Microsoft(マイクロソフト)は米国4月12日、文字起こしソフト大手Nuance Communications(ニュアンス・コミュニケーションズ)を197億ドル(約2兆1500億円)で買収すると発表した。両社が交渉中だとBloombergが週末に報じていた。
取引を発表した投稿の中で、Microsoftはこの買収によりNuanceが近年業績を上げているあげているヘルスケア分野で存在感を高める、と述べている。実際、Microsoftはヘルスケア分野のクラウド事業を2020年発表しており、今回の買収で加速させる。この分野におけるNuanceのプロダクトにはDragon Ambient eXperience、Dragon Medical One、放射線レポート用のPowerScribe Oneなどがある。
「本日の買収の発表はMicrosoftの特定産業のクラウド戦略における最新のステップです」と同社は述べている。買収はまた、ここ数年の両社の統合と提携の結果でもある。
ウェブサイトにある情報によると、Nuanceは1万ものヘルスケアの顧客を抱えている。いくつか挙げると、AthenaHealth、Johns Hopkins、Mass General Brigham、Cleveland Clinicなどだ。そうした顧客ベースに惹かれ、MicrosoftはNuanceを取り込もうと上記の額を払った。
NuanceのCEOであるMark Benjamin(マーク・ベンジャミン)氏は社に残り、Microsoftのクラウド・AIグループ担当エグゼクティブバイスプレジデントであるScott Guthrie(スコット・ガスリー)氏の下に就く。
Nuanceは複雑な過去を持っている。2000年に上場し、2001年にLernout HauspieのDragon Dictateなど音声認識プロダクトの買収を開始した。そして2005年にScanSoftという企業と合併した。ScanSoftはVisioneerという社名で1992年にスキャニングの会社として始まった。
本日、Nuanceは1990年代初めから提供してきた消費者・事業者向けのテキスト読み上げ製品であるDragon Dictateを含め、数多くのプロダクトを展開している。音声認識、チャットボット、そしてヘルスケア分野などに特化した自然言語処理も扱っている。
同社は27カ国に従業員6000人を抱える。2020年11月に発表した2020年第4四半期の決算では、売上高は3億5290万ドル(約386億円)で、前年同期の3億8760万ドル(約424億円)から微減だった。それは同社が望む方向性ではなかったが、それでもランレートは14億ドル(約1531億円)超だ。
決算発表時に、同社は医学記録転写と電子カルテ(EHR)のGo-LiveサービスをAssured Healthcare PartnersとAeries Technology Groupに売却すると発表した。ベンジャミン氏は、売却することで主力のスピーチサービスに専念できると述べた。
「この売却で、当社の自然言語の理解と環境知性ソリューションであるConversational AIを高度化する戦略にこれまで以上に注力するという取り組みにおける重要なマイルストーンを達成します」とベンジャミン氏は声明で述べていた。
Microsoftがすでに、WindowsとAzureでのデスクトップ文字起こしサービスを含む数多くの音声認識とチャットボットのプロダクトを持っていることは特筆に値する。しかし同社はマーケットリーダーであるNuanceを買収し、ヘルスケア分野をさらに強化することに賭けた。
買収はすでに両社の取締役会に承認されていて、2021年末までの取引完了を見込んでいるとMicrosoftは話している。ただし、当局の審査とNuanceの株主の承認次第だ。
今回の買収はMicrosoftにとってこれまでで2番目に大きなもので、過去最大の取引は2016年の262億ドル(約2兆8657億円)でのLinkedIn買収だ。
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タグ:Microsoft、Nuance Communications、買収、文字起こし
画像クレジット:Ron Miller/TechCrunch
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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi)