一般人を対象とした商用宇宙旅行計画の進展は我々と宇宙の関係を一変させる可能性があるが、その一番乗りの栄誉はSpaceXが今年中に手にするかもしれない。最大のライバルであるボーイングがStarlinerシステムのテスト飛行を延期したからだ。無人飛行テストの第1回目はこの5月に予定されていたが、8月に延期されたことを米国時間4月2日、ボーイングが確認した。
Starlinerのテスト飛行延期の情報が浮上したのは先月だった。この時点ではボーイングは「Starlinerが利用する打ち上げ施設の日程が立て込んでいる」ことを確認するにとどまった。実際、Starlinerの打ち上げに適する「ウィンドウ」は5月には2日しかない。Starlinerを割り込ませれば国家安全保障上重要なAEHF5軍事通信衛星の打ち上げに支障をきたすおそれがあった。
宇宙事業でのスケジュールの遅れはいやというほど繰り返されてきた。世界の宇宙事業各社が独自の宇宙基地や発射施設を保有ないし建設しようとしているのはこれが理由だ。衛星発射の回数が増えれば発射施設の能力も拡大される必要があるというのは当然だろう。しかし独自基地の建設には莫大なりソースを必要とする。多くの事業者にとって、(米国東部にあるロケットセンター)ケープ・カナベラルの発射施設を利用する以外選択肢がない。
ただし、ボーイングが本当に5月に打ち上げを実施するつもりだったら、打ち上げロケットとStarlinerカプセルは現在よりはるか前にケープ・カナベラルに到着していければならなかったとNASAの宇宙飛行部門が指摘している。テストに必要な機材がケープ・カナベラルに来ていなかったということは打ち上げ延期が決定されたのがかなり以前であることを示唆する。ボーイングとロッキード・マーティンの共同宇宙事業であるUnited Launch Allianceは、すでにテスト発射準備を中止していた。つまり昨日の延期発表は誰もが知っていたことを再確認したにすぎない。
8月の無人テスト飛行が成功すれば、11月には有人テストが可能になるだろう。しかしStarliner計画はすでに何年も遅れており、今回もまた遅れが加算されることとなった。しかもボーイングに比べればはるかに若いライバルがすでに無人宇宙飛行テストに成功していることはさらなる屈辱だ。
SpaceXは有人飛行を7月に予定しているのでボーイングは悔しいかもしれない。しかし実情は、こうした事業は慎重さの上にも慎重さを重ねる必要があり、必要なだけの時間をかけるべきだ。この点、ボーイングの決断は正しい。なるほど一番乗りを逃がせば、会社の評価にとって追い風にはならないかもしれない。しかしそれは今後明らかになるStarlinerの能力、信頼性によって十分取り返せる。
別のプレスリリースでNASAとボーイングはStarlinerには研究、メンテナンスのためのミッションが追加されることを発表した。
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