新しい波が起きることは間違いなく、アフリカンディアスポラが重要な役割を果たすことになるだろう。世界最大のアフリカンディアスポラ人口を持つブラジルはこの面で主要なリーダーとなることが可能だ。Vale do Dendêはブラジルと南米を代表するより多くのスタートアップを創出し、創造的な経済エコシステムを形成するためのパートナーシップを構築しようと熱心に取り組んでいる。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:ブラジル 差別 中南米

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(翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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