ベテラン女性VCから女性ファウンダーへのアドバイス

5月にニューヨークで行われたTechCrunchのイベントDisruptには、Harvard Business Reviewのリサーチャーが観客として参加し、イベントの様子をノートにとっていた。その際に気づいた事項と、VCとファウンダーが参加したQ&Aセッションの書き起こし内容の解析結果から、彼らは興味深くも気がかりな結論を導き出した。

イベントに参加した投資家(40%が女性)は、男性のファウンダーには成功の可能性について尋ねることが多かったのに対し、女性のファウンダーには失敗の可能性について尋ねることが多かったということが彼らの調査からわかったのだ。

ベテランVCのAileen Leeにとって、この結果は驚くほどのことではなかったようだ。彼女はKleinerやPerkins、Caufield & Byersで合計13年近い経験を積んでから、2012年にCowboy VenturesというシードVCを立ち上げた。これまでに女性のファウンダー(TextioBrit & Co.Accompany)だけでなく男性のファウンダー(AugustDollar Shave ClubPhilz Coffee)にも投資してきた彼女は、投資先企業へのアドバイスや、追加資金の調達に関する議論を男性VCに囲まれながら何度も行ってきた。

先週サンフランシスコで行われた、第四回目となるY CombinatorのFemale Founders Conferenceで、LeeはHBRの研究や彼女が毎日目にしているバイアスについて語った。さらに彼女は資金調達を考えている女性のファウンダーに向けて、以下のとても具体的なアドバイスを送った。

1)良い語り手であれ。そして、自分は話がうまくないと思っていても心配するな。「もしも現時点で話すのが下手でも、良い語り手になることはできる。必要なのはフィードバックと練習のみ」

2)どのプレゼンにも欠かせない、基本的だが重要な要素がある。以下を必ず盛り込むこと。

a)自分の会社のミッションとビジョン

b)狙っている市場の規模

c)解決しようとしている問題

d)チームメンバーの情報とその人たちを選んだ理由

e)プロダクトもしくはそのワイヤーフレーム

f)トラクションやユーザーからのフィードバック

g)ビジネスモデルの概要

h)調達資金の使途

3)これまでの自分の経歴や、なぜ自分が今そのビジネスを始める上で最適な人間なのかという情報を忘れずに入れておく。

4)自信を持ちつつも、背伸びはしない。「ちょっと横柄な態度を見せたり、何かを誇張したりすると、(男性投資家は)あなたのことを大げさな人だと考え攻撃的になる」

5)遠慮し”すぎない”。使い古された言葉に鳥肌が立つかもしれないが、この点について女性は微妙なバランスを維持しなければならない。「男性は(遠慮がちでも)『あぁ、彼は内気なんだな』で済む」が、残念ながら女性の場合、後々大きな問題につながる可能性がある。

6)数字をしっかりと把握する。いら立たしいことだが、女性が力を認めてもらうためには、男性の2倍働かなければいけない。「もしも誰かが『あなたの会社のCAGR(年平均成長率)は? LTV(顧客生涯価値)は? マージンは? 来年の売上収益額は?』と聞いてきたら、すぐに答えられなければいけない。これも練習あるのみ」

7)フォローアップをしっかり行う。「誰かが(プレゼン中に)質問したらノートをとって、翌日には『以下が昨日話し合った内容で、この点について追加でご連絡します』という内容のフォローアップメールを送り、きちんと自分のビジネスを管理できているということ、そして誠実さをアピールする」

8)コネクション作りに力を入れる。特に女性のファウンダーや投資家とのコネクションは重要。

参加者のほとんどが女性だったこのイベントで、Leeはどうすれば女性のファウンダーが、日常的に発生するマイクロアグレッションを乗り越えて、テック業界で前進していけるかというテーマを中心に話を組み立てていた(最近目にすることの多い、女性ファウンダーに対する男性VCの不適切な行為については「かなりいら立っている」とも語った)。

また、女性差別に対する建設的な解決策についても話していた彼女。そのうちのひとつは、男性ばかりがジェネラルパートナーの座についているVCへ警鐘を鳴らすことになるだろう。

前の週に、他のVCでパートナーを務める女性たちと朝食をとっていたLeeは、どうすればもっと女性のジェネラルパートナーを増やすことができるかについて彼女たちと議論していた。Lee曰く、その場にいた人たちが在籍するVC(Cowboy Venturesを含む)は、特に将来が期待されているポートフォリオ企業に対して「女性や有色人種の人たちが投資判断のできるポジションに就いている現代的なVC」から資金を調達するよう勧めているというのだ。

その背景には個人的な考えも関係していると彼女は認めたものの、Cowboy Venturesが投資している企業のCEOも同じような考えを持っており、「ポートフォリオ企業のファウンダーたちも、もし選べるのならば、現代的な考えを持つVCを選ぶだろう」と付け加えた。

その考え方は次の極めてシンプルな問いに詰まっている。「なぜ、ろくでなしのためにお金を稼がなければいけないのか?」

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。