今週のUS記事まとめ ― 特許をオープン化するテスラや宇宙に飛び出すGoogleなどが求める新世界秩序、など

Googleの自動運転車がいろいろと話題にになる昨今、先週も「自動車」絡みでビッグなニュースが飛び込んできた。

ソフトウェアが世界を飲み込むのか?

驚きをもって迎えられたのは「Tesla、特許をオープンソース化。誰が使っても訴えないと約束」という記事だ。本家英語サイトでも1000件以上もの「いいね」を集めた記事となった。

もちろん日本でも話題になった。日経新聞などでも取り上げていたので、そちらでご覧になった方も多いだろう。同紙の記事には次のような文章がある。

IT(情報技術)ソフトウエアでは一般的な戦略だが、製造業で全面的な特許の開放は珍しい。新興メーカーがEVに参入しやすくなる。

なるほど。テスラの動きに「ソフトウェア世界的な仕組み」を見出すことは可能なのかもしれない。

TechCrunch翻訳記事本文から、テスラモーターズの発表リリース文にリンクしているが、テスラモーターズジャパンのブログでも抄訳が掲載されている。

そういえば2月には「Appleの次の成長分野は自動車?! 地元でまきおこるTesla買収の噂」という記事もあった。これもまた、テスラモーターズとIT的世界との親和性の高さを示すものではあった。

ネットサービスは隅々にまで広がる

「ネットサービス」と聞いて何を思い浮かべるかは人それぞれだろう。しかし、この世界の「巨人」は何かと問えば、誰もが5番め以内には名前をあげるだろう。そう、Amazonの話だ。

このAmazon関連の話題として「Amazon、電話料金や定額ストリーミングなどの繰り返し課金を代行するサービスを開始」という記事が注目を集めた。

Amazonによれば、「定期課金を行うあらゆるビジネスがこのサービスを利用できるようになる」とのこと。サードパーティーサービスは「Pay with Amazon」ボタンを設置することができるようになるそうだ。

さらに「Amazon、今年中にベビーシッター等のホームサービスを販売へ(Reuters発)」という記事もあった。「ベービーシッター、便利屋、ペンキ塗り、理髪、家屋修繕等の販売を計画している」とある。こうした実世界向けのサービスを提供するには、かなり大きな、そしてさまざまな方面のリスクも伴うはずだ。Amazonがそうした部分にどのように対応していくのかも興味深い。

Amazonが「オンライン書店」であったのは、もうはるか遠い昔の話だ。

ソフトウェアは「世界」を超えて

ところで国内記事で1200件以上の「いいね」を集めた記事もある。「Google、いよいよ独自衛星保有へ―衛星スタートアップ、Skyboxを5億ドルで買収」が、その記事だ。

Googleに関しては、もはや「何をやっても不思議はない」企業という感じもするが、それでも「宇宙」のインパクトは大きかった様子。宇宙を舞台にした、想像を超えたプロダクトやサービスの登場を期待したい。

模索されるニューワールドオーダー

日常生活のあちこちに「ソフトウェア」的な動きを見出すことができる中、新世界に対応した「秩序」を模索する動きもいろいろと存在する(もちろんテスラの動きもそうした流れの中で理解することもできる)。

その「秩序」という意味から注目を集めたのが「ビデオを見たりソーシャルな共有で“ごほうび”をくれるアプリはApp Storeから締め出しへ…iOS 8の大改革」の記事だ。

記事によれば「報奨で誘ってビデオの視聴をすすめるツール、ソーシャルに共有するとおまけがもらえるもの、プレイしているゲームの中でほかのアプリを見つけさせるもの、など」が、App Storeから排除される可能性があるらしい(遡及的に適用されるようだ)。

ソフトウェア内の情報連携により利用者に利益をもたらしていたケースもあるものの、過剰な宣伝行為による不平等ないし混乱があるとAppleは断じたようだ。ルールがどの範囲で、どのように提供されていき、そこから生まれる新しいトレンドがどのようなものになるのか、近いうちに記事が出てくることだろう。

ところで「ワールドオーダー」のような大きな話ではないものの、個人的にとても困った事態があった。「TweetDeck、ハックされたが脆弱性はすでに修正―ユーザーは一度ログアウトすること」の記事で紹介された内容が原因だ。

作業を行うPCではデュアルモニタの1つでTweetdeckを全画面表示しておき、そしてChromeのタブにて各種リストを表示するという使い方をしている。それがある日の深夜、無意味なリツイートを繰り返すようになってしまったのだ。

いろいろな情報を常に更新しながら閲覧できる便利な世界だが、小さな問題ひとつで活動を停止させられてしまう不便さに改めて気付かされた。

もうひとつ「ニューワールドオーダー」ということで触れておきたい記事があった。「インターネット時代の性教育」だ。

記事では「Software eats the world」の時代、きちんとした教育を早めにしておかなければならないのではないかと主張する。

80%以上が自分たちが性教育を受けた時期よりはやめに、子供たちに知識を伝えようとしているのだそうだ。平均すると10歳くらいの時期に性や性行為について子供たちに伝えているのだとのこと。

「性教育」については、親の側にも戸惑いはある。そんな人はGoogleで「性教育の仕方」などを検索してみてはどうかとも言っている。なるほど、少年たちが別の形でGoogleを利用するように、大人たちには大人たちの使い方があるわけだ。

性教育というのは必要かつ有効なもので「性教育の一般化や無料コンドーム配布の試みなどを通じて、十代の妊娠は史上最少になってもいる」ということも紹介されている。

「ソフトウェア」(の一部)はあくまでも「独自の世界」に生きる

最後に。個人的な話で恐縮ながら「よくわからない」、「独自の」世界観をご紹介しておこう。

「ソフトウェアが全分野に広まる」だとか、あるいは「現実世界とソフトウェア世界の統合」などということが言われて久しい。しかしこういいうものを見ると、現実世界側からの歩み寄りはあるものの、ソフトウェアの方はさらなるフロンティアを求めて進み続けている(進化なのかはわからない)ように思える。

とりあげたいのは「人気のインディーゲーム”VVVVVV”がiOSとAndroidにやってくる!」という記事だ。

記事に曰く「すばらしくイライラさせるインディーゲーム」だそうだ。「イライラ」がどのように「すばらしい」のかよくわからないし、そもそもゲームタイトルの「VVVVVV」はなんと読めばよいのだ(記事中に正解あり)?

なんでも「基本的に親指を画面に置く ― 左に動かせば左に動き、右に動かせば右に動き、離せば止まる。レスポンスは最高!」というインタフェースを通じてゲームを操作するのだそうだ。はて。

ソフトウェアが未来を拓く

いや、やはり最期は明るい展望で締めくくるべきか。「バングラデシュの貧困を打破するプログラミング教育–ノーベル平和賞のユヌス博士も支援」の記事もぜひご覧いただきたい。

第三世界の人たちにプログラミングを教えることが今、トレンドになりつつあり、それはもしかして、全世界的な貧困の悪循環を断ち切ることに貢献するかもしれない。

ソフトウェア産業がコンテンツとして提供するものではなく、産業構造としての可能性を論じる記事だ。なかなか「平和」に向けて動いているとはいえない世界の背景にある「貧困問題」。そういう問題に対処して、新しい平和的世界の秩序を育てるために、ソフトウェア「産業」にできることがあるのかもしれない。

Maeda, H


投稿者:

TechCrunch Japan

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