ベビーテックも徐々に資金を集め始めている

【編集部注】著者のJoanna GlasnerCrunchBaseの記者である。

親になれば家計の予算は大幅に変化する。夜の外出、流行りの服、手の込んだ料理などへ回される資金が大幅に減ることになる。そして、おむつや、便利な食品、そしてベビーカーからベビーベッド、チャイルドシートに至るまでの、無数の購入リストに、大金をつぎ込むのだ。

ということで、新しく親になった、もしくはこれから親になろうとしている世代は、マーケティング担当者の間では人気が高い。彼らは子供たちに刺激を与えながらも安全で、かつ自分たちの時間を節約してくれるような製品を特に受け入れる。

創業者たちも、その後援者たちも、小さな子供たちを見張ったり、食べさせたり、楽しませたり、そして運んだりすることを徐々にハイテク化することに対して、技術ならびにビジネス革新を適用していくことに興味を持っている。乳児と幼児向けテクノロジーは、全体のスタートアップ資金のなかでは大きな部分を占めるものではないが、それらはシード資金向けには相対的にアクティブで、ハイリターンのエグジットも果たしたものも見ることのできる分野だ。

ベビー市場における資金調達

Crunchbaseのデータ分析によれば、過去2年間で、乳児および幼児を中心としたビジネスモデルを持つスタートアップたちは、シードおよびベンチャー資金を2億6000万ドル以上調達している。彼らは、ロボット式ゆりかごや、病児や未熟児のニーズに合わせてカスタマイズされたバイタルサインと数値を追跡するスマートモニターなど、数多くの製品を開発している(米国に拠点を置く、あるいは販売を行っている、被出資会社のリストはここ)。

かなり大きなラウンドを実施しているスタートアップもある。こうして大規模に資金を調達した会社の1つに、Before Brandsがある。同社は乳児向け免疫システムトレーニングを提供するためにデザインされた食品を開発している。その製品は、普段の食事の一部にアレルゲンを含む食品を摂ることが、免疫力を高めるという原則に基づいている。Bofore Brandsは3月に3500万ドルのシリーズBラウンドを完了し、調達資金の総額は4800万ドルとなった。

もう1つの大きな資金調達企業はOwlet Baby Careで、パルスオキシメトリ(酸素の血中濃度を測定する手法)を用いることで、睡眠中に幼児の心拍数と酸素レベルを測定する「スマートソックス」を販売している。300ドルという価格は、おそらくあなたがこれから購入するソックスの中では、最も高価なものとなるだろう。しかし投資家たちは、親たちがより安心を得るためのに支払いを惜しむことはないと思っているようだ。Owletは昨年11月のシリーズBによる1500万ドルを含め、合計で2400万ドルを調達済だ。

大規模な調達を行い後期ステージのラウンドを行った企業の数は、シードステージのスタートアップに比べると大幅に少なくなる。どれが成功につながるとは確約できないが、以下に示したのは将来の成長が望める可能性が高い投資テーマだ。

スマート化

伝統的子供用のハイテクもしくは「スマート」バージョンを提供しているのはOwletだけではない。たとえば、創業5年のHatch Babyは、スマートなおむつ替えパッド、体重計、そしてナイトライトとサウンドを組み合わせた機械を製造している。また、お腹の胎児の心拍を追跡できるデバイスの予約注文も受けている。スマートなおむつ替えパッドと、おむつが汚れたことを検出するデバイスを組み合わせたい人たち向けには、韓国のスタートアップMonitが、最も初期段階の湿度の兆候で警告を送ってくるBluetooth内蔵センサーを発表した。

一方、ニューヨークに拠点を置くNanitは、目覚まし機能を提供し、睡眠の質の改善について助言してくれるスマートモニターの開発に対して、600万ドル以上を調達した。やや年長の子供たちの健康をモニターしたい親たち向けにも、いくつかのオプションが提供されている。サンフランシスコに拠点を置くGood Parentsは、4歳以上の子供のための健康ウェアラブル開発のために200万ドルを調達した。

良い食事

乳幼児の栄養もまた大きなビジネスだ。さらに言えば、必要な量が少なく、親たちが便利なパッケージで健康的な材料のために余分な支払いを惜しまないことを考えれば、潜在的に高い利益が期待できる分野だ。

これまでも、ベビーフードのスタートアップたちは、投資家たちに対してそれなりの利益を返してきた歴史を持っている。4年前にキャンベルに販売された有機ベビーフードのメーカーPlum Organicsは、好調なリターンを提供している。同時期に、また別の有機ベビーフードスタートアップのHappy Familyは、創業者たちが会社の勝利として賞賛を受けた条件で、Danonに売却された。買収価格は当時発表されなかったが、Happy Familyはその年間収益が6000万ドルを越えていることは公表した。

シード資金の支援を受けたベビーフード会社の中には、包装済み商品と配送スタートアップも含まれる。このリストに含まれるのは、キノアベースの製品を製造するNurturMe、コールドプレスされた冷蔵食やスナックを作っているOnce Upon a Farm、また別の有機食品会社Yumiなどだ。また別の新顔が、ベビーフードの配送サービスを行なうLittle Spoonだ。

ヘルスケア、モビリティ、そしてエンターテインメント

他のシードステージのスタートアップは、乳児や幼児の診察、移動、アクティビティ計画を改善する方法を検討している。ヘルスケア面では、ニューヨーク市の乳児のための家庭呼び出しサービスを提供する事業のために、Baby Doctorがシード資金を調達している。一方、西海岸では、ロサンゼルスに本社を置くHopSkipDriveが子供たちの送迎を行なう認定運転手のネットワークを運営している。子供のアクティビティ計画を行なう分野には、KidPass、The Kids Passport、 Pearachuteなどの、教室を見つけて定期購読するツールを提供するスタートアップが幾つか存在している。

しかし、これまでのところ最大規模のエグジットは、おそらく電子商取引分野からのものだろう。赤ちゃんと子供服のオンライン小売業者Zulilyは、公開後わずか数年後の2015年に24億ドルでQVCに販売された。

現在話題のIPO候補者のリストには、乳幼児に焦点を当てた企業はないようだ。しかし、消費者向けプロダクトの企業や、その他の買収者たちが、この分野への興味を失っているという兆候は見えていない。スマートソックスメーカーOwletのような一部のスタートアップは、300ドル靴下のような製品の利幅を考えれば、投資家に大きな利益を返すための大規模なエグジットは必要としないのかもしれない。

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(翻訳:Sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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