大掛かりなPCやVR機器がなくても、スマホ端末とVRビューワーがあれば手軽に本格的なVRを楽しめるGear VRやGoogle Daydreamなどの端末が続々登場している。しかし、いくら手軽になってきているとはいえ、ユーザーが楽しめるコンテンツが増えないことにはVRは普及しないだろう(Google Daydreamはまだ日本未発売だ)。その課題を解決するため、本日ワンダーリーグでは、アプリ開発者やゲーム会社向けのモバイルVRコンテンツの制作や展開のための支援事業を開始すると発表した。
具体的には、ワンダーリーグはモバイルVR用モーションコントローラー「Vroom」とSDKを提供し、開発者がどのVRプラットフォームでもゲームを開発しやすい環境を整えるという。また、これまでゲーム会社がゲームコンソール向けに制作した過去のコンテンツなどをモバイルVR用にリメイクする受託開発なども行っていく計画だ。
ワンダーリーグのモーションコントローラー「Vroom」は、iPhoneやAndroid端末に対応するもので、2016年10月にKickstarterキャンペーンを実施している。このキャンペーン自体は未達に終わったものの、ワンダーリーグでは開発を進め、今回Vroomのハードウェアと開発キットを提供するに至った。
これまでモバイルVRには外部からコンテンツを操作する方法はあまりなく、360度写真や動画を見るといった用途で使うことが多かった。しかし、モバイルVR用のモーションコントローラーがあれば、例えばFPSゲームといった、よりインタラクティブなVRコンテンツをスマホVRでも楽しむことができるようになると北村氏は説明する。
実際に私もコントローラーと簡単なコントローラーの精度をテストするゲームを試したところ、本体は軽くて持ちやすく、コントローラーの向ける方向に画面のポインターも思い通り動いて、快適に使えた。ただ、任天堂switchのJoy-Conコントローラーのようにスティックで自在に方向を変えたり、振動したりする機能はないのでその点は少し物足りなく感じた。
ただコントローラーがあっても、それを利用できるVRコンテンツがなければ意味がない。そこでワンダーリーグは、開発者向けにモーションコントローラーVroomと連動するアプリ開発のために、2種類のSDKを用意している。
1つはVroomコントローラーとスマホアプリをBluetoothでつなぎ、スマホVRコンテンツを操作できるようにする「VroomコントローラーSDK」だ。このSDKでは、モーションコントローラーで遊べるiPhone用のモバイルVRアプリを開発することができる。コントローラーは3000円程度で提供する考えだ。ゲーム会社やおもちゃメーカーといったパートナー企業と協力し、VRコンテンツの開発と普及を目指す考えだ。
もう一つは「Vroom統合SDK」で、これはゲームエンジンUnityを開発することによりOSやデバイス、SDKの違いを気にせずゲームアプリを開発することができるという。これが重要なのは、近年Google DaydreamやGear VR、Mi VR(Xiaomi)、HuaweiVRなどモバイルVRプラットフォームがいくつも立ち上がってきているためと北村氏は説明する。通常の場合、各プラットフォームに対応したアプリを制作するためには、スマホメーカーが用意している独自のSDKを使う必要がある。けれど、このVroom統合SDKであれば、どのプラットフォームにも対応するゲームが開発できる。メーカーはそれぞれ独立したアプリストアを持ちたがるが、開発者はどのストアでもアプリを展開し、より多くのユーザーにアプリを届けられるのが特徴と説明する。
「ここ半年で5つほどモバイルVRプラットフォームが立ち上がってきていて、モバイルVRに追い風が吹いています」と北村氏は話す。ワンダーリーグではその追い風に乗り、自社SDKをアプリ開発者やゲーム会社に訴求したい考えだ。
また、日本にはゲーム会社が過去に制作したゲームコンソールやスマホ向けの3Dゲームが多くある。ワンダーリーグは、そうしたゲームライセンスを持つ会社向けにゲームをリメイクしたり、移植したりする受託開発、ストアへの申請代行、カスタマーサポート面での支援事業も展開していく予定だ。Vroomの開発キットは売り切りプランでは38万円、もしくはレベニューシェアによる共同事業方式で開発者に提供するという。
ワンダーリーグは2014年6月に設立し、これまでにアドウェイズ、サイバーエージェント・ベンチャーズ、B Dash Ventures、日本アジア投資、D2C R、ベルロックメディアから出資を受けている。