ボットレースが熱を帯びつつあるようだ。ここ数週間内で立て続けにボットのリリースが相次ぎ、TechCrunch JapanでもWantedlyの求人検索ができるMessenger用ボット、スケジュール調整ができるSubotのSlack用ボットなどを紹介してきた。今回登場したのは、ウェブコンテンツを保有するメディア向けのボット開発運用ツール「BOT TREE for MEDIA」だ。本日、ZEALS(ジールズ)は5月中旬からベータ公開していた「BOT TREE for MEDIA」を正式ローンチした。このサービスの狙いについてZEALSの代表取締役CEOである清水正大氏に話を聞いた。
「BOT TREE for MEDIA」の特徴は、エンジニアでなくともチャットボットの運用を簡単に行えることだ。例えばLINEで記事を配信したいメディアは、LINE BOT APIを自社のサーバーに実装する。次に「BOT TREE for MEDIA」でアカウントを作成し、APIをつなぎこむと「BOT TREE for MEDIA」のダッシュボードからチャットボットのデータを管理できるようになる。
初めてボットを使うユーザーには、いくつか質問をすることができる。「BOT TREE for MEDIA」を導入しているウェブメディア「ビール女子」のボットでは、ユーザー名、性別、好きなビールメーカー、結婚しているかどうかを聞いている。各メディアの特性に合わせて質問を変えることが可能だ。
取得したユーザーデーターは「ユーザー情報管理」から確認することができる。「記事コンテンツ管理画面」では、記事タイトル、URLといった基本情報を設定し、その記事に関連するキーワードをいくつか設定する。ユーザーからボットに「こういった記事が読みたい」といったクエリがあった時、ボットはそのクエリに近い記事を判別してユーザーに提示する。また、このボットにはZEALSが開発するコミュニケーションエンジン「AI TREE」を搭載しているため、ユーザーと軽い雑談をすることもできる。メディア側が雑談機能を利用するために特別に何かする必要はない。ボットはLINE、Facebook Messanger、Slack、Skypeなどのチャットアプリ、そしてEメールでも構築可能だ。
「BOT TREE for MEDIA」では「チャットボット版のWordPress」を目指していると清水氏は話す。チャットボットに興味を持っている企業は多いが、実際にボットで何ができるか分からないという声をよく聞くと清水氏は説明する。ZEALSはウェブコンテンツを保有するメディア向けに、コンテンツを届ける新しいチャネルとしてチャットボットを活用することを提案したいと話す。「BOT TREE for MEDIA」はそのために特化したサービスだという。
ZEALSは以前よりコミュニケーションエンジンの開発を進めてきた経験を通して、機械学習を鍛えるためには相当なデータ量が必要であることを知ったと清水氏は言う。各メディアがそれぞれデータを集めて機械学習を構築したいと思っても、そのために十分な量のデータを集めるのは難しいかもしれない。「BOT TREE for MEDIA」ではユーザーがボットを利用するほど、どの属性のユーザーに対してどのコンテンツが配信され、どういった評価が起きたかというデータを蓄積することができる。あらゆるメディアから集まるデータを解析していくことで、ゆくゆくは「BOT TREE for MEDIA」のクライアントの抱える各ユーザーに自動で最適なコンテンツが配信できるように開発を進めたい考えだ。
2014年4月に創業したZEALSは、DMM.make ROBOTSのPalmiやVstoneのSO-TAなどを中心にロボットアプリ開発を手がけてきた。2015年1月には金額は非公開だが、ウィルグループから資金調達を行っている。次の資金調達に向けてすでに動き出しているという話だ。今回の「BOT TREE for MEDIA」は5月中旬からベータ版を提供していて、これまでに100社ほどが事前登録を行ったという。しばらくは無料で提供し、市場環境やクライアントの動向を見ながら将来的にはAPIコール数やエンドユーザーの数に応じた従量課金などを検討したいという。