地方では利用できる交通機関が少なく、買い物や病院に行くために都市に出るだけで数時間かかってしまうことも珍しくないだろう。北海道稚内から70km離れた天塩町もそんな課題を抱えている地域だ。本日、長距離ライドシェアサービスnotteco(ノッテコ)は北海道天塩町と相乗りサービスの実証実験を行うと発表した。3月12日から実証実験を開始し、今年の夏頃を目処に本格始動するという。
まずnottecoについて説明すると、これは中長距離移動するドライバーと相乗りしたい同乗者とつなぐプラットフォームだ。ドライバーはドライブの日時、出発地と目的地、相乗り料金、車種といった情報をnottecoに登録して、同乗者を募ることができる。同乗希望者は、それを見て条件にあったドライブに相乗り依頼を出し、ドライバーが承認すればドライブが確定する。ドライブの詳細ページではドライバーのプロフィールや活動履歴なども確認することができる。
nottecoの登録人数は現在約3万3000人だ。ドライバーは、長期休暇で帰省する人や単身赴任していて週末に自宅に帰る時に同乗者を募っているケースが多く、同乗者は帰省の他に夏フェスやイベントなどに出かける際に利用していると広報担当者は説明する。
現状nottecoはカード決済に対応していないため、同乗者は当日料金をドライバーに現金で支払う形だ。今後、決済手段を実装し、決済手数料でマネタイズする予定なのだそうだ。
北海道天塩町でのライドシェア
北海道天塩町との実証実験では、天塩町から稚内への移動を便利にすることを目標としている。天塩町は、稚内から70km離れた場所に位置する町で、多くの住民は買い物や通院のために行き来している。しかし、公共交通機関で行こうとすると乗り継ぎによっては2、3時間かかってしまうこともあり、それでは車を持っていない住民や高齢者は日帰りで行き来するのが難しい。そこで、稚内に向かう車に他の住民が相乗りできるよう仕組みを作り、交通の便を改善しようというのが狙いだ。
nottecoは、3月12日より天塩町の住民向けのライドシェア専用ページを立ち上げる。稚内に行く予定の住民は、このサイトにドライブ予定を登録して、同乗したい住民を募ることができる。同乗者は移動の実費分のみをドライバーに支払う仕組みだ。nottecoは、スマホやPCが使えない住民のために電話で乗車依頼を受け付けるサポート体制を整えるが、同時に天塩町の役場でも住民が快適に相乗りできるようサポートしていくという。
この取り組みは天塩町の副町長から直接nottecoに声がかかって実現したと担当者は説明する。ただ交通手段がなくて困っているのは天塩町の住民だけではないそうだ。「天塩町の近隣の町でも同じように交通手段に困っている人が多くいます。ゆくゆくは天塩町に限らず、天塩町を通って稚内に向かっている町の住民に対してもサービスを使えるようにしていきたいと考えています」と担当者は話す。
ライドシェアサービスと自治体の連携の事例としては、2016年5月にタクシー配車サービスUberが発表した京都府京丹後市との取り組みが記憶に新しい。Uberの取り組みとの違いは、nottecoでは地域内の移動ではなく、中長距離の都市間の移動であること、そして同乗者はドライバーに実費のみを払うためタクシーとして営業しているわけではないことと担当者は説明している。この取り組みでも現時点でマネタイズは行っていないが、自治体からサービス利用料を得る形などを検討しているそうだ。この実証実験がうまく行けば、天塩町と同じ課題を抱える国内の自治体と協力していくことも考えているという。
nottecoのサービスは2007年にローンチしている。その後、ガイアックスが2015年にCostyle(コスタイル)からnottecoの事業を譲り受けた。現在はガイアックスグループの子会社として2015年9月に設立した株式会社nottecoがサービスの運営を担っている。