住宅ローンの借換サービス「モゲチェック」でスタートした日本のFintechスタートアップのMFSが今日、新たなサービス「モゲスコア」を開始した。ユーザーの収入状況やその安定性を判断するための重要な10項目(年収、勤続年数および家族構成など)から信用力を判断してスコアを算出する。同時に信用力に応じた適用金利の目安も提示する。
このモゲスコアは借り手となるユーザーの信用力を数値化したものだが、実際の借り入れ可能予想額も、このスコアから直接算出できる。具体的にはモゲスコアに年収を掛け合わせて100で割ったものが借り入れ可能額という。例えばモゲスコアが700点で年収500万円の場合、住宅ローン借り入れ可能額は3500万円と推定できるということだ。
これまで新規に住宅ローンを組んで家やマンションを購入する際、顧客側から見て金融機関が提供するローンの審査に通るかどうかはブラックボックスだった面がある。やったことがある人なら分かると思うが、購入を検討しているマンションの不動産デベロッパーの営業担当などに「おたくの世帯収入と家族構成なら3500万円くらい借りれますよ」とアドバイスされ、そんなもんかと実際に3本くらい同時にローン審査に申し込むことになる。ところが銀行の審査ロジックは開示されていないので、「なぜか審査に落ちた」ということもあるし、実はより条件の良い金利のローンを組めるのに、それに気付かないということが起こり得る。
つまり、ここには情報にの非対称がある。そしてローンを提供する金融機関が積極的に透明性を上げるインセンティブは働かない。それがMFSのように顧客メリットを売りにしているスタートアップ企業の出番となるところ。MFSは住宅ローンの借り換えによる総返済額の圧縮でサービスを開始しているが、この借り換え時の審査実績があるからこそ、金融機関の審査基準に近いスコア化ができているということだ。どの銀行のどのローンに、どういう条件だと通るか(あるいは落ちるか)というデータが蓄積しつつあって、それを今回新たに借り入れ時へのサービスとして展開する、ということだ。MFSは2016年3月から東京・京橋など相談窓口となるリアル店舗サービスも開始している。
今回のモゲスコアはMFSのサイト上からも利用できるが、外部提携も進める。ネクストが運営する住宅情報サイトのHOME’SとAPI連携することでモゲスコア算出機能を提供するという。API連携は2017年3月に開始予定。
自分がどの程度の金額を借りられるのかが事前に分かれば、住宅購入時の基本方針の決定に役立つだろう。ちょっと面白いのは実際の審査と違って入力条件を変えたときのスコアの変化を見れること。例えば転職を挟む場合に、転職前に借りてしまうほうがいいのか転職後がいいかなど、これまで一般消費者には難しかったシミュレーションもできるようになることだ。
MFSは2015年6月にモゲチェックをローンチし、同年9月に総額9000万円の資金をマネックスや電通国際情報サービスなどから調達。2016年6月にはシリーズAとしてグロービス・キャピタル・パートナーズから2億円の資金を調達している。
(情報開示:MFS中山田明代表と、この記事を書いたTechCrunch Japanの西村賢は数年来の友人)