4月8日、モバイル広告効果測定プラットフォームを提供するAppsFlyerがメディア向けレクチャーを実施した。
AppsFlyerでJapan Country Managerを務める大坪直哉氏は「現在のモバイル広告は、セキュリティ重視、プライバシー重視の流れにある」と指摘する。
iOS 14のリリースに伴い、ユーザーの個人情報保護を目的としたフレームワークATT(App Tracking Transparency)をApple(アップル)が導入しようとしているのがその例だ。ATTが導入されると、ユーザーは自分のIDFA(広告識別ID)を広告目的でアプリ開発者に共有するかどうかを明示的に問われるようになる。つまり、ユーザーが自身の判断で「IDFAを共有しない」と意思表示する可能性が今より高くなるかもしれないのだ。
また、Google(グーグル)は2022年までにChromeにおけるサードパーティーのクッキーのサポートを終了すると発表している。
大坪氏は、「IDFAが使えなくなり、クッキーも使えなくなると、マーケターの打つ手がなくなるのか。そうではありません。ユーザーとのエンゲージメントと、それを実現するためのマーケターの知識が究極的に重要になる時代が到来するのです。この難関を切り抜けるには、広告主、代理店、広告媒体、ソリューションそしてMMP(モバイルアプリ計測ツール)など、エコシステムすべての構成員の理解と協力が必要です」と語る。
では、こうした「セキュリティ重視、プライバシー重視の流れ」は日本市場に置いてどんな意味があるのか。
Japan Director of Partner Developmentの渡辺エリナ氏は「世界的にデジタル広告投資額が年々増加しています。その中でも、モバイル広告が占める割合が順調に成長しており、重要性が増しています。中でも日本は、アプリのダウンロード数の増加に対し、収益の増加が大きい。2019年から2020年の間では、34%もの成長を見せています。さらに、端末ではiPhoneユーザーが65%を占めます。したがって、アップル、グーグルが示すセキュリティ重視、プライバシー重視の流れにキャッチアップしていくことは、必要不可欠です」と解説する。
Japan Senior Partner Development Managerの早川俊太郎氏は、iOS 14はユーザーとマーケター、2つの立場から理解すべきだという。
「ユーザーは、アプリ開発者にIDFAへのアクセスやアプリ間での共有を許可するかどうか、またそのタイミングを選ぶことができます。そのため、データの透明性とプライバシーが向上し、プライベートな未来が待っています。一方、マーケターにとっては、ATTにより、大量のオプトアウトが発生し、事実上、IDFAを広告主が以前のようには利用できない状態になります。また、確定的なアトリビューションであるアップルのソリューションは、限定的で複雑であり、LTV、リテンションなどの計測が困難です。
ターゲティングデータの喪失は広告の価値を下げ、広告をベースとしたアプリ経済を圧迫します。リターゲティング広告は永続的な識別子が失われることで大きな影響を受け、これまで同様の精度での施策実施は不可能です。このように、モバイル測定やターゲット広告に大きな課題や制限が生じる複雑な未来が待っています」(早川氏)
こうした状況から、AppsFlyerでは、ユーザーがATTに同意すればIDFAを活用し、そうでなければ、取得するデータポイントを最小限に抑え、ユーザーを追跡するための固有の永続的または恒久的な識別子を作成できないように設計された「確率論的モデリング」を活用する。確率論的モデリングでは、精度90%以上で広告効果を測定することができる。
大坪氏は「IDFAが取得できなくなると、メールやプッシュ通知などのIDFAを使わないコミュニケーションの工夫・活用が重要になってくるでしょう。また、Web-to-Appの活用、個々のユーザーではなくユーザー属性にフォーカスしたマーケティングが重要になってくるかもしれません」と結論した。
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