ローンとクレジットスコアの管理プラットフォーム、Credit Sesameが46億円調達

米国の家計債務は増加の一途をたどっていて、今年すでに14兆ドル(約1486兆円)近くに達した。消費者がより賢く対処するツールを提供している、とあるスタートアップが資金調達とIPOの計画を発表した。これは、そうしたサービスに対するニーズのみならず、そのスタートアップがこれまでに成功を収めてきたことを示している。

Credit Sesame(クレジット・セサミ)が4300万ドル(約46億円)を調達した。Credit Sesameは、CEOで創業者のAdrian Nazari(エイドリアン・ナザリ)氏の言葉を借りれば、消費者がクレジットスコアをチェックし、クレジットカードと他の負債のバランスを取り直して、クレジットスコアすなわち「家計の健全性」全般を改善する方策を検討できるツールだ。同社の収益性はすでに高く、また過去5年間で売上高が毎年90%で成長しているため、今回のラウンドは公開前の最終ラウンドとなる可能性が高い、とナザリ氏は言う。

Credit Sesameはバリュエーションを公表していない。本ラウンドでバリュエーションが上がる可能性があるからだ。ナザリ氏は、本ラウンドが数カ月後にクローズすると、10億ドル以上のバリュエーションが視野に入ってくるとコメントした。 同社はこれまでに合計1億1000万ドル調達している。

本ラウンドはエクイティとデットの組み合わせによる調達で、ストラテジックインベスターとファイナンシャルインベスターの両方が応じる。成長期のスタートアップに投資するATWパートナーズが主導し、前回以前のラウンドに参加した投資家も参加する。Credit Sesameの過去の出資者には、Menlo Ventures、Inventus Capital、Globespan Capital、IA Capital Groups、Symantec、Capital One Ventures、Stanford Universityが名を連ねる。本ラウンドの調達金額が増えるなら、新しい投資家が参加する可能性もある。

同社がエクイティとデットの両方で調達する理由は説明に値する。ナザリ氏は、Credit Sesameは現在のみならずここ最近「一定の期間」にわたって利益を計上できているため、資金調達を今するなら可能な限り希薄化を避けたいと説明する。調達する資金は、AIアルゴリズムの開発とビジネスの拡大に使う予定で買収に使う可能性は低い。フィンテックの分野でCredit Sesameのプロダクトに近いものに取り組んでいる企業は多数あるが、M&Aに取り組むのはIPOの後になりそうで、IPOによって調達する資金を原資としてM&Aを行うことになるだろう、とのことだ。

お金をよりよく管理するツールやプロダクトを開発する多くの企業に加えて、Credit Sesameの直接の競合他社として、Credit Karma、NerdWallet、Experian、ClearScore、Equifaxなどが挙げられる。Nazari氏は、Credit Sesameが競合他社と同様の基本的機能を用意する可能性もあるが、Credit Sesameを他社と差別化するのは、そのアプローチとクレジットスコアの管理方法であると言う。

同社は(パーソナル・ファイナンシャル・マネジメントに対し)「パーソナル・クレジット・マネジメント」という用語を作り出し、RoboCreditと呼ばれるアルゴリズムを開発した。これは、TransUnion(EquifaxおよびExperianと同様、スコアを計算する大手機関の1つ)のベーシックスコアに基づいているが、スコア改善のために実行可能なアクションをユーザーに示唆する指標も計算・表示する。Credit Sesameでは、初期スコアのほか、クレジットカードその他の負債のバランスを取ってスコアを改善する選択肢についても無料で閲覧できる。有料になるのは、Credit Sesameを通じて行う住宅ローンの借り換え、新しいクレジットカードの取得、既存の残高の譲渡やその他のプレミアムサービス(高度な個人情報の盗難防止など)だ。

信用格付け業界では、過去数年間で大きな後退があった。最初はEquifaxにおける大規模なデータ流出、次は消費者金融保護局がEquifaxとTransUnionの両方に課した罰金だった。罰金の原因は、消費者に提供するデータの種類を不正確に表示していたこと、それに関して透明性を十分に確保していなかったことだ。しかし、会社には良い影響を与えたとナザリ氏は述べる。

「Equifaxの影響は全体としてはプラスだった」と彼は話す。「こういった事件は消費者に、自身の信用情報を把握しておくだけでなく自分でコントロールしなければならない、ということを改めて認識させる。データ流出による個人情報の盗難はいつでも発生する可能性がある」。

実際、オンラインセキュリティは私たちの多くにとって未知の変数になった。可能な限り準備を試みることはできるが、どこで新しいデータ侵害が起こるのか、何かを盗もうと狙っている誰かにいつ漏洩情報が利用されてしまうのか、といったことはまったく予測できない。こうした中でCredit Sesamiは少なくとも、オンライン上の個人金融情報の役割や、他人がそれを信用評価に利用する方法について、透明性を高めている。

「Credit Sesamiは、消費者が信用情報を管理する方法に革命をもたらしている。かつて謎に包まれブラックボックスになっていたものが、今やCredit SesamiのPCM(Personal Credit Management)プラットフォームによって、エッセンスが抽出され理解しやすく実行可能な形で提供されるため、消費者はクレジットや家計の健全性を目標に向かって容易に改善できる」とATW Partnersの共同創業者でマネージングパートナーでもあるKerry Propper(ケリー・プロパー)氏はコメントしている。「我々は、この分野をリードするCredit Sesamiのチームとともに新しい個人信用情報管理の時代への門戸を開くことにわくわくしている」。

画像クレジット:Epoxydude

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(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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