AIチャットによるメンタルヘルスのセルフケアを目的とするアプリ「emol」(エモル。iOS版)を展開するemolは7月5日、早稲田大学大月研究室と共同でデジタルセルフケア・プログラムの開発を進め、千葉県市原市の協力でアプリによる心理介入実験を実施したと発表した。デジタルプログラムを実施しなかった群との比較において、デジタルプログラムを実施した群に抑うつ・不安への軽減がみられたという。
emolは、ユーザーが感情を記録でき、AIロボットの「ロク」がユーザーとの会話などを通してメンタル状態を分析しアドバイスしてくれるというアプリ。2018年3月からベータ版が公開され、以後改良が重ねられてきたが、2020年12月にAIによるレクチャーやデジタルセラピーの機能を実装して正式リリースとなった。Android版は2021年秋リリース予定としている。
オラクルが2020年10月に発表した報告によれば、日本を含む11カ国、1万2000人を対象に行った調査で、「仕事のストレスや不安を上司よりもロボットに話したい」と回答した人は68%、「メンタルヘルスのサポートを人よりもロボットに頼りたい」と回答した人は82%、さらに「仕事でのメンタルヘルスの改善にAIが役立った」と答えた人は75%いた。こうした背景を受けてemolは、早稲田大学人間科学部・大学院人間科学研究科大月友准教授が顧問を務める大月研究室と「アプリ内でACTを活用した心理療法の研究」を共同で行ってきた。
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは、マインドフルネスや実践的な取り組みを基本とする認知行動療法の一種。emolと大月研究室は、「アプリでACTを実践できるデジタルプログラム」共同開発の一環として、2021年3月、千葉県市原市職員から希望者を募り、2週間にわたり実証実験を行った。実験終了の心理テストの結果から、実験の時期が市の繁忙期と重なったために、抑うつや不安のスコアは全体的に高くなっていたものの、このプログラムを使った群と使わなかった群を比較すると、使った群には軽減が見られ、一定の予防効果があったことが期待できるという。
今後は、新型コロナ禍の影響もあり、非対面でのメンタルヘルスサポートを求める声に応えて、24時間対応できるAIによる個人に合わせたメンタルヘルス介入を目指す。また、自治体、企業、学校で、産後うつ予防、小中学生のメンタルヘルス不調予防などの実証実験も行う予定。
なお今回の取り組みは、千葉県市原市の公民連携のオープンイノベーション推進事業「いちミラ~いちはら未来創造プログラム~」に採択されたことから、千葉県市原市の協力が得られたという。
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